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連載:経営財務トレンド(1)

「IFRS対応会議」が取り組む“4+1”の課題

垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2009/8/6

7月に立ち上がった民間組織「IFRS対応会議」は、IFRS対応の課題に民間レベルで取り組む。企業会計基準委員会(ASBJ)の担当者は「民間が議論し、リードしていくのがベスト。関係組織が横連携する」と話した。

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――翻訳委員会について教えてください。現状、IFRSの翻訳はどう扱われているのでしょうか

丸山氏 翻訳はASBJで行っていて、IFRSの2007年版を出しました。今年中に2009年版を出す予定です。ただ、いままではあくまでもIFRSの参考文献として出してきました。従って翻訳の精度が低いとはいいませんが、見切り発車をすることもできました。どうしても疑問がわいたら原文に当たってくださいということができたのです。

 強制適用になっても最終的に原文にあたるという作業はこれまでどおり必要かもしれません。しかし日本の基準としてIFRSを受け入れることになれば、日本語訳で99%は解決されないといけません。いろいろなところの知恵、知識を取り込んで翻訳をしていく必要があります。委員の方のご協力をいただき、翻訳の精度を上げていきます。

 基本的な作業は従前と同じく、ASBJのスタッフを中心に行っていきます。平均してIFRSを一番読んでいるのはASBJのスタッフや研究員。ASBJが基本的な訳を行っていくというのは変える必要性がないと思います。また、IFRSの日本での版権は国際会計基準委員会財団(IASBの上位組織、IASCF)から財務会計基準機構が許諾されていますので、版権の関係でいってもASBJが翻訳を進めるのが自然です。

――他の委員会としては個別財務諸表開示検討委員会があります。

ASBJの専門研究員 丸山顕義氏

丸山氏 意見書では(IFRS適用の)連結先行という概念が出てきています。連結先行は連単分離とは異なるという前提です。そうなると個別財務諸表の役割は何だろうということになり、極論すると税務くらいしか浮かんで来ません。そうであれば開示の部分についてはできるだけ簡略化した方がいいのではという議論になるのが自然です。ニーズがないものに対して労力をかけるのは経済的な損失に当たるという考え方もあります。委員会では市場関係者が集まって、どこまで個別財務諸表を簡略化できるかを意見集約していきます。おそらく、これは財務諸表規則に関係するテーマなるので、金融庁に提言することになるでしょう。

――広報委員会の活動は?

丸山氏 IFRSが何かをマネジメント層に分かってもらうことが強制適用に向けては大事です。トップが理解してくれていないと、IFRS対応が期限ぎりぎりになる懸念があります。スムーズに進めるためにはトップの理解が不可欠。委員会ではどういう広報を行うことでトップマネジメント層にご理解をいただけるかを考えていきます。

 完全にドメスティックな会社で国内でしか資金調達をしない会社もたくさんあります。そういう会社にはIFRSなんて迷惑ということになりかねない。しかし、視点を変えれば、IFRSは社内の情報を吸い上げるルートを確認するためのきっかけになると考えることができます。何年かに一度の大掃除としてIFRSを使っていただくという発想を持っていただくことも大切です。世界の資本市場に直接アクセスしない会社であっても逆張りの発想で、新しいチャンスをつかむきっかけとしてIFRSを利用していただけるといいのかなと思います。

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