XML & Web Services 第12回 読者調査結果発表 〜XML/Webサービス活用推進のポイントは?〜 小柴 豊 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 2004/6/9 |
@IT XML & Web Servicesフォーラムでは、2004年春、第12回となる読者調査を実施した。XML/Webサービス技術はどの程度利用され、今後の活用推進のカギはどこにあるのか? さっそくその状況をレポートしよう。
■“踊り場”が続くXML/Webサービス活用状況
まず読者のかかわる業務システムにおける、XML/Webサービス技術の活用状況から確認しておこう。図1のとおり、回答者の中で両技術を「すでに活用している」読者は、XMLで31%、Webサービスで15%となった。これは1年前に実施した第9回調査(XML:32%、Webサービス:16%)と同レベルの数字であり、全体的には技術普及の踊り場が続いているようだ。
図1 XML/Webサービスの活用状況(N=488) |
■XML/Webサービス活用に必要なものは?
では今後XMLやWebサービスをシステムに活用していくためには、何が必要なのだろうか? 読者にその推進要素を尋ねたところ、「技術仕様の標準化」がトップに挙げられ、「エンジニアのスキル向上」「開発生産性を高める各種ツールの充実」がそれに続いている(図2)。
図2 XML/Webサービス活用の推進要素(N=488) |
XML/Webサービス技術の標準化について、読者からは
- セキュリティを含めより実用的に利用できるような、完全にオープンでかつ標準化された仕様に期待
- ベーシックなRPC/データ交換を超える高度なビジネストランザクション/プロセスに活用するには、まだまだ機能が不足している
といったコメントが数多く寄せられた。しかし最近では、2004年4月に“Web Services Security (WSS)”のバージョン1.0がOASIS標準として発表されたほか、ビジネス・プロセス・フロー記述言語“Business Process Execution Language for Web Services(BPEL4WS)”対応のミドルウェア製品も複数登場するなど、技術・仕様面の整備が加速している。この分野の最新動向を整理/定点観測したい方は、ぜひ下記関連記事もご参照いただきたい。
○関連記事
- 連載:W3C/XML Watch
- 連載:ビジネスWebサービス最新事情
- 噂のBPELネイティブ対応SOA製品がついに登場、IBM(NewsInsight)
■XML/Webサービスの活用用途は?
次に、読者が現在どのような用途にXML/Webサービス技術を活用しているのか、その最新状況を尋ねた結果が、図3(紫棒)だ。上位には「社内システム間のデータ転送/RPC」「特定業種/業務の共通データフォーマット」「企業間電子商取引」といった項目が並び、シンプルな社内活用からBtoBまで、XML/Webサービスの活用領域が広がっていることが分かる。今回さらにその案件内容について質問したところ、
- グループ企業との工事工程の共有化にWebサービスを利用
- 電子カルテシステムで検査データのやりとりに使っている
- 損害保険会社の自動車事故査定用ファイルの交換フォーマットとして利用中
など、さまざまな業種における具体的な活用場面を聞くことができた。上述したようにXML/Webサービス技術の全体的な活用率は大きく伸びていないが、個別業種単位の取り組みは、着実に進められているようだ。XML市場のブレイクスルーは、こうした“バーティカル・ソリューション”を通じて実現するのかもしれない。
図3 XML/Webサービスの活用用途(複数回答、利用中 n=152、利用予定 n=342) |
とはいえ、現実的にすべての業種でXML/Webサービスによる取引が進むとも思えない。
- CSV形式のファイルのやりとりで十分に運用できている
- XMLでやりとりする取引先もなく、固定フォーマットでやりとしているので特にXMLを活用する理由がない
との意見に代表されるように、既存システムへの不満が強くなければ、一般に“問題なく動いているシステムはいじらない”心理が働くからだ。そこで注目されるのが、今後予定/検討されている用途のトップに挙げられた「電子ドキュメント/コンテンツ管理」分野だ(図3 黄棒)。世の中のニュースなどを見ていると、“XML/WebサービスといえばBtoB/EAI”という先入観を抱きがちだが、もともとXMLの柔軟性は、半定型/非定型データのハンドリングに適している。そうした意味で、ドキュメント管理のような情報系システム分野におけるXML/Webサービス技術の適用可能性は、基幹系以上に大きいのではないだろうか。
■XML用データベースの利用状況は?
さて後半では、XMLデータを格納するデータベース製品の利用状況を見ていこう。まず現在の利用製品では、「Oracle Database」がトップを走っており、「Microsoft SQL Server」がそれに続いている(図4 緑棒)。基本的には日ごろ使用しているRDBMS製品に、XMLデータをマッピングしている読者が多いものと思われる。
一方、今後の利用予定では、オープンソースの「PostgreSQL」が一番人気となった(図4 黄棒)。PostgreSQLにXMLデータベースの機能を付加する“XMLPGSQL”なども登場しており、ネイティブXMLデータベース「Apache Xindice」と併せて、この分野でもオープンソース製品の注目度が上がっているようだ。
図4 XML用データベース製品利用状況(複数回答、利用中 n=152、利用予定 n=342) |
■XML用データベース選択時の重視点は?
では上記のようなXML用データベースを選択する際、読者は何を重視するのだろうか? 複数回答で尋ねた結果、XML活用者/予定・検討者の6割強が、「XMLデータ処理時の性能/パフォーマンス」に着目していることが分かった(図5)。“(XMLは)パースする際のオーバーヘッドが多いので、ミッションクリティカルだったり、速度を求めるところでは使えない”とのコメントも寄せられており、パフォーマンス問題はXML/Webサービス活用の是非をも左右する重要ポイントといえそうだ。
図5 XML用データベース製品選択時の重視点(複数回答 n=342) |
■調査概要
- 調査方法:XML & Web ServicesフォーラムからリンクしたWebアンケート
- 調査期間:2004年3月16日〜4月9日
- 回答件数:488件
「XML & Web Services フォーラム読者調査」 |
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