未来のUIは音声入力になると、MSの研究所

2002/3/1

 米マイクロソフトが、同社初のコンピュータ科学研究機関を設立したのは、1991年のこと。その研究機関が現在のマイクロソフトリサーチ(1997年6月設立)へと発展する。

 マイクロソフトリサーチ(MSR)は、さまざまな最先端の技術を研究し、将来同社の製品に対応させるような研究などを行っている。MSRは現在、40分野に600人の研究チームを抱え、その拠点は、米国ワシントン州のレドモンド、カリフォルニア州のサンフランシスコ、英国のケンブリッジ、そして中国の北京の合計4カ所。

 4カ所ある研究所のうち、中国の北京にあるマイクロソフトリサーチアジア研究所は、その名のとおりアジア地域における同社の研究拠点。そのMSRアジア研究所の所長 張亜勤氏の来日に合わせ、同研究所での戦略や研究の一端を、2月28日報道陣に公開した。

マイクロソフトリサーチアジア研究所 所長の張亜勤氏は、MPEG2/DTV、MPEG4/VLBRやマルチメディア技術の専門家

 挨拶に立った張氏は、なぜマイクロソフトがアジアに研究拠点を開設したのかについて、「マイクロソフトは、アジアのダイナミックなマーケットや可能性に注目を集めている。また、有能な人材の獲得などがしやすい」と、その理由を説明した。

 同研究所では、現在中国の研究機関や大学などとの連携だけでなく、ほかのアジア諸国の学会との連携に力を入れていくという。特に今年は日本の学界との連携をさらに促進させたいと張氏は語った。実際、MSRアジア研究所と東京大学との共同プログラムに調印したことを同氏は明らかにし、今後はさらに京都大学との連携を深め、さらにほかの大学との連携の実現にも力を入れたいという。

 それでは同研究所が実際に研究している分野は何か? それに対して同氏が挙げたのは、デジタルメディア、多様なUI(ユーザー・インターフェイス)、ワイヤレスネットワーク、情報処理の4つの分野。

 張氏によれば、研究成果がマイクロソフトの製品に採用されるまでは、2〜3年はかかるという。同研究所が設立されたのは1998年11月。そのため、ようやく同研究所の研究成果が製品に採用される段階になってきたという。実際、今年は12製品以上に同研究所の研究成果が採用される見通しだという。

 その後、デモが披露された。デモは同研究所が現在研究中の、次世代または次々世代のマイクロソフトの製品に採用される可能性のあるものばかりだ。

「Q-Video」の画面。左のフレーム側で、データをさまざまな形で分類し直すことができる

 ワイヤレス環境での動画配信技術の「SMART(Scalable Media Adaptation and Robust Trasport)メディア」は、堅牢な転送、拡張性のあるメディア圧縮、高精度なネットワーク状態の予測などにより、常に最適な動画圧縮を実現し、動画像が見やすく崩れないように工夫しているという。

 また、「My Photo」のデモでは、デジタルカメラなどで撮影したデジタル写真のデータを「My Photo」に取り込む段階で、日付や撮影されている人物ごとなどで自動的に分類できるだけでなく、フラッシュなどで人物の目が赤目になってしまっている場合は、自動的に修整されるようなフィルター機能も搭載している。また「Q-Video」では、TVの映像データを蓄積し、それらのデータをテーマ別などに分類し、ユーザーが選択してTV映像を楽しむことができる。これらの機能は、インテリジェントな検索や閲覧によって実現している。

 最後に今後のUIはどう変化するのかと聞かれた張氏は、「人間同士のように、人間とマシンの間でも、マウスやキーボードからの入力から、音声による入力に変わるだろう」と、将来のOSやシステムの未来を語った。

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マイクロソフトリサーチ

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