IPv6 (Internet Protocol Version 6)
【アイ・ピー・ブイ・シックス/アイ・ピー・ブイ・ロク】
Internet Protocol Version 6の略。現在広く使われているIPv4の後継として開発された次世代のIPプロトコルであり、インターネットのバックボーンなどを中心に実験や運用が進みつつある。IPv4にあったさまざまな問題点を解消するために開発され、特に128bit幅のIPアドレス・フィールド(IPv4の4倍の幅)による、広大なIPアドレス空間が大きな特徴である。さらに、セキュリティ機能の充実や自動的なIPアドレスのコンフィギュレーション、リアルタイム・マルチメディア・アプリケーションへの対応なども考慮されている。
現在広く普及しているTCP/IPは、ネットワーク層プロトコルとしてVersion 4のIP(Internet Protocol)プロトコルを採用しており、そのためにIPv4と呼ばれている。しかしIPv4は開発されてから20年以上が経過し、さまざまな不具合や制約などが表面化している。特に深刻なのがIPアドレスのフィールドが32bit幅しか用意されていないことによる、IPアドレス空間の不足である。32bitでは、無駄なく使ったとしても全体で約43億台程度のホストしか認識することができない(さまざまな理由により、実際にはもっと利用効率は低い)。しかしインターネットの急速な普及によって、インターネットに接続されるコンピュータの数が激増し、接続に必要なグローバルIPアドレスが枯渇しつつある。NATやIPマスカレード技術を利用してグローバルIPの消費を抑えたり、従来割り当てられていたグローバルIPアドレスを分割して再割り当てし、有効活用を図ったりしているが、あと数年もすれば枯渇する見通しである。そうなれば、インターネットに接続したくても、接続できないという状況に陥ってしまう。
この問題を解決するため開発されたのがIPv6である(Version 5というプロトコル番号はInternet Stream Protocolという実験プロトコルで使用済みなので、6となっている)。当初はIPアドレス空間の拡張がIPv6の主目的であったが、それ以外にもさまざまな機能強化が図られ、IPv6として仕様が決定された。
IPv6では、IPアドレス幅をIPv4の4倍である128bit幅に拡張している。これにより、理論的には2の128乗(3.4×10の38乗)台ものコンピュータや機器をインターネットに直接接続することができる。このような広大なアドレス空間にしたのは、コンピュータだけではなく、例えば冷蔵庫やエアコンのような家電製品や自動車など、いままではコンピュータ・ネットワークとはあまり縁がなかったようなものにまですべてIPアドレスを与えて、接続することを考慮するためもある。
128bitのIPアドレス空間は、実際にはフラットに使うのではなく、上位bitの方から何bitずつかまとめて階層的なアドレス空間を形成することになっている。IPv6で利用できるIPアドレスの種類にはいくつかあるが、一番基本的なユニキャストアドレスでは、上位bitの方からTLA(Top Level Aggregation。トップレベルの集約)、NLA(Next Level Aggregation。次のレベルの集約)、SLA(Site Level Aggregation。サイトレベルの集約)、インターフェイスID(各ノードごとの固有なアドレス)の4つのパートに分けて管理される。TLA(13bit幅なので最大で8192個)は全世界規模のインターネットプロバイダ組織に割り当て、NLA(24bit幅)はISPに接続している各組織に割り当て、SLA(16bit)はその組織内でのサブネットの識別のために割り当てることになっている。世界規模のルーティングはTLA部だけを元にして(ISP間で)行うことになっているので、ルーティングテーブルに必要なエントリ数は最大でも8192個までに抑えられている。これはIPv4におけるルーティングよりもはるかに限定的なので、管理が行いやすいというメリットがある。
インターフェイスID部は64bitあるが、ここには各ネットワークインターフェイスごとの固有のID(例えばイーサネットならば48bitのMACアドレス)をそのまま使ってアドレスを構成することができる。これにより、各ノードごとのIPアドレスの割り当て方法が簡略化され(MACアドレスをそのままインターフェイスIDの一部に埋め込めば、自動的にIPアドレスの一意性が保証される)、従来のように、IPアドレスが衝突しないように(DHCPや手動で)調整して割り当てる必要がない。この自動的なIPアドレスの決定機能もIPv6の大きな特徴である。
IPv6では、IPプロトコルレベルでパケットの暗号化/復号化機能を備えており、安全なネットワークを構築しやすいという特徴がある。IPv4ではパケットの暗号化や復号化はIPとは別のプロトコルで対応していたため、相互運用性などに問題があった。IPv6では基本機能として暗号化をサポートしているので、よりスムーズに暗号機能を利用できるようになると期待されている。
この他にも、IPヘッダの簡略化によって(IPヘッダのチェックサムの計算コストが低減する)、IPv4よりも効率的に通信ができるようになるし、拡張性が高いという特徴なども持っている。またリアルタイムのマルチメディアアプリケーションなどをサポートするために特別な属性(フローラベル:アプリケーションごとのマルチメディア・ストリームを識別、対応するために使用される)など、さまざまな機能が導入されている。
IPv6を利用するためには、IPv6対応の新しいアプリケーションやネットワーク機器が必要となる。各ノード上のTCP/IPプロトコル・スタックがIPv6に対応していて、かつ利用するアプリケーションもIPv6に対応している必要があるだけでなく、経路の途中にあるルータなどのネットワーク機器もIPv6に対応していなければならない。インターネット上でIPv6を使うためには、さらにプロバイダ側もIPv6に対応していなければならない(IPv6対応のインターネット実証実験として、6boneというプロジェクトが実施されている)。現在は、インターネットや企業内のごく一部でIPv6の導入・実証試験などが行われている段階であり、一般的なエンドユーザーがIPv6を利用するような環境にはなっていない。今後、徐々に各機器のIPv6対応が進み、将来はエンドユーザーレベルのマシンでもほとんどすべてがIPv6対応になると予想されるが、ソフトウェアのアップデートなどができない機器やマシンは、IPv4のまま使い続けることになるだろう。この場合は、IPv4とIPv6を相互に接続、変換するゲートウェイが必要となる。
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