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ビジネスプロセス・マネジメントのすすめ

株式会社メタジトリー
丸山 則夫

2006/2/2

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ビジネスプロセス・マネジメントによる成功

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 以上のようなもろもろの問題を解決するためには適切なビジネスプロセス・マネジメントの適用が有効です(ここでのBPMは情報技術ではありません)。

 BPM適用で衝撃を受けた例を紹介します。

ペンタゴンの「大きなダメージからの復旧」

 2001年9月11日、ペンタゴン(米国防総省)に旅客機が突っ込みました。あの911テロにおける一連の悲劇の1つです。復旧プログラムは、事件発生直後からスタートしていました。そして11カ月後に完全復旧しています。膨大な復旧のためのプロセスをコントロールし、予定どおり完了したのは驚異です。以下に状況を列挙しました。

  • 計画は1年以内で復旧
  • 実施は11カ月で完了
  • 構築はアウトソーシングで民間業者
  • 破壊は一部だが、ダメージは大で複雑な設備を対象
  • 業務を中断せず、復旧作業を実施
  • 3万のアクティビティが生まれた
  • 工数は300万人時

 複雑な状況の中での無事な完了は、計画のキープ、日々変化の状況の把握(パフォーマンス検証)、トラブル時のアクション……などがダイナミックに連携するよう管理しながら進めていって可能となります。そこにはプロセスマネジメントの役割が大きいといえます。

政策、リスク、人、管理、テクノロジなど

 また、情報システムの実装をテーマに据えたとき、ほかの世界とコミュニケーションの成立が困難な現状です。それを解決するためにBPMが必要です。

図2 BPMの対象

 経営とITの融合を、政策決定のためのテクノロジ適用と位置付けてみると、次のような広がりが生まれます。

  • BSCやKPIを技術とするなら、経営での活用は政策決定というあいまい性を取り込んだ中でその適用を行わなければなりません。政策決定とテクノロジは業務プロセスを介して活用します。
  • その定着には人的可能性に期待します。スキルや意欲の向上は、業務プロセスとテクノロジに負います。
  • 危機管理という視点を加わえると、BSCやKPIなどの可視化情報は行動指針となります。その評価には業務プロセスを可視化するBPMS(BPMシステム=テクノロジ)を活用します。
  • プロジェクトマネジメントがさらに加わると、発生した課題の実現に向けた期間の設定と、必要タスクの設定、工数算定を行います。それは単に情報システムを中心に据えるのでなく、経営改革、業務改善の関係を持ちながら状況変化を逐次、吸収しながら行う方法論となります。

 つまり、システム開発は情報システム構築から、より事業寄りに構築事項を置き、ビジネス&サービス志向の構築に変わり、新たに両者の関係を最適化する機能が加わります。

 情報システム構築は、RFPをシステム要件としての構築から、ビジネス領域の要件と連携しながらビジネス層を含めたエンタープライズ・システムの進化を実施するものに変えます。

 この変化を従来の方法で解決しようとすると、業務と構築のギャップを構築(システム)で吸収したり、経営と業務のギャップを業務で吸収したり、どこか一方に負担を掛けるものになります。

 それに対して、BPMでは解決するための工数や期間の短縮と構造の柔軟性を確保するため、個々のギャップ埋める層を設けます。

継続成長と成熟度

 情報システムと事業活動の同期を取るのはROIを求める姿勢です。BPMは、ROIと継続成長を求めます。

 下の図は弊社の使っている業務と情報システムの成熟度モデルです。このモデルを使って説明します。

図3 業務と情報システムの成熟度モデル

 例えば統合パッケージを導入し、業務の見直しを怠ると、情報システムが先行します。その結果、統合パッケージの品質保持のために日常の業務とは別のオペレーションを設定します。そのようにすると期待した導入効果が得られないばかりか、かえって業務を圧迫してしまいます。

 反対に、業務が先行して情報システムの導入を遅らせたとき、事業の状況を正確に把握することや計画策定の木目の細かさを求めると、作成資料の種類や量の増加が、紙のはんらん・人手の作業の増加を生み、コストの増加となります。

 すなわち、両者の成熟度のバランスが必要なわけです。そうしたバランスが取れた例を紹介します。

  • ある企業の経営企画の人が興味のあることを話しました。

     「情報システムを生かし、経営状況の可視化が実現できた。すべての案件の状況を把握し、年度の売上も、数カ月前に分かるようになり、正確な計画立案が可能になった」

     そしてそのような状況を「見え過ぎて、困った」といいました。

 この例の企業は、成熟度モデルからすると業務成熟度は管理レベル、情報システムの成熟度はシステム統合レベルに達しています。数年前、支援を開始した時点は業務成熟度が定義レベル、情報システム成熟度がツール利用レベルだったことからすると、素晴らしい進化ですし、バランスも完ぺきです。

 しかし、この不満はどういうことでしょう? これは企業が取り巻く環境の厳しさが、業務成熟度の最高レベルを要求し、その答えを探す段階に入ったといえます。つまりこの「困った」は、“問題”ではなく“効果”なのです。

 BPMは成熟度の向上を促し、その実践で企業は継続成長を推進する力を持ちます。

新たな人材(財)の必要性

 経営とITの融合をスムーズに行う1つの方法がBPMです。

 企業活動にBPMを定着しようとすると、実践者のスキルと意識が従来のものとは異なり、人材が足りません。その実践を速やかに行うためには、広く、経営、事業に関する知識とITの関係を体系化し、取得すべき内容を整理し、それを基に人材を確保しなければなりません。

 それは、新たな産業の創生ともいえるほど、経営・業務と技術・構築に大きな変化をもたらします。夢を持てる取り組みといえます。いま、そんな思いで計画中のBPM企画の研修ステップアップ表(仮称)を参考に示しておきます。

実務で業務改善&改革の問題意識を持っているが、BPMについてはほとんど知らない。情報システム構築のやり方を漠然と変えたいと思っている。 BPMについてのある程度の知識を持つが、実務とその知識が遊離していることを実感している。情報システムが業務と遊離している行われていると感じていて、何とかしたいと思っている。 BPMについて基礎知識を持ち、実務でも一部の適用を経験しているが、総合的な管理が不足し、その必要性を感じている。自分の現状の仕事がさらに充実したものになり、リーダーとしての活動を望んでいる。 BPMを実務で実践していて、リーダーとしての経験も積んでいるが、その技術や方法が経験から得られたものが多く、理論的な裏打ち応用知識を持ち、ほかの業務領域に対して業務改善&改革で貢献することを望んでいる。 BMP全般の実行と理論に十分な見識を持ち、社会(市場)の仕組みの進化に貢献することを望んでいる。
図4 BPM企画の研修ステップアップ表(仮称)

(了)

筆者プロフィール
丸山 則夫(まるやま のりお)
株式会社メタジトリー 代表取締役社長
経営と情報システム連携をコンセプトとして、事業成熟度・情報システム装備度診断、8視点診断などの技法を開発し、システム再構築のコンサルティングビジネスを実施。ビジネスプロセスに着目したBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)の活用が情報化社会の進歩に必要ととらえ、市場定着とそのための組織化を推進中。
専門:企業モデル策定、データベース概念設計、XML適用技術全般、コンテンツマネジメント・ナレッジマネジメント・ラーニングマネジメントの構想から構築までなど。
著書:「勝者のデータベース経営戦略」「XMLでe-ビジネスに勝つ」「これから始める人のXMLガイドブック」「実践XMLのスキーマ設計ガイド」など。
URL:http://www.metasitory.com/
E-Mail:n-maruyama@metasitory.com
■要約■
事業運営に情報システムが欠かせない。しかし、事業の推進と情報システムの構築の関係は、水と油のごとく遊離しているように思えるのはなぜだろうか?

事業運営と情報システム構築に関係する役割を経営、業務、技術、構築とすると、それらの特徴は以下の通りだ。

−経営は、不確定を判断
−業務は、不確定を実行
−技術は、確定として決断
−構築は、確定として実行

「……として」というのは、割り切りを意味している。情報システム化や技術開発は、あいまい性を割り切り、モデル化を行い、その中で完全さを求め、実現するものなのである。

ビジネスプロセス・マネジメント(BPM)とは、この4つの領域間で生まれるギャップを解消することをいう。

企業活動にBPMを定着しようとすると、実践者のスキルと意識が従来のものとは異なり、人材が足りない。それは、新たな産業の創生ともいえるほど、経営・業務と技術・構築に大きな変化をもたらす。

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 経営、業務、技術、構築の役割とその特徴
 経営、業務、技術、構築の間のギャップ
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