[事例研究] セイコーインスツルメンツ株式会社

3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード


デジタルアドバンテージ
2002/03/12


 システム稼働の様子は次のとおりだ。例えばいま、顧客から電話で障害報告があったとする。これを受けた本社のスタッフは、障害内容を確認し、必要と判断すればフィールド・エンジニアの派遣を決定する。するとスタッフは、Webサーバにアクセスし、その顧客の過去の修理履歴や部品交換履歴などをSAP R/3から取り出して確認したうえ、今回の障害報告から新たな部品交換が必要と判断すれば、その情報を加えて作業指示書を作成してフィールド・エンジニアへの送信を指示する。すると作業指示が発生したことは、フィールド・エンジニアにメールで送信され、フィールド・エンジニアはそのメールを携帯電話で受信する。メールを受信したフィールド・エンジニアは、手持ちのモバイルPCと最寄りのISPを使ってWebサーバにアクセスし、作業指示書(顧客の過去の修理履歴・部品交換履歴・新たな作業指示と部品交換)をPCにダウンロードする。34人のフィールド・エンジニアでテスト運用を開始した段階です。本稼働になれば、1日の作業指示は約50件程度、1カ月あたりで約1000件程度のトランザクションが発生することになる。「本当はオンラインで処理したいところですが、フィールド・エンジニアはネットワークを使えないクリーン・ルームに入ることも多いため、このようなオフラインの形式でも使えるようにしてもらいました」(エポリードサービス 大石典利氏)

セイコーアイテック 情報センタに設置された今回のサーバ
今回導入されたサーバは、安全対策認定事業所であるセイコーアイテックの情報センタに設置された

 フィールド・エンジニアに送られる作業指示書には、SAP R/3 顧客管理モジュールに記録された過去の履歴情報がすべて含まれる。その顧客から過去にどのような問い合わせがあったのか、どのような修理を行ったのかなどがすぐに分かるようになっている。顧客先での作業が完了したら、作業報告書をモバイルPCで作成し、画面上で顧客に内容を承認してもらい、再度Webに接続して報告書を本社側に送る。また、装置の状態や顧客の意見、要望などは、顧客情報シートとして、作業完了後、作業報告と同様にWebサーバから本社に送られる。「当初は小型のタブレットでも持参して、サインもデジタル・データとしてもらうという話もあったのですが、あまり現実的ではないのでこのような形式にしました。業務を簡便にするために画面上で承認してもらっていますが、どうしてもサインが必要な場合には、FAXに作業確認のサインをもらいます。将来的には、電子承認システムを導入するつもりです」(エポリードサービス 大石典利氏)

 Webサーバ側にアップロードされたデータは、スタッフのチェックを受けてから、リーダーの操作によってSAP R/3に反映される。「フィールド・エンジニアが直接SAP R/3にデータを反映させることはできません。作業にかかった時間や、交換した部品を丸々お客さまに請求できるとは限りません。弊社側の責任で発生した作業や部品交換などもあり得るからです。この点をリーダーが確認して、データがSAP R/3に反映され、作業報告情報が次の請求業務に移されることになります」(エポリードサービス 大石典利氏)

当面の問題は通信速度。高速通信カードの配布で問題を解決

SIIのデータ通信カードRapiraCard
cdmaOneに対応した64kbpsの高速データ通信PCカード。通信エリアはほぼ国内全地域で、データ通信中に電話も使えることから、9600bpsでは厳しいデータ・ダウンロードもPapiraCardならまったく問題はない。

 とにかく充実した情報が、ほぼリアルタイムにフィールド・エンジニアやスタッフから参照可能になり、システムのテスト運用は非常に好評だという。ただ1点、不満が多く聞かれるのは通信速度とのことだ。一部のフィールド・エンジニアは、現在でも携帯電話を使った9600bpsのデータ通信を利用しており、これではWebサーバにアクセスしてデータをダウンロードするのに10分から、長いときで40分もかかるときがあるという。「こればかりは高速な通信手段に替えていくしかありません。何かいい方法はないかと探していたら、SIIの高速パケット通信カード(RapiraCard、写真)があるじゃないですか(笑)。これなら通信速度も通信エリアについてもまったく問題ありません。さらに、ダウンロード中でも携帯電話で詳細な点の確認ができます。RapiraCardを全員に配布すべく手配しています」(エポリードサービス 大石典利氏)

eマネジメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverの全面採用を決定

セイコーアイテック株式会社
情報システム部 SE3グループ 係長 渡辺光秀
「現在は事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用していますが、今後はBizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」

 今回のプロジェクトの結果から、SIIでは、冒頭で述べたeマネージメント構想におけるビジネス・アプリケーション用のEAIハブとしてBizTalk Serverを採用することを決定した。「SIIでは、ERPソフトウェアをSAP R/3で統一しています。現状は、事業部ごとのビジネス・モデルに従って、SAP R/3の複数のサブシステムを展開・運用しています。今後は、BizTalk ServerをベースにしたEAIを活用して、これらのサブシステムを連携させていきます」(セイコーアイテック 渡辺光秀氏)

 さらにSIIでは、ERPのSAP R/3だけでなく、順次、既存のビジネス・アプリケーションをEAIシステムに対応させていく。「全社的なEAIで基本的に使用するXMLスキーマの大枠は決定しました。後は各業務に向けて、細部を詰めていけばよい状態になっています。かなりのスピードで対応を進められると考えています」(SII 鈴木真二氏)

セイコーインスツルメンツ株式会社
ストラテジーセンター
eマネジメント部
中田光一
「今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」

 「ただし、今回のようにトランザクション型の処理はBizTalk ServerによるEAIシステムに対応させていきますが、何でもかんでもというわけではなく、大量のデータをバッチ的に処理するようなものについては、必ずしもEAIシステムに対応させなくてもよいと考えています」(SII 中田光一氏)

 今後の具体的な案件としては、CRMシステムであるSiebelとの接続、プライベートなマーケットプレイスの接続が検討されている。「当初は、あくまでプライベートな販売サイトをマーケットプレイス化してみようと思っています。最終的にはロゼッタネットのような共通マーケットプレイスがあるのですが、電子部品の大手ベンダは、すでにEDIを導入して大量の受発注業務を行っており、これらに移行する必然性はいまのところあまりありません。またSiebelとBizTalk Serverの接続については、すでに技術的なレベルでは、HTTPとXMLで接続できることを確認しています」(セイコーアイテック 五十嵐善明氏)

 メインフレームなどのレガシー・システムや水平分散型のクライアント/サーバ・システム、最近の潮流であるWebソリューションなど、さまざまなシステムで混とんとなった大企業のエンタープライズ環境において、過去のシステムはできるだけそのままに、データ連携を可能にするしくみとしてEAIが急速に注目を集めている。BizTalk Serverは、強力な開発環境やスケーラビリティ、そして圧倒的なコストパフォーマンスと手厚いコンサルティングを武器に、EAIソリューションを提供するソフトウェアとして新たな関心を呼びそうだ。


会社データ
  セイコーインスツルメンツ株式会社
本社住所:
〒261-8507
千葉県千葉市美浜区中瀬1-8
電話:
043-211-1111(代表)
設立:
1937年(昭和12年)9月7日
資本金:
10億円
年間売上高:
2,200億円(2000年度)(旧セイコー精機356億円を含む)
従業員:
5400名
ホームページ:
http://www.sii.co.jp/

 

 INDEX
  [事例研究]セイコーインスツルメンツ株式会社
    1.フレキシブルなビジネス・アプリケーション連携にはEAIが必須
    2.Webソリューションの必要性
  3.紙ではなしえなかった圧倒的な情報量とスピード
        技術コラム:BizTalkはどこまでEAIに使えるのか?
 
 「事例研究」


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