[UML Forum/Tokyo 2002開催]
UMLとMDAでシステム構築を根本から変える

2002/3/28

 3月26日から2日間、UML Forum/Tokyo 2002が東京で開催された。2日目の基調講演では、主催のオブジェクト・マネジメント・グループ(OMG) 会長兼CEO リチャード・マーク・ソーリー(Richard Mark Soley, Ph.D.)氏が登壇し、OMGが昨年発表した新イニシアティブであるMDA(モデル駆動型アーキテクチャ)の必要性を訴えた。MDAはUMLを用いたモデリング・アーキテクチャで、異なる技術の相互接続性を実現することを最大の目的とするという。

リチャード・マーク・ソーリー氏 MDA構想をまとめた人物。MDAに関しては、ツール、本、トレーニングコースなど普及の下地も整いつつあるという

 ソーリー氏はまず、統合という普遍的なテーマからスピーチを開始した。「Java、EJB、XML、そして現在のWebサービス……。次々と新しい技術が登場するたびに、すべてを解決してくれるとわれわれは期待するが、実際はどうだろう?」とソーリー氏は問いかける。昨年IDCが行った調査によると、使われているプログラミング言語のトップ3は、COBOL(300万人)、VisualBasic(160万人)、CおよびC++(110万人)。「これらプログラミング言語、各種OS、ミドルウェア、そしてネットワーク。ヘテロジニアス環境は普遍だ」とソーリー氏は続ける。実際、IBMは昨年、メインフレーム関連事業から240億ドルの売り上げを計上したという。メインフレームはなくならないし、古い技術を習得した人やナレッジも存在し続ける。そして、新たな技術トレンドは毎年登場する。これが現状だ。

 OMGは1989年に非営利団体として設立されて以来、オブジェクト技術を用いたアプリケーションの統合に取り組んできた。具体的にはコンポーネントの再利用、相互接続性、ポータビリティなどで、標準の仕様としては、UMLのほかにCORBA、XMI(XML Metadata Interchange)、CWM(Common Warehouse Metamodel)などを送り出してきた。それでも解決には至っていない。現実には、ミドルウェアそのものに標準が乱立している。

MDAのイメージ図

 ソーリー氏は「いま求められていることは、アーキテクチャと設計の分離。既存のソフトウェアという資産を守りつつ、インフラに新技術を適用していく。それを実現するのがMDAだ」と語る。MDAは、“20年持続するソフトウェアアーキテクチャ”を目標としたシステムの構築方法。UMLでのモデル記述をコアとし、分析、設計、実装、保守、進化、統合というライフサイクル全体をサポートする。実際にMDAを用いてアプリケーションを構築する手順としては、まずPIMと呼ばれるプラットフォーム非依存のビジネスサイドのモデルを記述する。このPIMの記述さえしっかりしていれば、CORBAやJava/EJBやXML/SOAPなどさまざまな特定プラットフォーム(OMGでは“PSM”と呼ぶ)に当てはめる(=マッピング)ことができる。現在、自動生成されるコードは部分的だが、将来的には100%のコード生成を目指す。それから、セキュリティやトランザクションなどのサービス層、そして産業別の仕様・技術へと発展する仕組みだ(図参照)。

 MDAを採用したシステム構築としては、いくつか事例もでてきている。米ウェルスファーゴ銀行は5年前、IBMのメインフレームと、テレフォンバンキングやインターネットバンキングなどのフロントシステムを連携させているが、プロジェクトにUMLを使用し、MDAアプローチを用いて開発作業を進めているという。

 OMGでは現在、UML2.0の策定を進行中(最新のバージョンは1.4)。振る舞いのダイアグラムやコンポーネントのダイアグラムなどの強化が行われる予定だという。また、MDAに関しては、「景気が上向き次第、急速に市場が成立し、33%程度の普及率に達するという予測結果も出ている」とソーリー氏、UMLツールがMDAツールに統合されていくと見込まれていることにも触れた。また、今後の普及に関しては、各種技術によるMDAの採用が不可欠だが、EDOC(Enterprise Distributed Object Computing)、CORBA、EJBがすでに採用している他、SOAP/XML、.NETも採用予定で、金融、ヘルスケア、製造といった産業別グループも採用する動きを見せているという。

 「目標は、開発者が“モデル”と“コード”が完全に分離され、2つのウィンドウでプログラミングできるようにすること。そして片方の変更がもう片方に反映されることだ」とソーリー氏は語る。「ソフトウェアでは90%の作業が保守に割かれている。これまで構築したもの、これから構築するものを無駄にすることなく統合することこそ、業界の発展につながる」(ソーリー氏)。

 OMGでは今年の4月末に技術委員会(TC Meeting)を横浜で開催することになっている。MDAのほか、UML、CORBAなどについての仕様の標準化や事例紹介、デモなどが行われる予定という。

(編集局 末岡洋子)

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