2000年は、日本全国津々浦々、社会人から女子高生まで、「インターネット」が普及した年だと言ってよいだろう。2001年は、さらなる高速インターネットと常時接続が普及して、ますます仕事に生活に、インターネットが食い込む年になるはずだ。2001年の気になるインターネットの風景について、独断と偏見で考察してみた。 携帯電話はパソコンを凌駕するか?NTT DoCoMoのiモードが突破口を開いた「携帯インターネット」。この成功に気をよくしたDoCoMoは、米国やヨーロッパ、アジア地域に向けたiモードの世界戦略に着手するという。さらに国内では、Java対応端末や、W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)による高速データ通信サービス(下りで数百kbit/s)も秒読み段階に入っており、その勢いは増すばかりだ。一部マスコミにおいては、「数年内に、携帯はパソコンを凌駕する」という主旨の発言も飛び出すほど。 何をもって「凌駕」とみなすかという議論もあるだろうが、筆者は昨今のこのような「携帯崇拝」には懐疑的である。たとえ個人的な用途であっても、キーボードをタッチ・タイピングできる人にとって、携帯電話での文字入力は悪夢以外の何物でもない。今後は、タッチ・タイピング人口が日本でも増えることを考えれば、このような行き過ぎた崇拝は一時的なものだと思うがいかがか。この答えは、小さいころからキーボードに親しみ、平均的には日本人ほど器用でないとされる欧米人に、あのインターフェイスが受け入れられるかどうかを見れば分かるだろう。 SOHO常時接続2ndジェネレーション一部の恵まれた地域を除けば、これまでSOHO向けのインターネット接続といえば、ISDN回線を利用するOCNエコノミーが主流だった。月々3万円弱で、最大で128kbpsのベスト・エフォート型サービスを提供するというOCNエコノミーは、手軽さが受けて急速に加入者を増やしたのだが、全体的にトラフィックは重く、評判はあまり芳しくなかったと言ってよいだろう(筆者の所属するSOHOでの実例については「編集後記 2000年9月:競争は実質高速化の母?」を参照)。 これに対し2001年のSOHOインターネット接続は、ISDNを卒業して、ケーブル・インターネットまたはDSLに流れることになるだろう。無線や光ファイバも射程に入りつつあるが、これらの普及は限定的なものになると思われる。 ケーブルやDSLの導入によって、SOHOは「かろうじてインターネットに常時接続している」という状態から、ビデオ・ストリーミングやASP(Application Service Provider)など、より重いWebサービスも気軽に利用できるようになるだろう。またこれまでは冗談でしかなかった、手元のサーバによるWeb情報サービスの提供も、少なくとも転送速度の点では何ら問題がなくなる。プロバイダのWebサーバを間借りするしかなかったSOHOでも、今年は自前のWebサーバを手軽に保有できるようになる。ひょっとしたら、Windows 2000とIISを組み合わせたWebサーバが乱立することになるのかもしれない。 リビング情報戦今述べたケーブルやDSLの波は、家庭にも押し寄せる。これにより2001年は、家庭のリビング・ルームがインターネット情報戦争の主戦場の1つになるだろう。 「パソコン+常時接続インターネット」は、特に、パソコンに詳しくない主婦や子供にとっては「パソコン+ダイヤルアップ・インターネット」とは別モノである。「いつでも、どれだけ使っても、料金は変わらない」という分かりやすさは、これらの人たちにインターネットを解放するはずだ。 この結果、永らくリビング・ルームにあって、唯一社会を映し出す窓として君臨してきたテレビ放送の立場が揺らぐことになるだろう。これまでもテレビ放送には、家庭用ゲーム機やレンタル・ビデオ(レンタルDVD)という手強い敵がいたが、これらとは時間の奪い合いになるだけだった。ところがインターネットは、テレビ放送に負けず劣らず、リアルタイムに社会を映し出す。しかもこの窓を使うと、受動的に情報を受け取るばかりでなく、自分から働きかけて、飛行機を予約したり、本を買ったり、なつかしのLPを競り落としたりできるのだ。 常時接続の導入と同時に、リビングと書斎、あるいは子供部屋を結ぶ家庭内LANも普及するだろう。接続方法の最有力候補は無線LANだが、HomeRF(IntelやIBMなどが策定した無線通信規格)や、さらに将来には、電灯線を利用するネットワークにもチャンスがあるかもしれない。 http://www.デジタルアドバンテージ.jp/サイバー・スクワット(ドメイン名の不当占拠)に対する紛争解決手段が確立されたことから、これまでの「1社1ドメイン名」という厳しい条件から、任意の名前でドメインを取得できるという「汎用JPドメイン名」がまもなく利用可能になる。この汎用JPドメイン名では、従来のような英数字だけでなく、漢字を利用することもできる。たとえばドメイン名を取得すれば、弊社のホームページを"http://www.デジタルアドバンテージ.jp"にできるというわけだ。 一部のマスコミが「日本語が使えるドメイン名」などとして報道したことから、レジストラ(ドメイン名の登録サービス事業者)などに問い合わせが殺到しているという。まったく困ったことだ。事情を知らない人の中には、「広告に印刷するURLに日本語が使えると分かりやすい」などと歓迎している向きもあるようだが、実際には大混乱のタネにしかならないだろう。 まず、日本語ドメイン名は、英数字にエンコードされてDNSサーバに送られるのだが、この作業はWebブラウザなどのクライアント・アプリケーションが行わなければならない。つまりIEやNetscape Navigatorに追加モジュールを組み込む必要がある(標準サポートの目処はまだたっていない)。こうした作業の負担は、すべて現場の管理者にふりかかってくる。 また日本語URLを手で指定するには、当然ながら「かな漢字変換」が必要になる。つまり、外国のユーザー、ないし何らかの事情で海外版のOSなどを使っているユーザーは、日本語ドメイン名を指定できない。さらに、たとえ漢字変換が可能だったとしても、日本語ドメイン名では、半角英数字と全角漢字を正しく使い分けなければならない。上級者であっても、うっかりすると入力ミスをしでかすだろう。初心者は言うに及ばず、である。 読者が管理者なら、たとえ日本語ドメイン名が利用可能になっても、これを使わないようにユーザーを指導する必要があるだろう(外国からのアクセスを考慮して、通常は日本語ドメイン名だけでなく、半角数字からなる従来どおりのドメイン名も取得することになっている)。 ■ 今回は紙数がつきてしまったが、まだまだ、インターネットにはドラマがありそうだ。これらについては、鋭意このコラムでお話ししていくことにしよう。 小川 誉久(おがわ よしひさ) |
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