[事例研究] 東海大学短期大学部(高輪) 情報・ネットワーク学科

1.近未来情報環境「e-STAR」とは?


デジタルアドバンテージ
2001/06/08


東海大学短期大学部
高輪学務課 主査
高見澤秀幸

「最先端のコンピュータ環境に学生生活の中で自然に触れ、付け焼き刃ではない本物のコンピュータ・リテラシーを身に付けてもらいたいですね」

 インターネットやPCの普及により、コンピュータを道具として利用できるというコンピュータ・リテラシーは、もはや特別な技能ではなくなった。こうした社会情勢の中で、コンピュータを専門分野とする短期大学の存在価値とは何か? これに対し東海大学短期大学 高輪校舎(以下「東海短大高輪」と略)が出した答えは、近未来を実体験できる最新の情報環境を学内に構築し、学生がこれに自由に触れられるようにすることで、皮膚感覚のレベルからこれらを理解し、自在に活用できる人材を輩出するということだ。このため東海短大高輪では、1995年4月、当時登場間もないWindows NT 3.5を次世代の主流となるOSだと判断して、いち早くNTベースのネットワーク・システムを学内に構築した。「この当時、PCネットワーク環境の主流はWindows 3.1+NetWareであり、登場したばかりのWindows NTは、技術的には優れているが、今後の主流となるかどうか、当時の評価はまだ定まっていませんでした。しかし将来は主流になる技術だと確信して、導入を決定しました」(東海短大高輪 高見澤氏)

現時点での「近未来型情報環境」を実現したe-STAR

 同校が構築する情報環境が目指すのは「近未来型情報環境」だ。ここで言う「近未来」とは、2〜3年先の未来を意味している。「当然ながら、実際にシステムを構築するには、現時点でリーズナブルなコストで利用可能なデバイスやインフラを選択するしかありません。しかし2〜3年後に主流になるであろうデバイスや技術などを見据えたうえで、現時点で入手可能なデバイス(デジタル・カメラやICカードなど)やインフラ(100Mbpsのインターネット接続など)を組み合わせれば、一般的な企業で2〜3年後に実現される情報環境を手に入れることができます。これが本校の目指す『近未来環境』です」(東海短大高輪 高見澤氏)

 そして東海短大高輪が、この2001年4月から導入し、稼働を開始した最新の情報環境がe-STARである。「e」は「electronic」を意味し、「STAR」は同校の教育指針の1つ「若き日に汝の希望を星につなげ」からとったものだという。e-STARの主な特徴をまとめると次のようになる。

特徴 内容
100Mbpsによる超高速インターネット接続 光ファイバを使用した100Mbps超高速インターネット接続を採用。マルチメディア・ストリームなど、次世代のインターネット・コミュニケーションを先取りした接続環境を実現
クライアントOS/サーバOSをWindows 2000で統一 学生が使用するクライアントOSにはWindows 2000 Professionalを、ファイル・サーバ/メール・サーバなどのサーバOSにはWindows 2000 Serverを使用。LAN全体をWindows 2000 Active Directory環境で統一
ICカード認証 学生証をICカード化し、端末へのログオンではこのICカードを利用
大容量リムーバブル・ストレージ 全PCにCD-R/RWドライブを設置し、パケット・ライトによりデータを読み書き可能にした
豊富な入出力インターフェイス 全PCにIEEE 1394/PCカードスロット/USBの入出力インターフェイスを用意し、デジタル・スチル・カメラやデジタル・ビデオ・カメラなどのデータを読み書き可能にした
ビデオ・カンファレンシング環境 ビデオ付きメールやビデオ・カンファレンシングなどを可能にするUSBデジタル・カメラを設置。カンファレンシング用システムとして、Microsoft Exchange 2000 Conferencing Serverを導入
充実したアプリケーション環境 Microsoft Office、Visual Studio、Adobe Photoshop LE/Illustrator、Macromedia Dreamweaverなど、各分野で主流のアプリケーションを導入
高等教育機関向けライセンス体系の採用 マイクロソフトが高等教育機関向けに用意するMicrosoft Campus Agreementライセンス・プログラムにより、学生は学校で使用しているソフトウェアを個人所有のPCにインストールして使用可能
e-STARの主要な特徴

 このようにe-STARの特徴の1つは、サーバ、クライアントOSともにWindows 2000で統一して、ネットワーク全体をActive Directoryで管理している点だ。大学などでは、Macintoshが導入されていたり、最近ではLinuxなどを採用したりする動きがあるようだが、e-STARではすべてをWindows 2000で統一した。「実際問題としては、歴史的な経緯からMacintoshを使い馴れた教員などもおり、導入希望がまったくなかったわけではありません。しかしMacintoshは、ビジネスの現場でこれから主流になるとは考えられないので、我慢してもらいました。Linuxについても検討はしましたが、Macintoshと同じ理由から、導入は見送りました。これらは授業でもまったく扱っていません」(東海短大高輪 高見澤氏)

サーバ群には低コストなPCサーバを活用

 e-STARでは、東海短大高輪と富士通との協業によってシステム設計や導入が行われた。同校は、1995年にWindows NTシステムを導入したときから、一貫してインテグレータとして富士通を選択した。「Windows NTシステムを導入したときから、富士通さんとは、インテグレータと顧客という間柄を越え、実験的な試みを含めて、教育機関向けの情報システムとはどうあるべきかを模索してきました。また大学同士の横のつながりもあり、情報交換していますが、富士通さんは多くの大学で高く評価されています」(東海短大高輪 高見澤氏)

 e-STARのシステム構成を図示すると次のようになる。

e-STARシステムの構成
全学生数1000名(1学年500名×2学年)に対して、382台のクライアントPCを用意している。すべてのクライアントPCには、ログオン識別用のICカード・リーダが装着され、DVD-ROM+CD-R/RWドライブ(一部のPCではCD-R/RWのみ)やIEEE 1394インターフェイス、ビデオ・カンファレンシング用USBデジタル・カメラが装備されている。サーバ側には、これまでの経験から、それほどの負荷はかからないと判断し、低コストなPCサーバを利用することにした。

 東海短大高輪では、約1000名(1学年500人×2学年)の学生が在籍している。これに対し用意されたクライアントPCは6教室で382台。一般的な大学の情報系学部と比較しても、学生数に対する端末数の割合はかなり高い。そして全PCには、ログオン識別用のICカード・リーダやDVD-ROM+CD-R/RWドライブ(一部のPCではCD-R/RWのみ)やIEEE 1394インターフェイス、ビデオ・カンファレンシング用のUSBデジタル・ビデオ・カメラが装備されている(クライアントPCの詳細については後述)。

サーバ・システム
一見すると通常のミドルタワーPCのようにも見えるが、電源の2重化などが施された低コストなPCサーバである(机の後ろ側にUPSがある)。東海短大高輪では、低コストなPCサーバを活用してサーバ・システムを構築した。

 クライアントPCが大容量・高性能であるのに対し、サーバ側PCにはシンプル、低コストのPCサーバが利用されている。「過去の経験から考えて、サーバにかかる負荷はそれほど高くないだろうと判断し、低コストなPCサーバを選択しました」(東海短大高輪 高見澤氏)

 ただし授業では、クライアントPCから一斉にログオン処理が開始されることになる(1クラスには60台超のPCがある)。図から分かるとおり、e-STARでは、比較的低性能な(Celeron-633MHz)PCサーバをドメイン・コントローラ(DC)として利用している。当初は、このような特殊な場面で、サーバにどれだけ負荷がかかるか見積もるのは難しかったという。「最初は心配したのですが、実際にやってみると、意外と負荷は小さなものでした」(東海短大高輪 高見澤氏)

 サーバ・システムには、Pentium III-933MHzを2個搭載し、RAID5構成の100Gbytes HDDを搭載するPCサーバと、Celeron-633MHz搭載PCサーバの2種類がある。このうち前者をメール・サーバ(Exchange Server)とファイル・サーバに各1台ずつ、後者を3台のDCに割り当てている。Active Directoryは、メール・サーバであるExchange Serverマシンを含むドメインをトップ・ドメインとして、教育研究用ドメインと事務用ドメインをその下位に位置づけた2階層としている。


 INDEX
  [事例研究]東海大学短期大学部(高輪校舎) 情報・ネットワーク学科
  1.近未来情報環境「e-STAR」とは?
    2.100Mbpsの超高速インターネット接続を早期導入できたのには幸運も
    3.データ交換とバックアップにはパケット・ライトのCD-RWメディアを活用
    4.ICカードで本人認証を確実にし、代わりにPCを自由に使わせる
 
事例研究

 



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