短期連載:SOAベンダ動向レポート(2) Page 1/2
「実用フェイズ突入」を宣言したBEAのSOA戦略
期待された割になかなかビジネスに結び付かないWebサービス。ところが2004年になって突如、Webサービスを包含しつつさらに上位概念であるSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)という言葉に吸い寄せられるように、アプリケーションサーバ・ベンダ、EAIベンダ、業務パッケージ・ベンダはこぞってSOA対応製品をリリースしてきた。本連載はSOAをめぐる有力ベンダの製品動向とマーケティング戦略の最前線をレポートする。(編集局) |
岩崎 史絵
2004/12/10
主な内容 SOAをめぐる「技術者」と「ビジネス・ピープル」の温度差 「ビジネスプロセスに準拠した連携」と「再利用」 BEAはJ2EEサーバをSOA実現の基盤とする 開発環境とオープンソース戦略「Beehive」 ESB「プロジェクトQuickSilver」は次期バージョンで搭載? |
この1年はSOAについて、あまりにも多くのことが語られ過ぎた感がある。SOAは相変わらず「よく分からないもの」であるが、1つだけはっきりしたのは、技術者の多くはSOAに否定的な態度を取り、これに対して企業のマネージャ層はこの真新しいIT用語に熱烈なラブコールを送るという、分裂現象が起きていることだ。そして2004年も幕を閉じようとしている現在、大方の技術者の予想に反して、ビジネス系の人々のSOA熱は一向に冷める気配はない。
日本BEAシステムズ マーケティング本部長 保阪武男氏 |
これについて、日本BEAシステムズ マーケティング本部長の保阪武男氏は「SOAが登場した背景には『ビジネス変化に追随するシステムを手早く開発したい』というビジネスニーズが控えているからです。これまでのシステム開発は、個別案件ごとに機能要件を決め、ゼロから開発してきました。それでは変化の激しいビジネス環境に追い付かない。そこで出てきたのが、インターフェイスを標準技術で実装し、共通化できるアプリケーションの機能を再利用して、手早くシステム開発を実現するという考え方でした。これにSOAはぴったりはまるのです」との見解を示した。
テクノロジとしてSOAを明確に定義するのは困難であっても、「確実にいえることは、企業はSOA的なソリューションを強く望んでいる」と保阪氏は指摘する。もしそれが真実であれば、SOAに否定的な技術者もそろそろ真剣にSOAを研究しなくてはならないだろう。
では、なぜ既存のアプリケーション統合技術であるEAI、あるいは分散処理技術のCORBAやDCOMでは駄目で、SOAなら受け入れ可能だったのか。保阪氏は「ビジネスプロセス」と「標準技術による再利用」の2点を強調した。
「EAIは単に既存のアプリケーション間でデータを受け渡すだけのものです。そこには開発コストの削減や、ビジネスの変化に対応する能力はありません。SOAはビジネスプロセスを動的に組み替える仕組みを持っています。ここがEAIとの決定的な違いです」(保阪氏)。Webサービスといって反応しなかったビジネス系の人々がSOAに飛びついたのは、BPMに魅力を感じているからだといえるだろう。
また、CORBAやDCOMとSOAとの決定的な違いは、「完全なオープン技術かどうか」という点にあると保阪氏はいう。CORBAやDCOMは特定のベンダ製品に強く依存する。Webサービスをインターフェイス技術に据えることで、既存のアプリケーションを自由に連携・呼び出し・再利用できる「サービス化」が、ベンダ依存ではなく業界標準技術によって可能になった。
「アーキテクチャも技術も異なるシステムの機能を、別のシステムで再利用できる」という点が重要であり、BEAはこの“再利用”というキーワードをSOA戦略の中で大きく打ち出している。後述する「コントロール」「Beehive」は再利用を重視するBEAの戦略の中でとらえるべきテクノロジといえるだろう。(次ページへ続く)
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短期連載:SOAベンダ動向レポート(2) 「実用フェイズ突入」を宣言したBEAのSOA戦略 |
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1 ・SOAをめぐる「技術者」と「ビジネス・ピープル」の温度差 ・「ビジネスプロセスに準拠した連携」と「再利用」 |
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2 ・BEAはJ2EEサーバをSOA実現の基盤とする ・開発環境とオープンソース戦略「Beehive」 ・ESB「プロジェクトQuickSilver」は次期バージョンで搭載? |
SOAベンダ動向レポート |
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