[事例研究] 東海大学短期大学部(高輪) 情報・ネットワーク学科

2.100Mbpsの超高速インターネット接続を早期導入できたのには幸運も


デジタルアドバンテージ
2001/06/08


 
サーバ・オペレーション・ルーム(全景)
ファイル・サーバやExchange 2000 Serverを組み込んだメール・サーバなどが並ぶオペレーション・ルーム。

 『大学の情報力2001』(旺文社発行)によれば、国内の全私立大学(含4年制大学)のうち、45Mbps以上のインターネット接続を実現しているのは全体の1.9%にすぎないという。また短期大学では、このような高速接続を持ったところは皆無である。これに対し東海短大高輪は、e-STARにおいて100Mbpsという高速なインターネット接続を実現した。これも「近未来型情報環境」という目標に沿った選択だが、実際にこれを早期導入できた背景には幸運もあったようだ。「今回はソフトバンク・グループの1つであるアイ・ピー・レボルーション(IPR)の100Mbps高速接続サービスを利用します。IPRは独自の光ファイバ網を持っており、敷設・利用料金も現実的なレベルで100Mbps接続が可能ということで注目していたところ、この光ファイバがたまたま本校の目の前の道路下を通るというではありませんか。渡りに舟という感じで即座に導入を決断しました(笑)」(東海短大高輪 高見澤氏)

 インターネットと学内ネットワークの間には、インターネット向きのメール・サーバ、ゲートウェイ/ファイアウォールとして機能するPCサーバを配置している。「インターネットとの接続回線が低速だった従来は、Webキャッシュ用のProxyサーバが重要な役割を担っていましたが、100Mbpsという高速アクセスが可能になると、従来のキャッシュ・サーバでは高速接続の能力を十分に引き出せません。現時点ではキャッシュの必要はないと判断し、e-STARではキャッシュ目的のProxyサーバは設置しないことにしました」(東海短大高輪 高見澤氏)

クライアントは高性能・大容量のマルチメディア対応PC

クライアントPC
データ交換用の各種インターフェイス(USB、IEEE 1394、PCカード)に加え、DVD-ROM+CD-R/RWドライブ、デジタル・ビデオ・カメラ、認証用のICカード・リーダなど、最新のマルチメディア環境を体感できるクライアントPC。教室が空いていれば、学生はいつでも自由に使うことができる。

 クライアントPCには、Pentium III-933MHz/256Mbytesメモリ/60Gbytesハードディスク搭載(一部はPentium III-650MHz搭載モデル)と、文句なく現時点でのハイエンド・モデルが採用されている。そして各PCには、データ交換用のDVD-ROM+CD-R/RWドライブ(一部はCD-R/RWドライブのみ)、デジタル・ビデオなどとのデータ交換を可能にするIEEE 1394インターフェイス、ビデオ・カンファレンシング用のUSBデジタル・ビデオ・カメラに加え、ログオン認証用のICカード・リーダが装備されている。

 OSとしては、Windows 2000 Professionalを採用した。Windows XPの発表も秒読み段階に入った今、何より次世代OSテクノロジの主流であること、「近未来情報環境」を構築するための最新デバイスのドライバ・サポートが受けられること、対応アプリケーションが豊富であることなどが選択の理由だという。

 教室は全部で6つあり、9:00〜21:30までの間公開されていて、授業で使っていない教室では自由にPCを使うことができる。用途にも特に制限はなく、課題などでの利用はもちろん、電子メールからネット・サーフィン、独自のホームページ制作、ゲームまで、自由に利用可能だ。個人的に撮影したデジタル・ビデオや画像などを持ってきて編集してもよい。実際、今回の取材で大学を訪れたところ、学生の手作りだと思われるサークル案内などが多数貼り出されていた。トップ・ダウンで強制はしていないが、このようにPCに自由に触れる機会さえ与えれば、学生たちは自身でその活用法を会得するという。「そうした、学生生活の一部として最新の情報環境に触れること、そして自分から能動的にそれらを使いこなすことで、付け焼き刃でない本当のコンピュータ・リテラシーを身に付けて、近未来情報環境を体感してもらうのが狙いです」(東海短大高輪 高見澤氏)

特定のPCによらないデスクトップ環境の保証は固定プロファイルで

富士通株式会社
第3システム事業部 大学システム部
吉持高志

「今回は授業がスムーズに行えるように、単純な構成ということで固定プロファイルを使いました」

 Windows 2000ネットワークでは、移動プロファイルやIntelliMirrorなどを利用することで、特定のクライアントPCによらず、ユーザーがどのクライアントからログオンしてもユーザー自身のデスクトップ環境を再現することができるようになる。しかしe-STARでは、このようなモデルではなく、プロファイルの変更を認めないという「固定プロファイル」を選択した。このため学生は、壁紙の変更やWindowsのカスタマイズなど(フォルダ・オプションなど)はいっさいできない(厳密には、変更することは可能だが、次回にログオンしたときにはデフォルトの状態に戻る)。機能としては利用可能だが、授業などで支障をきたさないように、統一的な動作環境を提供することを考慮して、シンプルで確実な方法を選んだということだろう。「今回のような教育機関向けシステムでは、1台のクライアントPCを不特定多数のユーザーが使います。これは一般企業のシステムでは考えられない使い方です。今回のケースはWindows 2000 Serverを利用しているので、移動プロファイルやIntelliMirrorなど、高度なプロファイル管理が可能ですが、授業がスムーズに行えるように、なるべく単純な構成にするということで、固定プロファイルを使うことにしました」(富士通株式会社 第3システム事業部 大学システム部 吉持高志氏)

 またアクセス権の設定により、学生は基本的に起動ドライブ(Cドライブ)への書き込みが禁止されている。一方、作業用のドライブに独自のファイルをコピーすることはできるが(アプリケーションをインストールすることもできるが)、ログオン・スクリプトを利用して、これらの作業ファイルはログオンごとに消去されるしくみをとっている(詳しくはすぐ次で述べる)。少々制限は強いが、これらにより学生は、実験を含めてかなり自由にPCを使っても、そのクライアントPCの環境を変えてしまうことなく、また特定のクライアントPCによらず、常にログオン時の環境が再現されるようになっている。

共有ストレージはネットワーク・ドライブを、一時作業領域としてはローカル・ディスクを利用

 すでに述べたとおり、e-STARにはWindows 2000 Serverからなるファイル・サーバが1台用意されており、ここに100Gbytesのハードディスクが搭載されている。ここにユーザーごとのネットワーク・フォルダを用意し、Windows 2000のクォータ機能(ユーザーごとに使用可能なディスク容量を制限する機能)を利用して、上限を64Mbytesに設定している。次に述べるように、クライアントPCの作業フォルダの内容は、ログオンのたびに消去されてしまうので、永続的に保持したいデータは、このネットワーク・フォルダに転送しておく。

 クライアントPCには、システム領域を含めて60Gbytesという大容量ハードディスクが装備されている。学生は、ローカル・マシン内に用意された作業フォルダに自身のファイルを書き込んで利用することは可能だが、いったんログオフするとそれらは消去されてしまう。この機能は、ユーザーのログオン時に実行される、Windows 2000のログオン・スクリプトを利用して設計した。ただしこの消去にあたっては、「直前にログオンしたユーザーと同一ユーザーなら消去しない」という例外が設けてある。「ビデオの編集などを行っていると、コンピュータがハングアップしてしまうことがままあります。このような場合、システムを再起動することになるのですが、作業中のデータがログオン・スクリプトで消去されてはかないません。このため例外を設けてあります」(東海短大高輪 高見澤氏)


 INDEX
  [事例研究]東海大学短期大学部(高輪校舎) 情報・ネットワーク学科
    1.近未来情報環境「e-STAR」とは?
  2.100Mbpsの超高速インターネット接続を早期導入できたのには幸運も
    3.データ交換とバックアップにはパケット・ライトのCD-RWメディアを活用
    4.ICカードで本人認証を確実にし、代わりにPCを自由に使わせる
 
事例研究

 



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