メインフレーム王国日本への黒船となるか、サンのリホスティング
2002/5/10
日本のITを語るうえで見逃せない特性が“メインフレームがいまだ主流”という事実だろう。オープンシステムの長所への理解は広まりつつあるが、景気の低迷も相まって保守的なムードはさらに強まってきたようにさえ見受けられる。現在日本では4000ものサイトがメインフレーム上で稼働していると言われており、その数は平均的な欧米諸国の5倍にもなるという。5月9日、オープンシステムの雄であるサン・マイクロシステムズは、メインフレーム上で動作しているアプリケーションをオープン環境上に移行するソフトウェア「Sun ONE Mainframe Transaction Processing」(以下、MTP)、「Sun ONE Mainframe Batch Manager」(以下、MBM)を発表、これらのソフトウェアを中心にメインフレーム・アプリケーションのリホスティングサービスを展開していくことを明らかにした。
同社 代表取締役社長 菅原敏明氏。 日本市場でメインフレームが根強く残っていることについて、「オープンシステムベンダとして(サンの)提案が十分なものではなかった」と認め、「変化へ対応し、企業の価値をつけるためにオープンシステムは必須」と語る。同氏自身、前職IBMのメインフレーム担当からサンへの転職という“オープン化”を実践した人物だ |
新ソフトウェアのうちMTPは、IBMなどのメインフレームで利用されているトランザクション処理システムCICS上で稼働しているアプリケーションをSolaris上に移行できるソフトウェア。VSAMなどのデータ、COBOL、PL/1で記述されたアプリケーションをほぼ無修正でSolaris上に移行でき、DB2など各種データベースへのインターフェイスも備えている。MBMはメインフレームのバッチ処理をSolarisで再現可能なソフトウェア。
同社は4月1日より新組織「MFR技術センター」を発足させており、同組織およびパートナー各社と競業で検証および導入にあたる。期間としては、プロジェクトにより異なるが、検証に約1週間、ソース監査に約1カ月、そして実際の移行作業に入るという。昨年9月より同製品の販売を開始している欧米では、イタリアのAlintagasがIBMのメインフレームを同社のサーバ「Sun Enterprise 4500」3台に移行、IT運用費を42%削減するなどの実績があるという。
同社 技術推進統括本部長 植松祐次氏は、「メインフレームへの移行として、リビルト、リライトなどの選択肢があるが、既存アプリケーションに変更を加えることなく移行が実現する“リホスト”は新しい概念」としながらも、あくまで移行までの一時的手段であることを強調する。「最終的には何らかの形でオープンシステムに移行すべきで、本ソリューションはあくまでも移行ステップに過ぎない」(植松氏)。同社の狙いはその先の置き換えにあるといえる。同社 取締役 製品事業統括本部長 細井洋一氏も「(同社ハイエンド・サーバの)Sun Fire 15Kはメインフレームの置き換えとして検討されている。(オープン化で出遅れている日本の)黒船になればと願っている」と語っている。
サンによると、欧米ではY2K問題が話題となった1999年に、メインフレームからオープンシステムへの移行ブームが起こったという。日本で同ソリューションを、リスクを怖れてオープン化に踏み切れない企業に対し画期的なものとするためには、CICSしかサポートしていない点は多少のマイナス要素となりそうだ。同社によると、現在、国産ベンダのメインフレームのコンバージョンツールの開発予定はないという。
価格は、MTPが500万円より、MBMが2500万円より。出荷は6月中旬に開始の予定。
(編集局 末岡洋子)
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