[Interview]
Webサービス時代の新戦略でIBMとの違いを示したBEA

2002/3/5

 米BEAシステムズは、先週開催されたデベロッパ・カンファレンスでWebサービスのフレームワーク「BEA WebLogic Workshop」を発表した。今後、主力製品であるアプリケーションサーバ、WebLogicを単一のプラットフォームとして、拡張性を持たせるというアーキテクチャのもとに、展開していくという。これにより、注目されていたアプリケーションサーバおよびWebサービス市場における同社の戦略を明示したことになるわけだが、その詳細について、同社 E-Commerce Server部門 Product Marketingのディレクター John Kiger氏に聞いた。


John Kiger氏 

――これまでBEAは最新のJ2EEにいち早く準拠することで差別化を図ってきた。J2EEが黎明期から成熟期に入りつつあるいま、同社はどのような戦略をとるのか?

Kiger氏 J2EEアプリケーションサーバはかなり浸透した。このような市場の変化に合わせ、BEAはこれまでの“アプリケーションサーバ・ベンダ”から、“アプリケーション・インフラを提供するベンダ”への転換を目指す。アプリケーション・インフラとは、アプリケーションサーバのほか、統合ツール、ポータル、Webサービス、アプリケーション開発ツール、アプリケーション管理やセキュリティなどで構成されるソフトウェアのカテゴリで、年間成長率23%の成長市場だ。BEAはすでにアプリケーションサーバのリーダーであるだけではなく、今回、(アプリケーションサーバの)WebLogicをコアに「BEA WebLogic Platform」として単一のプラットフォームを提供する。これにより、市場全体で見ても優位な地位に立てる。

 BEAのアプリケーション・インフラの特徴は、シンプル、統合性、拡張性という3つを持つアーキテクチャ。WebLogic Platformはこれを実現する製品となる。

――WebLogic Platformのメリットは何か?

Kiger氏 コスト削減と複雑性の排除だ。WebLogic Platformは「BEA WebLogic Application Server」「BEA WebLogic Portal」「BEA WebLogic Integration」を単一のパッケージに統合したもので、インストール、ドキュメンテーション、設定が1度で実現する。結果として、IT部門の生産性が向上する。もちろん、同時に発表したJ2EE1.3準拠のWebLogic Application Serverの最新版、7.0で補強された、管理、統合、セキュリティといった機能のほか、Webサービスではフレームワーク「BEA WebLogic Workshop」との連携も実現する。また、3製品は、これまで通り、個々の製品としても提供する。

――Webサービスの開発フレームワーク、WebLogic Workshopはどのような位置付けとなるのか? ターゲット層は?

Kiger氏 WebLogic Workshopは、WebLogic Application ServerおよびWebLogic Platform上でWebサービスの開発から実装までを実現する製品で、これまでどのベンダも提供していなかったまったく新しい技術カテゴリだ。具体的には、開発に携わるあらゆる人が同一のプラットフォームでコードをシェアできるフレームワークという位置付けとなる。従って、開発ツールではない。EJBなど最先端技術の開発に関しては、開発者はこれまで通り、ウェブゲインやボーランドなどの開発ツールを利用することになる。

 “開発者”といわれる層は、J2EEのプロなどの“エンタープライズ開発者”とVisualBasicやPowerBuilderなどを利用する“アプリケーション開発者”の2つに大分できると認識している。現在、WebLogic Application Serverのアプリケーションは、エンタープライズ開発者により開発されている。だが、Webサービスが重要となりつつある現在、J2EEやJavaに精通していないアプリケーション開発者の間に、新たにJ2EEを学ぶことなくWebサービス・アプリケーションを開発したいというニーズがある。WebLogic Workshopはこのニーズにもこたえるだろう。

 エンタープライズ開発者とアプリケーション開発者の比率は、2対8と言われている。WebLogic Workshopは、アプリケーション開発者、さらにビジネスロジックの設計に携わる人もターゲットとしており、BEAにとっては、ユーザー層の拡大を図る重要な製品となる。

――WebLogic WorkshopはWebLogic Application Server上でしか動作しない独自技術といえるが……

Kiger氏 BEAの戦略は、技術面でのリーダーシップをとり続けること。これには、最新のJ2EE仕様をいち早く実装するだけでなく、仕様が定まる前に製品に実装するというアプローチもある。標準技術を利用した新しい技術であるWebLogic Workshopは後者のケースで、今後、標準化プロセスに提案していく。

――新しいターゲット層や市場にどうアピールするのか?

Kiger氏 今回、オンライン、オフラインで開発者を支援する「BEA Dev2Dev」という新しい開発者向けプログラムを発表した。また、CIOやCEOといった経営層にも、生産性の向上などBEA製品のメリットを具体的な数字を示してアピールしていく。このほか、SIやISVなどとのパートナー・プログラムも補強した。

――WebSphereで追い上げているIBMとどう戦うのか?

Kiger氏 BEAの強みは、最新の業界標準技術の実装と分かりやすい製品構成。特に、WebLogic Workshopで技術面での差はさらに開き、1〜2年分はリードしたと自負している。

 IBMは、ソフトウェア部門に100以上の製品を有しているが、これらの製品を統合するとなるとコスト的にも時間的にも大きな作業となる。Webサービスを考えても、BEAは、WebLogic Serverの上でWebサービスを開発し実装するアプローチで、レガシーとは、WebLogic ServerとTPモニタの「BEA Tuxedo」とが接続する形となる。一方のIBMの場合、J2EEベースのWebSphere、レガシーで(Javaベースではない)WebSphere MQなど、さまざまなプラットフォームを持つ。これらの連携や統合となると、顧客側にはさまざまなプラットフォーム技術知識が要求される。

 BEAの強みは、ハードウェアもデータベースもレガシーも持たないこと。その代わり、既存システムとの接続性を提供し、LinuxでもIBMメインフレームでも、UNIXでも等しく動作する。企業システムが単一ベンダの製品で構成されることはありえない。BEAは、アプリケーションインフラの分野にフォーカスを絞り、そこでのトップを目指す。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
WebLogic Workの発表資料
WebLogic Platform 7.0の発表資料
BEA Dev2Dev

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