連載
KIU研究会レポート(4)


ビジネスとITのギャップを埋める8つの方法

生井 俊

2007/2/16

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第10回 KIU研究会 − 2006年9月26日

BusinessとITを融合させるBPMソリューション AquaLogic Business Service Interaction

 
Speaker
日本BEAシステムズ株式会社
ソリューション営業本部 ALUI営業部 部長
青木 邦夫氏
   

 企業がSOAによって、より柔軟なアーキテクチャに取り組もうとしています。そのマーケットデマンドに対して、BEAが用意するのが「AquaLogic」です。現在、BusinessとITにすき間があるので、そのギャップを埋めていくのがコンセプトです。「Business LiquidITy」としてBEAは、企業のコスト構造を改善し、新たな利益源を拡張するために、ビジネスの質の転換と最適化のための統一されたSOAプラットフォームを提供します。

 具体的には、営業部門、開発部門、カスタマーケア部門など、縦割りで凍りついている企業資産を、柔軟にやりとりできる「Liquid(液体)」に変換し、人、プロセス、システム間の橋渡しをするものです。ポータル、BPM、EAIなどの総合開発環境は「WebLogic」が、アプリケーションセキュリティ、UI統合、仮想データサービス、サービスバスは「AquaLogic」が担い、用意する各種コンポーネントをベースとしてシステム作りを行います。

 BPMについて、人的要件が強いユーザーインターフェイスと、システム要件が強いビジネスプロセスの2つの要素がありますが、BEA製品は人中心/プロセス中心の統合的プロセスのすべてをカバーします。「AquaLogic BPM」では、アプリケーション開発の全ライフサイクルを、1つのプラットフォームで実現しています。可視性、変化対応能力、ビジネスプロセス管理が確実に実装されるというメリットがあります。情報システム部門のエンタープライズインテグレーションについては、「WebLogic Integration」「AquaLogic Data Services Platform」など複数の組合せで対応します。

MicrosoftテクノロジによるSOA&BPM

 
Speaker
マイクロソフト株式会社
サーバプラットフォームビジネス本部 プロダクトグループ BizTalk Server担当
熱海 英樹氏
   

 「BizTalk Server」では、アプリケーションプラットフォームのSOA&ビジネスロジック機能層を担っています。「BizTalk Server 2006」のエンジンは、HTTP、SOAPなどのトランスポートハンドラ(アダプタ)、デコード/エンコード、暗号化/復号などのメッセージパイプライン、メッセージボックスの関連付け&コンテンツベースルーティングを担うアクティベーション&インスタンス管理、オーケストレーション、他システムを包括しています。その主要コンポーネントは、プロセスを描いた「オーケストレーション」と「メッセージング」で、エンジンの主要な役割は外部アプリケーションとのメッセージ通信です。

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 BizTalk Serverは、サービスの連携エンジンとしての機能があり、その機能要件として自動化、プロセス制御、モニタリングなどがあります。自動化/抽象化/プロセス制御に関しては、オーケストレーションとビジネスルールエンジンを搭載。スキーマ変換についてはスキーママッピングが、モニタリングについては「Business Activity Service」が、エラー復帰についてはアラート/BizTalk管理コンソールが解決にあたります。

 ESBとBizTalk Serverの関係ですが、BizTalk Server2006は、ESBの基本機能に加えて、プロセス実行エンジン(オーケストレーション)やルールエンジンなどさまざまな機能を持っています。ESBイコールBizTalk Serverではなく、BizTalk Serverを使ってESBを実装するものです。

第10回 KIU研究会 − 2006年9月26日

ビジネスルールの歴史とビジネス創造への適用

 
Speaker
株式会社日立製作所
金融システム事業部
浜崎 孝志氏
   

 ルールをハンドリングして、システムを動かすことは20年以上前から行われています。人工知能(AI)研究の中から登場した専門家システムは、専門家の知識をルールとして扱ったものです。1990年代にBPRが提唱されて、ビジネスプロセスを見直そうという動きが出てくると、ルールベースシステムは着目対象をビジネスルールとした、ビジネスルールエンジン(BRE)に発展していきました。

 それをさらに昇華させ、発展させたのがいまの時代──ビジネスプラットフォーム時代だと考えています。ルールベースシステムは1980年代は黎明期、1990年代は対象をぐっと変えたということで転換期、現在はその発展期ととらえると分かりやすいと思います。

 AI研究は、1950年以前にさかのぼることができます。AIという言葉が登場するのは1956年ですが、このころからを「AIの時代」ととらえています。以後、専門家システムは医療系を皮切りに、故障診断システム、カード会社などの入会審査、生産計画などに適応されてきました。システム構成は、知識ベースとそれをハンドリングする推論エンジンがあります。当時は専門家の頭の中から知識を取り出して、知識ベースに格納するナレッジエンジニアが必要でした。

 AIの時代の専門家システムは、難しさがありました。本当に専門家をシステムに置き換える必要があるのかという議論から、システムと人の分業を目指せばいいのではないかという流れが出てきました。一方、アプリケーション開発では変更点があった場合にすべてを置き換えるのではなく、システムロジックからビジネスルールを切り出せば良いのではないか、という考えが出てきました。それらが組み合わされて、ビジネス環境に適応する仕組みとして活用していこうというのが1990年代の転換期です。

 現在、2つの流れがあります。1つはBPMと融合していく方向性で、ビジネスプロセスの自動実行と複雑な業務のビジュアル化を目指しています。もう1つは、プラットフォームとしての高度化です。リポジトリへの格納することで再利用ができますし、アルゴリズムも高度になっています。J2EEや.NETなど標準環境への対応など、エンジンから統合プラットフォームへ転換してきています。その流れの中で、BPMとBRMが融合することで、戦略経営力を高めるビジネスシステムができるというわけです。

ビジネスルールマネジメントを活用した新しいカスタマリレーションの事例のご紹介

 
Speaker
トランスコスモス株式会社
上席常務執行役員
河野 洋一氏
   

 ビジネスルールをマネジメントすることで、主に電話やメールでお客さまとコンタクトする現場で、どのように収益を上げ、またコストを下げていくのかていくのかをご紹介します。

 コンタクトセンターでは、会社が決めた方針などの業務ルール、データマイニングなどにより統計的に導き出されたルール、経験から導き出されるルールの3つがあります。経験ルールですが、例えば債権回収のシーンでは、「このビルに旅行業が入っているはずがない」「この電話番号は秘書サービスのものだ」といったことがすぐ分かるエキスパートがいます。何で知っているかと聞いても、うまく説明ができないのです。しかし、この地域で、このビル名だったら怪しいといった、統計的なものではありませんが、長年業務をしていく中で蓄積したルールがあります。コンタクトセンターは、「人対人」のあまりインテリジェンスのない現場ですから、必ず「IF THEN ELSE」で表すような形態をとっています。

 ビジネスルールマネジメントとは何か、というと、ルールを整理するだけで利益を生むものではありません。ルールをマネジメントしたら、トランザクションを入れて実行プラン(カスタマコミュニケーションプラン)を立案します。カスタマコミュニケーションに関しては何か科学的に立案できるものではありませんが、3つのルールにトランザクションを落として、具体的に実行可能なプランにしていきます。そのときに、これくらいの効果が期待できるという予測値まで算出し、予実対比をするのです。これにより、どのルールが全体のパフォーマンスを上げ、また落としているのかというPDCAサイクルをつくることが一番大事だと考えています。

 トランスコスモスの「MO3」(エムオーキューブ)では、顧客行動モデルを整理してルールを抽出すること、会社の方針やエキスパートの経験をルール化することができます。そこにトランザクションデータを入れ、制約条件を加味して、具体的な実行プランを策定し、その予実を測り、コンタクトセンターでPDCAサイクルをつくり出すサービスを提供しています。

筆者プロフィール
生井 俊(いくい しゅん)
1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。
■要約■
「経営とITの融合」研究会の第8〜11回会合の模様をお伝えする。

ビジネスの成功を支える情報指向経営を実現するためには、情報の可視化と分析、プロセス設計と導入が必要だ。オラクルは、これらをサポートする製品群をホリゾンタル製品の強みと業種別ノウハウを生かして提供している。

日本ユニシスには、独自の企業変革モデルが「SPOIT」がある。戦略に基づきビジネスプロセスを設計変更して、効率的かつ継続的に実行し、モニターするというサイクルを回すもので、BPMの考え方と整合が取れている。

BEAの「AquaLogic」はビジネスとITにギャップを埋めていくというコンセプトの製品。「AquaLogic BPM」は、アプリケーション開発の全ライフサイクルを1つのプラットフォームで実現する。

マイクロソフトの「BizTalk Server」は、アプリケーションプラットフォームのSOA&ビジネスロジック機能層を担っている。サービスの連携エンジンとしての機能があり、機能要件として自動化、プロセス制御、モニタリングなどがある。

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ビジネスプロセスモデリング表記法『BPMN』
オラクルのアプリケーション/ミドルウェア戦略
PMによるグランドデザイン
オージス総研のモデルベース開発とSOA開発
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MicrosoftテクノロジによるSOA&BPM
ビジネスルールの歴史とビジネス創造への適用
ビジネスルールマネジメントを活用した新しいカスタマリレーションの事例のご紹介



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