「目指すはユニークな技術集団」――NTTソフト社長が見るSIの今後

2001/9/15

 NTTソフトウェアは、9月10、11日とプライベート・カンファレンス「NTT SOFT Solution Fair 2001」を開催した。4回目となる今年は、“テクノロジーの逆襲”という副題を設けた。「料理に例えると、食材の提示にとどまらず、料理したものを提供できるようになった」とカンファレンスの充実ぶりを語るのは、同社代表取締役社長 鶴保征城氏。年々、導入事例の紹介やパートナーによるセッションが増えているという。

NTTソフトウェア 代表取締役社長 鶴保征城氏

 社長就任5年目を迎える鶴保氏は、電子工学の修士号を持つエンジニアでもあり、情報処理学会会長、情報処理サービス産業協会の常任理事、XMLコンソーシアム会長など、さまざまな任務をこなす。鶴保氏に、システム・インテグレータの業界動向や課題を聞いた。


このところ、ハードウェア・ベンダがソリューション分野にシフトしてきている。SI事業者はこの動きをどう見ているのか? NTTソフトのソリューションとは何か?

鶴保社長 弊社では比較的早くから“ソリューション”という言葉を使ってきた。しかし、意味するところは、ハードウェアベンダを含め、他社のものとは違う。弊社では、カスタマーと相談しながらシステムを構築することをソリューションといっている。その中心にはパッケージ・ソフトウェアがある。また、ハードウェア・ベンダと異なり、ベンダ・フリーというのも利点となる。

 従来から、日本のソフトウェア事業者は一品料理的なシステム構築を手がける傾向があるが、顧客の注文通りに構築することが本当に顧客のためになるとは限らない。一品料理的なシステムは、カスタマイズが多く、拡張性に欠ける。例えば割り引きキャンペーンをやろうとなっても、柔軟に課金システム設定を変更できない。

 弊社では、常に中心にパッケージがある。パッケージの利点は、標準技術を用いている点と拡張性。新しい技術が登場しても、パッケージのバージョンアップのコストだけで対応できる。先ほどの割り引きキャンペーンの例にしても、営業会議で決定して2、3日後にはスタートできる。パッケージを利用する場合、顧客は、完全に思い通りにならないというデメリットを感じるかもしれない。しかし、独自システムよりもコストは安く、しかも早く導入できる。また、環境の変化に柔軟に対応する拡張性のあるシステムを提供できる。これが弊社のソリューションの最大の特徴だ。

どのようにソリューションを提供する戦略か?

鶴保社長 ソリューションを分かりやすくするため、4つの体系に整えた。IPv6対応ネットワーク構築やVPN、リアルタイム課金システムなどを提供する「IPプラットフォーム構築」、アプリケーション・サーバに対応して従来のJavaアプリケーションを携帯端末に発信できるミドルウェア「BLUEGRID」などをそろえた「モバイル応用」、ブロードビジョンなどのCRM、CTI製品を取り扱う「ECフロントシステム」、そして、ウェブ・メソッド、アリバなどと提携し、EAI、BtoBの仕組みを手がけるのが「ECバックボーンシステム」だ。セキュリティもここに含まれる。

 現在、収益の中心を占めるのは、モバイルの分野。NTT本体を含めたNTT関連の案件が多いからだ。だが、EAIやIPv6に関しても高い注目をいただいている。特にEAIに関しては、2種類のパターンが想定される。基幹システムとCRMなどフロントシステムとの間に置くパターンと、カンパニー制をとる企業が連結決算などでシステムの結合が必要な場合、ハブの役割としてEAIを導入するケースもある。

 いま注目している技術には、XMLやセキュリティがある。電子政府などではPKIによる認証の仕組みが不可欠だし、XMLはほぼ間違いなく導入が進む技術だ。今後、RosettaNetのように業界ごとのXML標準が定まってくるだろう。

趣味は旅行にゴルフ。最近行ったのはチェコのプラハ

ソフトに関する技術の変遷が激しく、SI業者には信頼性が求められる。

鶴保社長 ITバブル期と呼ばれた時代、われわれSI事業者は、顧客にとって本当に役に立つ製品かどうかを十分吟味せずに導入してしまったケースがある。反省を含め、現在心がけているのは、役に立つシステムを提供すること。そういった意味から、われわれSI事業者は仕事の幅を広げていく必要があるだろう。

 役に立つシステムとは、これまで人手をかけていた部分をシステム化すること。例えば、車の塗装。塗装する色は1台ごとに異なるため、塗装業者では色分析を外部に依頼している。ここに色分析ツールを用いたシステムを構築すれば、塗装業者の手間はぐっと軽減される。あるいは、営業マンが鞄いっぱいに見本を持ち歩いているが、そういったところをシステムでサポートしていく。それが役に立つシステムだ。

 なかでも、多くの企業にとって課題となるのは、在庫管理。在庫と品切れのバランスをIT化する。これを実現している企業は、日本はおろか世界的に見てもごく一握りだ。そういった意味で、われわれのビジネスチャンスは大きい。

今後のSI事業者の課題は?

鶴保社長 企業のシステムは、顧客、サプライヤ、パートナーなどとの連携が不可欠になり複雑化する。企業システムで重要視すべきはソフトウェアのアーキテクチャ。弊社はベンダ・フリーという立場を生かし、アーキテクチャの部分までは、顧客にも参加してもらいともに構築したいと思っている。

 今後、SI事業者の間では、下請け型事業者と独自性のある事業者と2極化が進むだろう。弊社では、大手企業ばかりを狙うのではなく、1つ1つの顧客に合うユニークなシステムを作っていく。目指すのは、ユニークな技術を提供できる技術集団だ。

(編集局 末岡洋子)

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