Insider's EyeLonghornが切り開く次世代Windows環境とは?―― PDC 2003レポート No.2 ―― デジタルアドバンテージ2003/11/07 |
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前回の速報に続き、今回はビル・ゲイツ氏のキーノート・スピーチ(基調講演)の内容とLonghornの概要を紹介する。
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過去最大の参加者数となった今回のPDC 2003は、米Microsoft社チーフ・ソフトウェア・アーキテクト、ビル・ゲイツ氏の「“Longhorn” PDCへようこそ」というキーノート・スピーチで始まった。いうまでもなくLonghornとは、現在のWindows OSの後継となる次世代Windowsプラットフォームの開発コード名であり、公式にはこのPDCが始めての公開となる。Longhornの姿をひと目見ようと、会場には朝早くから参加者が詰めかけた。
Longhorn:次世代コンピューティングを切り開く新OS
ゲイツ氏はまず、現在のコンピューティング環境を取り巻く状況と、今後のハードウェア/ソフトウェアの進化について触れた。高機能なクライアント・コンピュータの急速な進化や、Webサービスを使った分散ネットワーク・コンピューティング環境の普及、そしてそれらを有効に活用するために、ソフトウェアの進化が求められていることなどについて言及した。そして登場するのがLonghornである。
急速に進化するコンピュータ・ハードウェア |
(Longhornの発売ターゲットとされる)2006年では、このようなシステムが普及すると予測している(つまりLonghornは2006年以降の出荷ということのようだ)。CPUはマルチプロセッサ、4〜6GHzのクロック速度、2Gbytes以上のメモリなどを装備する。それを使い、より高機能でセキュアなOSを動作させる。 |
なおLonghornの紹介の前に、昨今のWindows OSにおける脆弱性の多さを反映してか、まずはWindows OSにおけるTrustworthy Computingへの取り組みや、Windows XP SP2やWindows Server 2003 SP1の提供スケジュールについて言及した。これらのOSでは、デフォルトの設定をよりセキュアにするため、ファイアウォール(ICF)はデフォルトで有効にし、サーバのセキュリティ設定をより容易に、そして統一的に行える施策が施されるようである。
WinFXを中心に再構成されたLonghorn OS
増大するコンピューティング・パワーを背景に、ユーザー・エクスペリエンスの向上を目指して開発されているOSがLonghornである。後述するWinFSやIndigoといった、ソフトウェア的に実現可能な機能だけでなく、ハードウェアによるセキュリティ機能のサポート(NGSCB:Next Generation Secure Computing Base)や、3Dグラフィックス・ハードウェアを使ったユーザー・インターフェイス(Avalon)の実現など、ハードウェア性能の向上も揃って始めて利用可能となるOSプラットフォームである。ゲイツ氏によれば、「Windows 95以来の革新的なOS」とされている。
この画面ではやや分かりにくいかもしれないが、ウィンドウのタイトル・バーの部分は半透明になっており、デスクトップの背景が透けて見えている。これだけなら、単に画面描画が高機能化しているだけではないかと思えるが、これはLonghornの一面にすぎない。実際にはシステム内部のアーキテクチャが大きく変更され(正確には、現在の.NET Frameworkに対してさまざまな機能が「追加」されている)、プログラマーにとっては大きな変更となっている。
次に示すのは、キーノート・スピーチの中で示されたLonghornの概略図である。
Longhornの概略アーキテクチャ |
Longhornの概略アーキテクチャ。特に上側にある3つの機能が従来から大きく変わっている。これらの機能を呼び出すための.NET FrameworkライブラリのことをWinFXと呼ぶ(Longhorn固有の機能を利用するためには、従来のWin32ではなく、.NET Frameworkでのプログラミングが必要となる)。 |
これをさらに詳しく表現すると、次のようになる。
Longhornのアーキテクチャ詳解 |
Longhornのアーキテクチャを詳しく示したもの(クリックすると拡大図を表示します)。ベースのWindows OSカーネル部分にもいくらかの追加、変更が行われている。 |
「Fundamentals(Base Operations System Services)」がOSのコアとなる部分であり、その上に「Avalon(アバロン)」「WinFS」「Indigo(インディゴ)」という3つの主要コンポーネントが載っている。実際にはこれ以外にもさまざまなコンポーネントが存在しているが、この4つの部分が(Windows XPなどと比較した場合の)Longhornにおける主要な変更、追加点である。
■Fundamentals
ここはOSの基本部分であり、現行のOSと比較すると、セキュリティ機能を実現するNGSCBやRight Managementなどの機能が強化されている。
■Avalon(開発コード名)
Avalonは、Longhornにおける「プレゼンテーション機能」を実現するためのコンポーネントであり、従来のGDIやGDI+などに代わって新たに用意されたものである。DirectX(Direct3DやDirectShow、DirectMediaなど)を利用して、単なる描画だけでなく、ビデオやサウンドなどのメディアも統合して扱えるようになっている。Direct3Dインターフェイスを利用するため、実際の描画はCPUではなく、グラフィックス・ハードウェア内に用意されたGPU(グラフィックス処理を行う専用プロセッサ)などを利用することができ、CPU負荷を抑えながらも、高速、高機能な描画を行うことができる。
■WinFS(Windows Future Storage)
WinFSは「統合化ストレージ(unified storage)」である。「“統合化ストレージ”については、もう10年以上にも渡って聞いてきただろう。XMLの柔軟性とデータベース技術を統合したファイル・システム技術であるが、それがいまここにある(ゲイツ氏)」。書き込まれたデータ中にあるさまざまな属性、例えばワード文書中の筆者名やタイトル・フィールド、アドレス帳データの中にある氏名や住所、メール・アドレスなどの情報をデータベース中に保持し、どのアプリケーションからでも共通の手段でアクセスできるようにする。これにより、アプリケーション固有ではなく、システム全体で情報を容易に共有したり、関連付けたり、高速に検索したりすることができる。今までは各アプリケーションが独自にファイルを管理していたため、情報を共有し、それを活用するのは困難であった。
■Indigo(開発コード名)
Indigoは、Webサービスを使った、新しい分散通信用アーキテクチャである。クライアント/サーバだけでなく、セキュアで信頼性の高いアプリケーション間通信を実現することができる。
以上のコンポーネントの機能は、すべてLonghornの.NET Frameworkから呼び出すことができるが、この新しい.NET Frameworkクラス・ライブラリのことを「WinFX」と呼ぶ。詳しくは次回で説明するが、Longhornのすべての機能を利用するには、このようにWinFXを利用しなければならない。従来のWin32では、Longhornの(.NET Frameworkの)機能をすべて利用することはできないのである。
つまりMicrosoftでは、今後はWinFXの機能を拡張することはあっても、Win32の機能拡張は行わなくなったということを意味している。ゲイツ氏は「Windows 95以来の革新的なOS」としているが、その意味は「Win32との決別(もしくはWinFXへの移行)」ということである(Windows 95は、Win16からWin32への移行であった)。.NET Frameworkの優位性についてはいまさらいうまでもないだろうが、とうとうWin32が過去のものになるときがやってこようとしている(といっても、Win32のサポートがなくなるわけではない。Win32の進化が停止するだけである)。
次回は、プログラマの視点から見たLonghornについてレポートする(次回は11月中旬公開予定)。
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