“自由”を掲げ、MSに対抗するSun ONE

2001/10/31

 Webサービスの実現に向けた競争は、マイクロソフトが.NET戦略で口火を切って以来、IBM、オラクル、BEAシステムズなど主要なソフトウェアベンダが続々と参入、いまやソフトウェア業界で最も熱い分野だ。

マーク・トリバー氏は元iPlanetの社長

 サン・マイクロシステムズは10月30日、都内で「Sun ONE SUMMIT」を開催し、同社のWebサービスへの取り組みを明らかにするとともに、この新しい競争に名乗りをあげた。同社が提唱する「Sun ONE」は、マイクロソフトの.NET戦略に匹敵するほど大きな構想である。

 米サン・マイクロシステムズの上級副社長兼ゼネラルマネージャのマーク・トリバー(Mark Tolliver)氏は、Sun ONEを「いつでも柔軟なサービスを実現する『サービス・オン・デマンド』を実現するビジョンと、Java、XML、SOAP、UDDIなどの標準技術、そしてForte、iPlanet、Solarisなどのサンのソフトウェア製品、さらにサンのサポートやコンサルティングを包含するものだ」とした。

 技術的に見ると、Sun ONEの中核に並ぶ製品群はかつてのNetscape、現在iPlanetのラインナップだ。Webサービスを実現するために、iPlanet Application Serverや、iPlanet Integration Serverなどがある。そして、トリバー氏はiPlanetの社長を務めた経験を持つ。

 トリバー氏は、Sun ONEの特徴が「XML、Java、SOAPなどの標準技術に準拠していること」だと強調した。そして、これらの標準に対応した製品であれば、Sun ONEの中でサンの製品を置き換えてもらってもまったく構わないという。「iPlanetの製品は標準技術によってシステム統合が可能な製品だ。標準技術に対応している限り、Webサーバであってもディレクトリサーバであっても、iPlanet以外の他の製品と置き換え可能だ」(トリバー氏)。

 Sun ONEが、自社製品を前提としたアーキテクチャを持つマイクロソフトの.NET戦略と対照的なのは明らかだろう。サン・マイクロシステムズ ソフトウェア技術部の纐纈(こうけつ)昌嗣氏は、「マイクロソフトの製品がSOAPやXMLといった標準に対応しているならば、Sun ONEの中に組み込むことができる」と、Sun ONEがベンダを超えて標準技術のみで構成されるアーキテクチャを持つことを繰り返した。

 さらに、Sun ONEにはマイクロソフトの.NET My Services(旧Hailstorm)に対抗する技術が採用される予定だ。それが「Liberty Alliance Projcet」である(「オンライン認証技術をめぐる勢力構図」参照)。

 Liberty Alliance Projectは、サンが提唱した、個人認証と個人情報保管のためのオープンな標準技術を策定するための団体。ノキア、ユナイテッド航空、eベイ、ゼネラルモータース、ソニー、ドコモなどが参加する。マイクロソフトが.NET My Serviceによって個人認証や個人情報の保管を行おうとしているのに対して、まず個人情報のためのオープンな標準技術を策定し、それに対応した製品をベンダが提供できる環境を作る。「誰だって個人情報を特定のベンダや特定の製品だけに依存したくないだろう」(纐纈氏)。ただし、標準仕様が策定されるのは来年以降の見通しだ。

 Sun ONEのアーキテクチャ・ドキュメントは、11月28日の同社のイベント「Java ONE Tokyo」でベータ版が発表され、翌月の12月15日には第一版が公開される。また、Sun ONE向け開発作業を支援する「Sun ONE Starter Kit」も無償配布される。これは、Java ONE Tokyoの会場やSun Developer Networkで入手可能になり、開発ツールの「Forte for Java」や「iPlanet Application Server」「iPlanet Directory Server」「Java 2 EE」などのほか、各種技術情報などが含まれる。

(編集局 新野淳一)

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