[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社

1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須


デジタルアドバンテージ
2002/03/12


 SIIでは、21世紀に向けた経営戦略(SII21構想)の柱の1つとして「情報技術の活用」を据えている。冒頭の「eマネジメント戦略」は、この経営戦略の一環として打ち出されたもので、従業員を中心とするシステムのユーザーが情報システムを最大限に活用し、その結果を、製品やサービスの付加価値向上に結び付けられるようにすることを目標としている。「『eマネジメント構想』とは、あらゆるマネジメント業務に『e』を付ける、すなわちデジタル化を進め、それを顧客価値や株主価値に昇華させることを目指した構想です。具体的なアクションとしては、事業の差別化や効率化、社内の情報風土革新、情報基盤整備があります」(SII 西田眞生氏)

セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント 部長
西田眞生
「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。これを可能にするしくみとして、EAIが注目されるようになりました」

 すでにSIIは、業務に必要な複数のビジネス・アプリケーションを展開している。具体的には、販売管理や在庫管理、財務会計などを行うためのERP(SAP R/3)、需要予測や生産計画を立案するためのSCM、顧客情報を管理し市場動向をいち早くつかむためのCRMなどだ。それらを企業全体として有効に活用するには、アプリケーション連携は欠かせないポイントである。「企業の情報システムでは、全体を体系化し、構造的に整理することが非常に重要です。部分的にうまく機能させるのは当然として、最終的には、それがシステム全体の総合力として効果をあげなければ意味がありません」(SII 西田眞生氏)

 アプリケーション連携の伝統的なアプローチは、必要に応じてその都度アプリケーション間の接続アダプタを開発し、ポイント・ツー・ポイントでの連携を実現する方法である。しかしこのようなアプローチを続けていくと、やがてアプリケーション同士が複雑に接続され、混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。こうなると、運用管理は煩雑さを極め、モジュールとしてのビジネス・アプリケーションに改変を加えることなどが困難になる。

典型的なEAIの構成例
必要に応じて、都度アプリケーションの接続アダプタを開発するという伝統的なアプリケーション連携のアプローチを繰り返していくと、やがて混とんとした、いわゆる「スパゲッティ連携」の状態に陥る。これに対し、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにするのがEAIの代表的な構成例である。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。

 各アプリケーションがポイントtoポイントで接続された「スパゲッティ連携」ではなく、中央にハブとして機能するソフトウェアを配置し、各アプリケーションがこのハブを通して連携できるようにする。これがEAIの代表的な構成の1つである。この場合各アプリケーションは、連携する相手がだれであろうと、自身とハブとのインターフェイスだけを考慮すればよい。このためEAI環境では、OSやミドルウェアに依存しない自由なアプリケーション連携が可能で、またアプリケーションの追加や更新が容易になる。

 経営者層が迅速・的確なグループ経営の意思決定を行えるようにすること、従業員などのユーザー層が付加価値の高い製品やサービスを創造するために本当に役立つ情報をタイムリーに入手できるようにすること、これを両立するためには、各ビジネス・アプリケーションに分散されている情報に統一的な手段でアクセスする方法が不可欠だと判断し、EAIの構築を決定したという。

顧客の信頼を勝ち取るカギは「情報」

株式会社エポリードサービス
小山サービスセンター 部長
大石典利
「フィールド・サービスでは、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めなければなりません。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です」

 EAI構築の手始めとして今回は、ERPソフトウェアであるSAP R/3を使って管理している顧客管理情報と、BEAのWebLogicで構築したWebアプリケーションとをBizTalk Serverを介して連携させ、フィールド・エンジニアに対して作業指示を出し、フィールド・エンジニアが実施した作業内容の情報や、顧客情報を中央に吸い上げるシステムを開発した。これは、主に産業用の分析・計測機器を手掛けるSIIの科学機器事業部の関連企業として、装置の導入やメンテナンスなどを専門に行う(株)エポリードサービスから要求されたものだ((株)エポリードサービスは、SIIの科学機器事業部にあったサービス部が6年前に分社化した会社)。

 エポリードサービスでは、3年前よりSAP R/3の顧客管理モジュールを使って顧客管理を行っていたが、フィールド・エンジニアへの作業指示や、実施された作業内容の報告には紙ベースの書類を使い、電話とFAXで連絡を取り合っていた。データ・エントリの労力を割けなかったため、ごく一部の情報(交換した部品に関する情報など)しかSAP R/3側に反映されていなかった。「フィールド・サービスというと、お客さまからのアプローチを待っていればよいと思われるかもしれませんが、それは違います。SIIとお客さまの間で信頼を築き、保守サポートだけでなく、将来の機器販売につなげていくためには、受身で待っているのではなく、お客さまの潜在ニーズをいち早くつかみ、それにこたえることで、お互いのパートナーシップを高めていかなければなりません。お客様ごとに異なるニーズに応えるという観点から、私たちはお客様を『顧客』ではなく『個客』であると考えています。パートナーシップを築くうえで重要なのは情報です。それには、個々の故障の履歴や部品交換の履歴、定期点検の実施履歴など、あらゆる情報を踏まえたうえでのサポートが必要です。特に故障の連絡では、お客さまは感情的になっている場合が多い。こんなときに情報が錯綜して、同じような問い合わせや報告をお客さまに対して行ったら、信用は完全に失われてしまいます。そのような失敗を起こすことなく、お客さまの信頼を勝ち取るためのツールとして、今回のようなシステムが必要だと以前から考えていました」(エポリードサービス 大石典利氏)


 INDEX
  [事例研究]セイコーインスツルメンツ株式会社
  1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須
    2.Webソリューションの必要性
    3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード
        技術コラム:BizTalkはどこまでEAIに使えるのか?
 
 「事例研究」


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