[Interview]
管理機能で差別化、価格競争でも打って出る、新生クアンタム

2001/12/15

 米クアンタムは10月、大幅な組織変更を行った。事業部門を「ストレージ・ソリューション・グループ(SSG)」、「DLTtapeグループ」の2つに分け、それまで子会社だったATLプロダクツをSSG事業部に統合、売上高14億ドル規模・ストレージ業界第3位の企業が誕生した。2つの事業部門をさらに詳しく見ると、SSGはNAS(「Snap Server」製品群)とデータ・プロテクション(「P7000」「M1500」など)の2事業、DLTtapeはテープ・ドライブとメディアの2事業を持つ。つまり、新生クアンタムは、DLTドライブとテープ・オートメーション、そしてNASやSANを1社で提供できるベンダとなったわけだ。

 同社のデータ・プロテクション事業部門の指揮を執るのは、ATLでCOOを務めたラッセル・スターン(Russell Stern)氏(米クアンタム 上級副社長兼ゼネラル・マネージャ)。同氏に、再スタートを切る同社の戦略、ストレージ業界全体の動向について話を聞いた。


――統合の目的は何か?

スターン氏 ソリューションの提供によりフォーカスを絞るためだ。統合により、ハードウェアに加え、管理ソフトウェアやサービスを提供する総合ストレージ・ベンダとなった。現在、出荷台数ベースで、弊社はテープ・オートメーション、NASともにトップ。統合による顧客へのメリットも大きいだろう。すでにサービス分野(導入、保守、リペア、サポートなど)の売り上げは全体の30%を占めるが、今後はコンサルティングや管理・変更、ディスザスタ・リカバリといった分野にも手を広げ、投資も集中させる。

スターン氏 先日のテロ事件では、世界貿易センターの東棟にあった同社の事業所も災難に遭った。幸い、従業員は全員難を逃れたが、その1人で、盲導犬を連れて避難した従業員は、その後米国のメディアの注目を集めたという

――御社製品(旧ATL製品)の強みは何か?

スターン氏 より包括的な管理が可能な点だ。DAS(Direct Attached Storage)のテープ・ライブラリに加え、ヘテロジニアス(異機種混合)なハードウェア/ソフトウェア環境、SCSI、ファイバー・チャネル、Ethernet、さらにはiSCSIやInfinibandといった接続方式をサポートする必要がある。弊社では機能拡張機構“PRISM(プリズム)アーキテクチャ”を、NAS部門とデータ・プロテクション部門がまたがってサポートしており、包括的な管理を実現できる。

 管理の2大要件は、ハードウェアの追加、遠隔管理。特に、ハードウェアの追加に関しては、モジュールの追加のみで機種を混在させて接続できる。パーティショニングに関しても、異なるOSを割り当て、1つのインターフェイスとソフトウェアで管理が可能だ。管理は、きちんと実行することにより、TCOを2〜3倍まで高めることができる。経済環境が厳しい時代、企業の関心はますますこの分野に集まるだろう。

――テロ事件を受け、ストレージ市場に変化はあったか?

スターン氏 企業のディザスタ・リカバリへの関心が高まり、一時的にディザスタ・リカバリへの投資が増えると見ている。今回の事件後、われわれが顧客に勧めていることは、ポリシーと復旧プロシージャ(手順書)の策定だ。具体的に言うと、バックアップするデータの適切な量、どの程度をソフトウェアが処理するのか、どのデータを物理的に遠隔に保管するのか、といったことをルールとして定義しておくこと。われわれは、これらの策定の手助けも行っている。

――デルがストレージ市場に本格参入した。これが業界に与えるインパクトは? 御社の戦略は?

スターン氏 デルの参入により、ストレージのコモディティ化に拍車がかかるだろう。これは、需要の増加を意味し、わが社にとっては成長のチャンスとなる。

 今後もリーダーシップを維持するためには、価格競争に先手を打つ必要がある。そのために、一部製品に関しては、これまで英国にあった製造拠点をマレーシアに移し、コストを抑えつつ、開発・製造のサイクルタイムを短縮する策を講じた。このように、弊社では、低価格化という流れを肯定的に機会と受けとめ、市場に打って出る。

 低価格化と同時に、製品に接続性などの技術的付加価値をつけることも、競争力強化につながると考えている。例えば、iSCSI。弊社はテープライブラリ・メーカーとしては唯一、接続に成功している。来春には製品を出荷する予定だ。ただ、iSCSIは帯域幅を必要とするので、すぐに市場が立ちあがるとは思っていないが。

――日本市場をどう見ているか?

スターン氏 SANの導入が進むだろう。現在、日本におけるSAN導入率は7%といわれているが、この数字は来年には倍の14%となるだろう。弊社がこの1年で手がけたSANの導入は約700件で、そのうち日本の事例は8、9件だ。この数字も増えるだろう。

 今回の米国本社の統合にあたり、両社の日本支社も統合を進め、来年中には1カ所にまとめる。ATLプロダクツ ジャパンに関しては、設立が1998年、本格的に業務を開始したのが今年2月だ。今後、OEM、リセラーとの関係を強固にし、SAN、テープ・オートメーションの分野に注力する。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
日本クアンタム ストレージ
ATLプロダクツ ジャパン

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