ハイテク業界危機の時代、生き残る勝者の条件とは?

2001/4/19

 このところ、米ハイテク業界ではレイオフ(一時解雇)や業績悪化と暗い話題が多い。そういったニュースが発表されるたびに、株価が動き、インターネットや情報技術の可能性を否定するようなムードが漂う。

 そんな現状を「“崩壊”ではない。黎明期が終わろうとしているだけだ」と米IDC インターネット&eコマース リサーチ部門バイスプレジデントのリック・ヴィラー(Richard Villars)氏は言う。IDCが4月17日に都内で開催したイベント、『DIRECTIONS』で同氏が行った基調講演でのことだ。

 「われわれはすでに同じ現象を体験している」とヴィラー氏は続ける。PC業界の興隆がはじまった80年代初頭、PCメーカーの株価は一気に上昇し、ある地点を機に3カ月で株価は半分近く下落した。「PC業界はこの危機を乗り越え、その後、ゲートウェイやデルといった企業を生み出したのだ」とヴィラー氏は言う。

 インターネット業界はこの先どう進展するのか。同氏が予測したトレンドは、現状を把握していればごく当然のものばかりだ。「eビジネスが増え、インターネットユーザーが増え、アクセス手段のバリエーションが広がり、帯域が増え、インターネット犯罪も増え、そして多言語・多文化化が進む」。eビジネスに関しては、新しいサイトの構築も進むが、既存のサイトが改良され、もっと複雑で多機能なサイトになるという。また、サイトの管理・運営をアウトソーシングする企業も増えそうだ。2005年には使用帯域幅は現在の5倍、セキュリティへの投資(ハード、ソフト、サービス)額は現在の倍以上になるという。

 その将来図で、主導権を握るのはだれなのか?――相変わらずIBMやオラクルなのだろうか。「Nobody(誰でもない)」(ヴィラー氏)。

 「企業はeビジネスのパートナーを模索中だ」。そして差別化となるのは価格ではなく、質やサービスという。ヴィラー氏の示した勝者の条件を整理すると、現状を正しく理解し、インパクトを与えるような新しい技術やコンセプトをもたらす企業ということになる。「成功の方式(フォーミュラ)は秘密でもなんでもない。真の勝者は目の前に広がる機会を理解している人なのだ」。

 IDC Japanリサーチバイスプレジデント シニアITアナリスト 佐伯純一氏は日本の情報技術市場の特異性と日本経済の展望について触れた。日本の特徴として「モバイルがインターネットへのアクセス手段として発展している」ことを挙げた。日本経済の好転には、「情報技術を合理化実現の手段として用いることに終始するのでなく、(合理化により)浮いたコストを別のビジネスへ投資するなどして循環させることが必要だ」との見解を示した。

(編集局 末岡洋子)

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