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連載:コンバージェンス項目解説(3)

適用直前、セグメント会計の再点検をしよう

伊藤久明
プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント株式会社
2009/11/26

セグメント情報等の開示に関する新しい会計基準の適用が迫っている。新基準では、企業の経営者が意思決定に用いている情報そのものが開示される。基準適用直前に再点検をしてみよう(→記事要約<Page 3>へ)

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 これに対して、現在のセグメント開示の下にあっても、利益センターなどの社内管理単位を基礎にして開示セグメントを決定している場合は、新セグメント会計基準に基づく報告セグメントが、旧セグメント会計基準に基づく開示セグメントと異ならない結果となることもある。

 ただし、このケースであっても、新セグメント会計基準では現在のセグメント開示における重要性の基準値が変更されており、従来「その他」セグメントに含めていた管理単位について、独立した報告セグメントとして分けて開示する可能性があることに留意する必要がある。

2.測定方法の決定

検討テーマ
対応
内部報告数値の算定に当たり、合理的でない収益・費用の配分を行っている
内部報告用とは別に、セグメント開示用の収益・費用配分ルールを定める
財務会計用の会計方針と内部報告数値作成用の会計方針が異なるが、後者の方針は明確に定められていない
・財務会計と管理会計とで会計方針を統一する

(統一しない場合は)
・管理会計用のグループ会計処理基準を作成する

・財務会計と管理会計の数値の差異を把握し、注記できるようにする(財務会計と管理会計で、作成部署・システムが異なる場合に、差異の把握が難しくなるため、注意が必要)
持分法適用会社について比例連結により内部管理数値を作成している
・比例連結によりセグメント情報を開示しても良いが、差異調整項目として注記が必要(適用指針4項)


  従来、企業の財務会計と管理会計の仕組みは、それぞれ外部公表用と社内管理用といった具合に、目的に応じてすみ分けられてきたと思われるが、管理会計数値が外部公表に利用されるようになると、管理会計の仕組みも開示に耐えられるようなルール・プロセスが必要になる。

 このルールは、グループ共通の基準として一律に適用されることになるだろう。従って、財務会計と管理会計とで処理方法を変えている場合には、財務会計用のグループ会計処理基準とは別に、管理会計用のグループ会計処理基準を用意して適用させるとともに、財務会計ルールと管理会計ルールの内容の差と金額影響を把握して、開示できるような体制を整えなければならない。

 ただし、財務会計と管理会計とで処理方法を変えると、毎期継続的に差異を開示しなければならないため、新セグメント会計基準の適用を契機に、財務会計と管理会計とで処理方法を統一させることも検討すべきである。

3.開示項目の決定

検討テーマ
対応
「セグメント情報」における利益(または損失)について、どの段階損益まで開示するか
・内部で報告している段階損益に基づき開示する

・それ以上の具体的な規定はないため、企業が独自に決める必要がある

・内部報告資料が不適切であり、多角化の状況等を適切に反映していなければ、報告資料の方を見直すべきである

 

 現在、各段階の損益に加え、資産・負債など、多くの項目を経営層に報告している場合には、それらすべてを開示しないといけないのかが問題となる。経営層への報告レポートに記載されている項目は、基本的には開示することになると考えられる。ただし、例えば急成長している企業に見られるが、多角化した経営の実態に経営管理の仕組みが追いついていないなど、経営層への報告レポートが経営の実態を適切に表していない場合がある。

 このような場合にまで、マネジメント・アプローチを形式的にとらえ、経営層への報告レポートに記載があるかないかだけを根拠として、開示項目を決定するべきではない。報告レポートで報告されている内容がグループ経営の実態を十分に反映していないのであれば、基準の適用を契機に、実態に合わせて報告レポートやそのレポートの提供元となるグループ経営管理の仕組みを適切に見直して、セグメント開示を行えるような体制を整える必要がある。

(2)プロセス

1.作成プロセスの検討

検討テーマ
対応
新たに作成が必要となる情報に関わるプロセスについて検討が必要
・作成プロセスを検討する。特にExcelなどを用いてシステム外で手で作成する場合は、Excelの修正も含めて検討

・財務会計と管理会計で、作成部署・システムが異なる場合の、差異調整の把握・作表プロセスの検討も合わせて行う

・旧セグメント会計基準に基づく作成プロセスを文書化した場合、文書を見直す

 

 今後、新しい基準により、管理会計数値に基づきセグメント情報を開示されることになるため、管理会計に関するプロセスも、決算・財務報告プロセスと同様の水準で整備運用していく必要があると考えられる。

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