Athlon XP
【アスロン・エックス・ピー】
AMDが2001年10月9日に発表したデスクトップPC向けのx86互換プロセッサ。それまでのデスクトップ向けプロセッサ「Athlon(アスロン)」の後継として開発され、Athlonのアーキテクチャを継承しつつ改良を施すことで、同クロック周波数のAthlonより約10%の性能向上を果たしている。発表当時のプロセッサ・コアは開発コード名「Palomino(パロミノ)」だったが、2002年6月には、Palominoの後継のコアである開発コード名「Thoroughbred(サラブレッド)」を採用したバージョンが発表されている。
Athlon XPは、その前から出荷されていたノートPC向けプロセッサ「モバイルAthlon 4」、サーバ/ワークスーション向けプロセッサ「Athlon MP」のデスクトップPC版に位置付けられる製品だ。従来のAthlonが搭載していたSIMD拡張命令のエンハンスト3DNow!テクノロジに加え、Pentium III/Pentium 4などが搭載しているストリーミングSIMD拡張命令(SSE)と互換性を持ったSIMD拡張命令を追加した3DNow!プロフェッショナル・テクノロジをサポートしている。これにより、DVDビデオのエンコードなどのマルチメディア機能が強化されているという。Athlon XPの「XP」は、Windows XP環境において、従来のAthlonより「eXtreme Performance(極めて優れた性能)」を発揮することを示すものとされる。
Athlon XP 対応プラットフォームは従来と同じSocket Aだが、パッケージ自体はCPGA(セラミックPGA)からOPGA(オーガニックPGA)に変更された。OPGAは性能向上とコスト低減に貢献しているという。写真提供:AMD |
Athlon XPのコア・アーキテクチャは通称「QuantiSpeed」と呼ばれ、以下のような特徴を備えている。
(1) 9命令同時発行可能なスーパースケーラ・マイクロアーキテクチャ
(2) パイプライン化されたスーパースケーラ浮動小数点演算ユニット
(3) ハードウェア・データプリフェッチ
(4) Exclusive(排他的)&Speculative(投機的)TLB(Translation Look-aside Buffer)
このうち(1)と(2)は、すでにAthlonで実装されており、実質的に(3)と(4)がAthlon XPで追加された新機能である。
(3)のハードウェア・データプリフェッチとは、実際にキャッシュ・ミスが生じる前に、必要になりそうなデータをあらかじめ予測してメイン・メモリから読み出してキャッシュに転送しておく機能だ。これにより、メイン・メモリの読み出し遅延(レイテンシ)による性能低下が抑えられるというメリットがある。
(4)にあるTLBとは、プログラムから見えるメモリ空間のアドレス(仮想アドレス)と実際のメモリ・アドレス(物理アドレス)との対応表を一時的に保存するバッファのこと。仮想アドレスから物理アドレスへの変換を高速に実行するためのものだ。Athlon XPに実装されたExclusive&Speculative TLBでは、アドレス対応表内での重複をなくして2次キャッシュの利用効率を高め、また必要になりそうなアドレス対応表を予測して事前にTLBに格納しておく。こうした技術によりアドレス変換速度が高められている。
Athlon XPは、プロセッサ・コアの種類によって、若干仕様が異なる。以下では、初代のPalominoコアと、その後継であるThoroughbredコアに分けて、Athlon XPの主な仕様を記す。基本的にThoroughbredコアはPalominoコアの機能をそのままに、製造ルールの微細化により低消費電力と高クロック化を実現したものだ。なお、Palominoコアのものは「Athlon XP Model 6」、またThoroughbredのものは「Athlon XP Model 8」などとも呼ばれる。
項目 | 内容 |
マイクロアーキテクチャ | QuantiSpeedアーキテクチャ |
コアのクロック周波数 | 1.33GHz〜1.73GHz(モデルナンバ:1500+〜2100+) |
FSBのクロック周波数 | 266MHz |
1次キャッシュ | 命令:64Kbytes/データ:64Kbytesの合計128Kbytesをコアに統合 |
2次キャッシュ | 256Kbytesをコアに統合 |
製造プロセス | 0.18μm・銅配線 |
トランジスタ数 | 3750万個 |
パッケージ | OPGA(Socket A対応) |
SIMD命令 | 3DNow!プロフェッショナル |
Athlon XPの主な仕様(Palominoコア、Model 6) |
項目 | 内容 |
マイクロアーキテクチャ | QuantiSpeedアーキテクチャ |
コアのクロック周波数 | 1.46GHz〜2.25GHz(モデルナンバ:1700+〜2800+) |
FSBのクロック周波数 | 266MHz/333MHz |
1次キャッシュ | 命令:64Kbytes/データ:64Kbytesの合計128Kbytesをコアに統合 |
2次キャッシュ | 256Kbytesをコアに統合 |
製造プロセス | 0.13μm・銅配線 |
トランジスタ数 | 3750万個 |
パッケージ | OPGA(Socket A対応) |
SIMD命令 | 3DNow!プロフェッショナル |
Athlon XPの主な仕様(Thoroughbredコア、Model 8) |
このほか、細かいところでは、「サーマル・ダイオード」というプロセッサ・コアの温度を測定するいわばセンサのような素子がコアに内蔵されたことも、Athlon XPの改良点だ。マザーボードが対応していれば、CPUクーラーのファンの故障などでコアの温度が急上昇しても、自動的にクロックや電力の供給をとどめるなどしてコアの焼損を防ぐ、ということが比較的容易に実現できる。
マーケティングの面から見たAthlon XPの大きな特徴は、従来のようにクロック周波数ではなく「モデル・ナンバ」と呼ばれる数値で性能を示していることだ。つまり、従来は「Athlon-1.4GHz」という表記だったのが、Athlon XPでは「Athlon XP-1500+」といった表記になっている。AMDによれば、モデル・ナンバの値は各種ベンチマーク・テストの結果から算出されているという。
モデル・ナンバ | 実動作クロック周波数 | Palominoコア(Model 6) | Thoroughbredコア(Model 8) |
1500+ | 1.33GHz |
○
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|
1600+ | 1.40GHz |
○
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1700+ | 1.47GHz |
○
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○
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1800+ | 1.53GHz |
○
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○
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1900+ | 1.60GHz |
○
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○
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2000+ | 1.67GHz |
○
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○
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2100+ | 1.73GHz |
○
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○
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2200+ | 1.80GHz |
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○
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2400+ | 2.00GHz |
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○
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2600+ | 2.13GHz |
|
○
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2700+ | 2.16GHz |
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○(FSB333MHz)
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2800+ | 2.25GHz |
|
○(FSB333MHz)
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Athlon XPのモデル・ナンバと実動作クロック周波数、およびプロセッサ・コアとの対応 |
モデル・ナンバは、Athlon XP同士の相対的な性能比較に利用されるもので、ほかのx86プロセッサのクロック周波数とは直接比べられるわけではない。ただし、Athlon-1.4GHzの性能が基準となっており、Athlon XPのモデル・ナンバでいう「1400+」に相当するという。
2002年10月には、FSBクロック周波数を従来の266MHzから333MHzに高めた「Athlon XP-2700+/2800+」が発表されている。
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