アジャイル・エンタープライズへのロードマップ
2007/3/16
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俊敏で柔軟な企業変革を具現化する日立コンサルティング/SAPの取組みについて──“変化共生”と“変化創生”環境を作りこむ
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B-1セッションでは、企業における変化を“変化共生”と“変化創生”という2つのモデルから解説し、具体的なソリューションについての説明があった。
日立コンサルティングの木村氏は、まず「変化即応=変化共生×変化創生」という公式を掲げ、左脳的な変化共生と右脳的な変化創生のバランスを取ることにより、“情報すり合わせ時代”に対応することが大切だと述べた。これは左脳的思考=論理思考には限界があり、前提条件の変化に対応したり、他社との差別化のためには右脳的な変化創生という取り組みが大切になるということを述べたものだ。それに対して現在のITシステムは、業務の流れを意識したつくりになっておらず、企業活動を硬直化させる要因にさえなっている。ここで「作らない開発」「持たないIT資産」「意識しないIT統制」が求められると説く。なかでも「作らない開発」では、従来単なるツール/業務手段と考えられていたITを「これからは重要な企業資産としてとらえ、リノベーションのように育成していくことが大切だ」と強調した。
これを受けて、SAPジャパンの古澤氏は従来のERPは、変化共生モデルをサポートするものであったとし、これはこれで重要かつ必要なものであったが、現在では加えて変化創生モデルをサポートする仕組みが必要になってきていると述べた。
木村氏は変化即応のためには情流(情報の流れ)の整流化を考える必要があり、情報ライフサイクルや情報デザインなどの重要性を指摘するとともに、エンドユーザーにとっては情報の見える化、見せる化、見つけやすさが大切だと論じた。古澤氏はSAPのソリューションとして、Microsoft OutlookやAdobe FormsがERPと連動するデモや、情報の流れを制御するモデルのパターンと実装技術を説明した。
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“As-Is”のモダナイゼーションによる“To-Be”での「SOA基盤によるBPMサイクル実践化」のご報告
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B-2セッションでは、現状のシステムをマイグレーションする立場からJ-KIT Systemの李氏が、将来のITシステムの形としてのBPMの立場から日本プロセスの宇野澤氏が語った。
J-KIT Systemの李氏は「保守コストの高止まり、ハードウェアの更新の必要性などから、レガシーシステムはオープン化が迫られる」としながら、レガシーは資産だと述べ、マイグレーションの必要性を説いた。レガシー資産を生かしてマイグレーションを行うためには、システム内部の可視化が重要。J-KIT SystemではModernArchという分析ツールを使ってレガシーシステム(ソフトウェア資産)をメタデータ化し、分析・再構成・言語変換などを行う。李氏は、レガシーマイグレーション自体は難しくないが、ビジネス/システムの連続性を維持して改善を行うポイントは、可視化だと強調した。
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続いて、日本プロセスの宇野澤氏は「これまでのITシステムはユーザー主導ではなかった。ユーザーがシステムを導入するのは、改善や効率化を実行したいからだ。しかも速く。そうしたとき、どういうITシステムが望まれるか? 業務をよく知っているユーザーに使いやすく、業務の変更にもよく対応でき、人とシステムの連携が可能で、標準プロセスを適用できる──。BPMスイート(BPMS)はそれがかなりできるようになっている。BPMSのようなツールとして決まってくると、人間と組織のマネジメントがディペンドしてくる。ツールがフィックスすることで、従来の“システム開発”とは異なる新しい仕事が多数生まれてくるだろう。いま、米国ではBPMが伸びており、そうした状況になっている。日本でも、そのための活動をBPM協会で行っている」と述べた。
関連記事
- 連載:KIU研究会レポート(6) − APジェネレータが導くシステム開発の新パラダイム(アジャイル・エンタープライズ)
- 連載:BPMとBPMSの常識(アジャイル・エンタープライズ)
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『俊敏で柔軟な企業変革』のロードマップ策定支援委員会の発足
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パネルディスカッションでは、15カ月間のKIU研究会の報告から一歩進み、ユーザー企業のために「俊敏で柔軟な企業への変革(SKH)ロードマップ策定支援委員会」(5研究部会)の設立を発表した。
冒頭、山下氏が国政の1つとしてBPMに取り組んでいる韓国の現状を紹介した。その後、各研究部会の会長(副部会長)が、会場などから寄せられた質問にも答えつつ、研究部会が目指す方向を示した。
今後、2〜3年でSOAやBPMが定着するかを問われた日沖氏は、「先日、米国フロリダで行われたとあるカンファレンスでは、導入事例報告が一巡し、改善の状態になったということを感じた。つまり、優良企業では定着したということだ。日本はまだまだ少ないが、ベンダ側でユーザーが選びやすいようにWebサービスをたくさん用意することで、ギリギリ立ち上がるのではないか」と述べた。
俊敏な経営をしていくうえで、経営者のビジョンで外せないものはという質問には、白川氏が「俊敏さについては、CIOが責任を持つべき。ITシステムと業務プロセスは切り離せないということが浸透してきたことで、システムのお守りから、プロセスにも責任をもってほしい。また、経営者のビジョンが失われるとプロジェクトに危機が生まれる。経営者側で、繰り返しビジョンをいっていくこと、ビジネスの優先順位を見失わないことが大事だ」と答えた。
BRM(ビジネスルール・マネジメント)の事例を教えてほしいという問いには、酒匂氏が「俊敏にという部分で、金融をはじめ、販売システムなどにも使われてきている。最近、頻繁に『BPMとBRMは異なるテクノロジだが、補完性のあるもの』といわれるようになった。特に、眼にするのが『デシジョンマネジメント』で商品とサービスの組み合わせが複雑になっている保険系のビジネスでは、高度な判定・判断の支援を自動化し、人間のサービスミスなどを削減するためにも、プロセス上でBRMを適用する例が増えてきている。」と説明した。
BPMのモデリングの手法としてUMLやBPMNなどがあるが、将来的にはどうなっていくか問われ、丸山氏は「限られた場ではあらゆる手法が使えるが、戦略的なプロセスのフロー、ビジネスのフロー、オペレーションのフロー、実装のフローを連続してつなげるためには、いまはBPMNが一番だろう」と答えた。
一方、UMLを推進するオージス総研の山崎氏は「オージスではUMLをやっているが、ノーテーションはお客さまに合わせている。これは大きな問題ではなく、大事なのはモデリングの技術だと考えているからだ。フローを書くときに、誰がどういうふうに使うかを明確にすることが大切であり、UMLをデフォルトにするが、ノーテーションで差別化するわけでない」と述べた。
最後、モデレータの高橋氏が、「KIU研究会などに参加し、私たちと一緒に俊敏で柔軟な企業への変革に取り組んでほしい」と会場に呼び掛け、閉幕した。
1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。
第1回 アジャイル・エンタープライズ カンファレンスが2月22日に開催された。基調講演1では東京大学大学院の大場善次郎教授が、技術者の育成に対する東大の取り組みを紹介した。大場教授は、情報システム技術者教育は実際に企業で活躍している人を招いて「見せる」ことが大事とし、企業でもOJTや知の交流など、いろいろな場を作って欲しいと要望した。
基調講演2では、日本BPM協会 理事の丸山氏が「アジャイル診断」について講演した。これは経営学者アンゾフが定義した「乱気流水準」とアジャイルを対応させたもので、「成熟度」と組み合わせることで、会社のメンバーが自社の現状や目指すべき方向性を認識できるようになる。
丸山氏は、「創造や調整などは、ITではできない。他方、計画や行動といった決められたものをやるのにはITが向いている。その融合を図りながら、どううまくマネジメントしていくか──。アジャイルとは、余裕を持った速さだ。機敏、利口、スマート、優雅、元気な、つまりアジャイルな会社であってほしいと願っている」と締めくくった。
Page1 基調講演 1:経営とITの融合視点における次世代の人材育成とは 基調講演 2/報告 1:俊敏で柔軟な企業システムの実現に向けた破壊と創造 A-1 セッション:BPMとSOAサイクル基盤を具体化する“上流の戦略/業務設計からシステム構築”の現在と将来を語る A-2 セッション:“グローバル・エンタープライズ”へのロードマップを具現化するアクセンチュア/オラクルの取組みのご報告 |
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Page2 B-1 セッション:俊敏で柔軟な企業変革を具現化する日立コンサルティング/SAPの取組みについて B-2 セッション:“As-Is”のモダナイゼーションによる“To-Be”での「SOA基盤によるBPMサイクル実践化」のご報告 パネルディスカッション:『俊敏で柔軟な企業変革』のロードマップ策定支援委員会の発足 |