“Storage over Ethernet”が標準化を解決する鍵か?

2001/1/24

 企業が持つ情報量は増加の一途をたどっている。カリフォルニア大学の調査によれば、今後3年間で全世界の情報量は倍増するといわれており、膨大なボリュームの情報をいかに効率良く管理するかは業種を問わず情報システムの課題となった。

 それを解決するとして期待が高いのがストレージ、特にSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)だ。SANとは、LANから独立してFibre Channelでストレージシステムを構築するストレージ構築方法。EMC、コンパック、日立など各ベンダーがこぞってSAN製品を開発・投入しており、ディスクアレイ「HP SureStore E」のXPシリーズなどを提供するヒューレット・パッカードでも積極的に取り組んでいる。

 だが、SANが実際に普及しはじめたか、となると、答えは「まだまだ」だろう。どうして高い関心を集めながら導入に踏み切れないのか、技術面では今どの段階にあるのか、来日した米HPのSANソリューション・オペレーション・マネージャであるMarty King氏に話を聞いた。

「ハード、ソフト、サービスをパッケージ化して提供する」という同社では、米国で今四半期中に複数の製品を投入予定

ストレージの未来形:SNS

 King氏は「ストレージ分野は着実に企業の投資対象となってきたことを感じる」という。現在の主流は、DAS(Direct Attached Storage)で、SANやNAS(Network Attached Storage)に関しては導入段階に入りつつあると見ている。それを裏付けるような調査結果もIDCなど調査会社から出てきた。

 だが、それぞれに欠点がある。DASは、ストレージとサーバが直結しているため、ストレージがサーバのプラットフォームに依存する。NASは、ここ最近、各ベンダーが「安価、容易な運用」を合言葉に提唱するソリューションだが、この場合も問題がある。ネットワークに接続するため、ヘテロジニアス(異機種混合)なクライアントPC、サーバと接続できるが、管理ソフトウェアやストレージ本体はホモジニアス(同一機種)環境となる。さらにLANに負担をかけるという心配もある。

 SANの場合は、ヘテロジニアスなサーバ環境を実現するが、ストレージ、ソフトウェアは限定される。複数ベンダーの製品を用いたい場合、相互接続性などの検証を行ってマルチベンダー環境を構築することが必要となる。

 「最終的にわれわれが実現したいのはSNS(Scalable Network Storage)」とKing氏。SNSとは、ヘテロなストレージ、ヘテロなC/S環境を実現するストレージの構築法。SANとNASの共存ともいえるシステムだ。この場合、これまでユーザーを悩ませてきた管理面でも改善が図られる。実現すれば、ストレージ特定管理ソフトではなく、ネットワークシステムとストレージの両方の統合管理が可能となるからだ。

 もう1つのトピックがIP対応のSANだろう。「“Storage over Ethernet”つまり、イーサネット対応ストレージ。これは、もはや“if”ではなく、“when”の段階。動向がこの方向にあるのは間違いない」とKing氏。同社では、そのためにイーサネット部門とストレージ部門を合体して1つの部署にしたという。だからといってFibre Channelが消えて行くわけではなく、「共存する」とKing氏は見る。データの種類によって使い分けることになりそうだ。

標準化へ道のりは長く…

 ユーザーが導入に対し二の足を踏む理由の1つに、サーバ、ストレージ、スイッチなどの間で接続性がないことが挙げられる。ベンダー側では、1998年のSNIA設立にはじまり、いくつかの標準化団体を作り、解決を図る姿勢を示してはいる。だが、具体的な成果が現われてこないと感じるユーザーも多いのではないだろうか。どうやら、「あまり積極的ではない」といえるかもしれない。2団体に参画しているHPでも、このテーマに関しては口が重い。

 米IDC ストレージソフトウェア リサーチディレクターのStephen Widen氏は、課題を2つ挙げる。「相互接続性と標準化。現在、各企業は相互接続性に関してはラボを作るなどして積極的に取り組んでおり、結果も出ている。だが、標準化に関しては、歩みは遅い」という。その理由は「それぞれの思惑があるからだ」(Widen氏)。

 「SANの定義にしても各社異なる」と日本HPのエンタープライズ事業統括部システムマーケティング本部プロダクトマーケティング部のプロダクトマネージャ平塚浩氏。平塚氏は、技術の急速な発展とともに、市場が混沌としているのが現状と見ている。「1980年代のLAN標準化と同じような状況ではないか。多くの技術や製品が一気に登場し、いまはそれらが淘汰されていく過程にあるのでは」(平塚氏)。

 動きの遅い業界に対し、待ちの姿勢を保つユーザー側にも問題があると見る向きもある。日本では相変わらずメインフレームが強く、特定ベンダーと密な関係を築く傾向は依然として強く、オープン系そのものの導入の遅れはだれもが指摘するところだ。真にオープンなストレージ・システムの実現まで、ソフト/ハード/サービスともに課題はまだまだ多い。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
日本HP
SNIC
Jiro

[関連記事]
ギガビット・イーサネットSAN対応RAIDシステム、ウィンドウ (@ITNews)
EMCがSANと連携するNAS製品を発表 (@ITNews)
コンパック、NASアプライアンスサーバを発表 (@ITNews)
サン、ストレージ管理技術「Jiro」をリリース (@ITNews)
デル、データ保護機能に特化したSAN製品 (@ITNews)
EMCのCEO、「時代はコンピューティングから情報管理へ」 (@ITNews)
ネットワーク・アプライアンス社が ハイエンド向けNAS製品を発表 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)