[Oracle Linux Summit 2001開催]
Linuxのエンタープライズ進出を盛り上げるイベントが開催

2001/6/21

「今後、Linuxのディストリビューションだけで会社の存続は難しい」と茂木氏。ミラクル・リナックスでは今年度単年黒字を狙う
 日本オラクルは6月20日、都内で「Oracle Linux Summit 2001」を開催した。エンタープライズでの適用がLinuxの次の課題といわれている。同イベントでは、日本オラクルをはじめ同社のパートナー各社がエンタープライズ用途のソリューション提供への各社の取り組みをアピールした。

 基調講演で壇上に立ったのは、日本オラクル アライアンス営業本部上席執行役員 茂木正之氏。茂木氏は2000年6月に日本オラクルが設立した子会社、ミラクル・リナックスの代表取締役社長も兼任している。同氏は、日本オラクルとミラクル・リナックスの両輪でLinuxを軸に事業を展開して行くシナリオを語った。

 日本オラクルは1999年にLinuxの取り組みを始めた。2000年8月より「Oracle8i Enterprise Edition R8.1.6」などエンタープライズ向け製品の提供を行っている。また、NECや東芝などハードウェアベンダーとも提携を結び、可用性などの課題に取り組んできた。新事業年度が始まった今年の6月に、改めてミラクル・リナックスと共同でのLinux事業の強化を打ち出した。Linux市場を活性化させ、データベースでの同社のシェアを獲得しようというのが狙いだ。現在、LinuxベースのRDBMSの出荷金額で日本オラクルは85.4%のシェアを誇っている。2位は日本IBMの14.6%(ミック経済研究所調べ)。

 茂木氏はミラクル・リナックスの今後の戦略として、「ブランディング」と「アライアンス」を挙げる。ブランディングでは、日本オラクルとミラクル・リナックスという統一ブランドを確立を図る。「Oracle 9i Database」と「Miracle Linux Standard Edition V2.0」をセットで提供することにより、導入しやすさ、使いやすさなどの付加価値を付ける。また、アプリケーションとのバンドルも積極的に行うという。アライアンスでは、ハードウェア・ベンダー各社とともに、ユーザーからのニーズの高い可用性を実現していく。また、NASやドキュメント・ポータル・サーバなど比較的新しい分野の普及・促進活動に共同で取り組むという。

オープンソースを盛り上げるのは日本の若手エンジニア?

 基調講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、「ビジネスプラットフォームとしてのLinuxの可能性」をテーマに業界のキーマンが議論した。

左から藤村氏、九鬼氏、角田氏、マイナー氏、保科氏

 パネルディスカッションの参加者はNECソリューションズ マーケティング本部長 九鬼隆一氏、テンアートニ 代表取締役社長 角田好志氏、サンブリッジ 代表取締役社長アレン・マイナー(Allen Miner)氏、日本オラクル 執行役員 製品マーケティング本部長 保科実氏。モデレーターはアットマーク・アイティ代表取締役社長藤村厚夫氏で、藤村氏が「Linuxサポートビジネスは2年以内に急成長するか?」と問えば、4人の参加者が○、×の書かれた札を挙げるという形式でディスカッションは進んだ。

 Linuxの普及に関しては、“Windowsが障害になっている?”の問いには全員一致で×と答えた。「すでに戦いは終わった。Windowsには勝った」と角田氏がコメントして会場の笑いを起こせば、マイナー氏は「思いきって使える人が少ないことが障害だと思う」と真面目な意見をぶつけた。

パネルディスカッションでは、“eビジネス時代は情報システムが花形になる?”といったテーマも持ち上がった

 細かな部分での意見の相違はあるものの、全員が一致していたのは、エンタープライズ分野へのLinuxの適用範囲の拡大など、Linuxの将来性には疑いがないことと、それに向けてハードなどの環境面の整備は整いつつあること。課題としては、Linuxエンジニアの不足が挙げられた。

 特に印象的だったのは、オープンソースへの貢献について。「オープンソースの動きを支えているのは若いエンジニア。若いエネルギーに期待したい」という九鬼氏のコメントを受けて、米国人であるマイナー氏は「日本人はわれわれアメリカ人が思いつかないような細かい部分に工夫を加えることに長けている。この日本人の勤勉さがここまで成長したLinuxの改良・改善に向けられれば、Linuxはさらなる成熟に達することができるだろう」と述べた。保科氏からは、「日本発のオープンソースコードをどんどん公開していかねば。潜在能力として現状の10倍のパワーはある」と喝をいれるコメントも出された。

(編集局 末岡洋子)

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日本オラクル
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