[eWEEK]
Webサービスの新仕様で企業間統合が進む

2002/7/24
July 22,2002 Renee Boucher Ferguson

 米BEAシステムズ、独SAP、米サン・マイクロシステムズなどトップベンダの支持を得る、2つの新しい標準が登場した。ベンダ各社は、これによってWebサービスを使ったパートナーとの商取引が容易になると強調している。

 先月下旬にWSCI(Web Services Choreography Interface)およびBPML(Business Process Modeling Language)という2つの新しい標準が発表された。この2つの標準を併用すれば、ビジネスアナリストやソフトウェアエンジニアに対して、さまざまなBtoBのシナリオにおけるビジネスプロセスの振る舞いを提供できる。

 これにより企業各社は、複数企業間にまたがるビジネスプロセスのモデリングおよび実行で相互に協力できるようになる。

 BEA、SAP、サン、および米Intalioの4社が共同で発表したWSCIは、XMLをベースとしており、Webサービスにおけるアプリケーション間連携の自動化を実現する基盤技術となる。WSCIは、Webサービスを用いて交換されるメッセージの流れを記述するほか、Webサービスがインタラクティブにやりとりするメッセージ群についても記述する。WSCIを後援する企業の関係者によると、WSCIにより、複数のWebサービスが関係する複雑なプロセスをグローバルに展開することが可能になるという。

 WSCIと同時にBusiness Process Modeling Initiative(BPMI)が発表したのがBPML 1.0のドラフト版だ。この仕様はWSCIをさらに活用するための、抽象/実行イメージプロセスを表現するビジネスプロセスモデリング仕様となる。BPMLは、最終的にBPMLプロセスとして実行される企業内でのプロセスの実装と、WSCIによって定義される企業間のインターフェイスに変換される。

 BPML 1.0は8月15日に正式リリースされる。同言語を実装した最初の製品は米スターリングコマース、Intalio、および独IDSシェアーの各社から来年の第1四半期には登場することになっている。

 BPMIでは同時に、ビジネスプロセスに対する問い合わせや、企業活動のモニタリングを行う標準手法を提供する「BPQL(Business Process Query Language)」という下位標準の策定も進めている。

 WSCI 1.0は既に利用可能となっており、立ち上げに携わった組織では主要ソフトウェアベンダ各社からの支持表明を数週間以内に発表する見込みだ。現在、策定企業各社では自社製ソフトウェアへのWSCI仕様の付加を進めている。

 しかし、いずれの標準も実際には全く実装されていないことから、Webサービスがどの程度の短期間でEDI(電子データ交換)接続などの既存のBtoB通信手段に置き換わるのかという疑問は当分残りそうだ。さらに、ビジネスプロセスモデリング仕様としてはこのほかにも、米IBMのWSFL(Web Services Flow Language)や米マイクロソフトが開発したXLANG(「スラング」と発音する)という2種類が存在する。

 WSFLはWebサービスの構成と動作を記述するXML言語の1つで、フローモデルとグローバルモデルという2種類のWebサービス構成を考慮している。XLANGはXMLベースのビジネスプロセス言語で、長期間存在するビジネスプロセス中のコンポーネントとして各種アプリケーションをまとめるための手段を提供している。

 BPM(ビジネスプロセス管理)のソフトを開発する米Lombardi SoftwareのCTO Phil Gilbert氏は、BPMLに大きな期待を寄せる。同社では、年末に発表予定の主力製品の次期バージョン「TeamWorks 3.4」にBPMLの1.0仕様を組み込むべく作業を進めているところだ。

 しかし、そのGilbert氏も、BPMLの標準が確定するのはまだ先という点では同じ意見だ。「この分野では、企業は標準に対して関心を払っておらず、それよりも(Webサービスから)得られる戦略的なメリットの方に関心が集まっている。このことは市場が急速に成長する傾向にありながらも、同時に不安定であるという事実を表している。業界が成熟しきっていないのだ」とGilbert氏は言う。

 調査会社米AMR Researchのアナリスト、Kimberly Knickle氏は、Webサービスとしてビジネスプロセス統合を実現することには大きな関心が集まっているしながら、以下のように語る。「だが何社の企業がこれを利用するのかは未知数だ。ベンダ各社はWebサービスを先へ先へと進めたがっているため、ユーザーの現状からかけ離れてあまりにも先を考えすぎている。(ベンダ各社は)これらの標準が必要と強調するが、ユーザーの大半はXML、WSDL(Web Services Description Language)、SOAP(Simple Object Access Protocol)、そしてUDDI(Universal Description, Discovery and Integration)というWebサービスの重要な4部品を理解しようとしている段階なのだ」(Knickle氏)。

 Knickle氏によると、米AMRでは一部の顧客がXMLやSOAPを理解し、導入を進めつつあることは把握しているものの、WSDLやUDDIについては、導入はかなり先になるだろうという。

 「いまのところは基本部分を使っているに過ぎない」(Knickle氏)。

 WSCIとBPMLの両標準が発展初期という段階にある中、重要な問題がもう1つ浮上してくる。Webサービスの基本となる基盤部品が変化したり、ユーザーに受け入れられなかった場合に基盤の標準はどうなるのかという点だ。

 「(Webサービスの)統合で最も難しいことの1つは、プロセスを定義し、そのプロセスをトラッキングすることだ」(Knickle氏)。

 Gilbert氏によると、標準はカスタマーの要求事項の1つにはなっているものの、契約や実装の生産性を決める決定的な要因になることはないという。

 「われわれの印象では、標準について語るときはBPM標準よりもWebサービスやSOAPの方が話題として注目される。(人々にとっては)BPMよりもまずWebサービスの理解と導入が先決ということなのだろう」(Gilbert氏)

[英文記事]
Specs Unite Partners

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