車載システムの“テレマティックス”分野でリードを狙うHP

2001/11/16

 日本ヒューレット・パッカードは11月15日、車載情報システムなどを包含するテレマティクス分野のソリューションについての取り組みを明らかにした。

 テレマティクスとは耳慣れない言葉だが、おおざっぱな定義としては“通信技術と情報サービスの合体”。情報サービスを通信ネットワークを介して届ける、リモートベースでの利用を想定していることが多い。特に日本では、インターネットと車載情報無線技術の融合を指して用いられているようだ。

 あらゆる端末がインターネットにつながり双方向のやりとりが実現する“CoolTown”構想を持つHPでは、テレマティックス分野の事業を“スマート・スペース”と銘打ち、組織横断的に展開している。テレマティックス専用のソリューションセンタを東京、米国、スウェーデンに開設し、東京(同社市ヶ谷事業所)では、この12月にも実証実験に入る予定だ。

 この日、説明を行った同社 ビジネスカスタマ事業統括本部 マーケティング統括本部 松本光吉 本部長は、その技術領域にCRM、位置情報サービス、ポータルなどを挙げた。車載用Windows CEとの違いは、汎用アプリケーションを利用できるオープン性。ベネフィットとしては、運転手(エンドユーザー)には、安全はもとより、ナビゲーション、娯楽、利便性を提供し、自動車メーカーには、顧客情報の有効活用による顧客満足の向上などの効果が期待できるという。

 HPでは現在、NTTコムウェアや日本オラクル、東芝情報システム、デンソーといった企業と提携して、「t-MESA」というソリューションを構築中だ。支払い、課金、位置情報、CRM、ブローカリング、セキュリティといった機能を包含するインフラの上に、「テレマティクス・サービス」が載る。このテレマティックス・サービスは、ナビゲーション、電子メール、位置情報ベースのサービス、緊急時サービス、エンタテイメントなどの機能を持つ。エンドユーザーはポータル画面からそれらのサービスを利用することができる。NTTコムウェアは、ブローカリングやポータル機能を、日本オラクルは位置情報のサーバを、デンソーは車載サーバ(TAS)を含むアプライアンスを提供し、東芝情報システムは組み込みシステムなどのSIの技術を提供する。HPが数年前から提唱してきたミドルウェア技術「e-speak」とJavaVM「HP Chai」は、それぞれブローカリング、車載サーバで生かされることになる。

 この日は、ラジコンカーを用いたデモも披露。ドライバの個人認証、ドライブ状況のモニタリング、トラブルが発生し電子メールでロードサービス/ドライバの自宅/加入保険会社に告知といったことを行った(写真参照)。

エージェントがトラブル発生を感知した画面。位置情報、支障が起きた部位、取るべきアクションなどが表示されている  ドライバの画面。衝突情報や故障個所、アクションの進ちょくが報告されている

 テレマティックスは現在、黎明期の入り口。現在、米GMやスウェーデンのVolvo、日本ではトヨタ自動車などの自動車メーカーがテレマティックス技術を適用し始めているが、今後は通信事業者や家電メーカーなどが参入すると見られている。これに、サービス提供業社が加わり、基本サービスの提供が始まるのは2年後と予想されている。カーナビ、携帯電話ともに世界トップレベルの普及率を誇る日本、普及には、安全に加え、娯楽性もキーワードとなりそうだ。

 HPは、「e-services」など技術のR&Dでは歴史的に優れた成果を出してきた。黎明期の車載システムでリードを取るためには、ソリューションセンタでの実証実験などのほかに、実現したものをいかに製品化するかというマーケティングの部分も問われそうだ。

(編集局 末岡洋子)

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