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連載:SAPで実現するIFRS対応(1)

SAPユーザーがIFRS対応で考えるべきこととは?

鈴木大仁
アクセンチュア株式会社
2009/11/2

大企業向けERPとして高いシェアを持つSAPシステムのIFRS対応を説明する。ポイントになるのは目指す経営モデルとバージョンアップのタイミングだ。SAPユーザーがIFRS対応で考えるべきこととは?(→記事要約<Page 3 >へ)

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バージョンアップとの関係

 現在、SAPが販売している複数会計対応版であるSAP ERP Central Component(ECC6.0)の以前のバージョン(V4.7=Enterprise)を導入しているーザー企業は、2013年3月の保守期限終了のタイミングで大きな判断を迫られる。理由は、現在日本におけるIFRSの強制適用は2015年3月期、もしくは2016年3月期と見込まれており、このことは比較検証年度を踏まえると、2013年4月に始まる会計年度からIFRSバランスシートを準備し、IFRSベースの転記をすべきことを示唆している。整理すると、2013年3月まではSAP ERPの旧バージョンで運用して、2013年4月からは新バージョンでの運用を開始、新バージョンはIFRSに対応したものとして構築することが理想となる。

 IFRS対応コストの中で、最も大きな比重を占めるのはITシステムのコストである。費用の重複を避け、効果的に投資するためにも、SAPユーザー企業はECC6.0へのバージョンアップを考慮したIFRS対応が望まれるはずである。

 なお、SAP製品という点では、バージョンアップの問題は個社単体業務や会計を担当するERP部分だけの話ではない。SAPは、連結会計システムについても従来の製品であるSAP EC-CSへの機能拡張を打ち切り、ビジネスユーザー向け製品ポートフォリオに含まれる「SAP BusinessObjects Financial Consolidation」と、「SAP BusinessObjects Business Planning and Consolidation」を新たな連結会計ならびに経営管理製品として紹介している。IFRS対応に伴う連結会計システムの刷新を考える場合、多くのIFRS対応実績とIFRSテンプレートを備え、ERPと合わせた統一IT基盤上で連単会計機能横断での構成検討が容易なこれらの新製品は、代替案の1つとして有力だ。

ERP、進化の歴史と課題対応力

 日本企業が、今後このような課題への対応を考えていくうえで参考となる、欧米のグローバル・ハイパフォーマンス企業のERPの導入の形とその歴史について紹介したい。なお、この歴史の話の中でのERPという表現は、SAP製品だけでなくOracle製品も含めたERPの総論である。

 1990年代の終りごろから、米国系のグローバル・ハイパフォーマンス企業では、US-GAAP(米国会計基準)を世界統一会計ルールと位置付け、US-GAAPベースの共通の勘定科目体系、業務プロセス・機能を1つのERPシステムとして実装し、各世界拠点に導入展開を始めた。彼らの狙いは、グローバル統一のオペレーションモデルの構築による経営管理力と、ITシステムの集約による合算での構築/運用・保守コストの削減、グループシナジーの追求である。今日、これらのUS企業は、2014年3月期といわれる米国でのIFRS強制適用や、各国の動きを踏まえ、US-GAAPからIFRSへの切替作業を進めている。アクセンチュア自身もこれに属する。

 次に、欧州ハイパフォーマンス企業でも、ドイツに本社を置くSAPをはじめ欧州現地法人など、米国企業と同様に従来からUS-GAAPによる統一を果たしている企業もあるが、総じて2005年のIFRS強制適用及び、2006年ごろからのSAPやオラクルによる複数会計基準対応版ERPの出荷を機に、IFRSベースのグローバル統一オペレーションモデル構築が本格的に開始された。

 一方、日本企業は、これまで本社のみのERP導入、子会社・関係会社・現地法人単位の個別導入を繰り返して来た。前述の課題認識に立ち、また欧米企業のIFRS歴史を踏まえてIFRS対応にどう取り組むべきだろうか。先行する欧米ハイパフォーマンス企業は、もはやERPを個社単位で導入するツールから、グループ全体として導入するツールととらえている。この考え方は、グループとしての経営管理/業績を重視するIFRSの考え方と共通する。

 経済のスピードや投資家の求めるスピードは、数年前と比べても格段にアップしている。グローバルでの成長を目指す企業や内需型企業であっても、効率的な財務調達を考える企業は、自社の経営の中身やオペレーションモデルのあり方、IFRSを見据えたERPの導入方法を早期に検討、実行することで、欧米企業と競える経営体質へと変革を狙うべきではないだろうか(図表参照)。

ERP利用形態の変遷。欧州や日本ではIFRS対応を機に統一が進む可能性がある(アクセンチュア資料から作成)

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