SANの可能性を広げる光ネットワーク技術

2002/8/30

 最近、SANなどのネットワーク・ストレージ技術が注目を集めている。このネットワーク・ストレージ分野において、いま最もホットなトピックといえるのが、地理的に離れた場所にあるストレージ同士の同期をとる、いわゆるリモート・ミラーリング(レプリケーション)の実現だ。このように、リモート・ミラーリングに注目が集まるのは、2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロで、ディザスタ・リカバリ(災害復旧)に対する各企業の意識が高まったことにある。

 現在SANにおいては、機器同士のためにファイバ・チャネルという光ファイバの高速接続インターフェイスが主に用いられている。SCSIケーブルなどに比べ高速で、機器の接続数に制限がなく、接続距離も稼げるのが特徴だ。だが接続距離については、社内LANで使用する分には問題にないものの、ディザスタ・リカバリが想定するような数十〜数百kmに及ぶ遠距離での機器接続は、プロトコル上の制限から難しい。そのため、最近ではファイバ・チャネルのフレームをTCP/IPのパケットでカプセル化する技術や、WDM装置でFCのフレームを中継するFC over WDMのような技術が登場し、ファイバ・チャネルの距離上の制限をなくす試みが行われている。

 SONETやDWDM(高密度光分割多重)装置である「OPTera Metroシリーズ」など、光ネットワークの分野で高いシェアを持つノーテルネットワークスは、このSANとWDMを組み合わせたソリューションについて、その現状と最新事例をいくつか紹介した。

 同社によると、諸外国における現在のトレンドとしては、ダーク・ファイバの企業ユーザーへの提供などが行われ、光ファイバによる広域ネットワーク構築のための下地が整いつつあると説明する。また、北米と韓国などでは、政府の規制により、ディザスタ・リカバリのような状況を想定した地理的冗長性を持ったデータ・バックアップ・システムの構築が求められている。特に韓国においては、金融機関は2002年末までにこれらの仕組みを整える必要があり、システムの導入が急務となっている。そのため、世界的不景気の中においても、MANやWDM装置の市場はむしろ盛り上がる傾向にあるという。

 サービスの多様化も進み、北米では単にダーク・ファイバを提供するだけでなく、WDM装置で光ファイバに波長を多重化し、その波長を安価に貸し出す「波長貸し」のサービスも登場してきていると説明する。SANの広がりと、MAN構築ブームが相乗効果となり、新たな市場が形成されつつあるようだ。

 ダーク・ファイバの解放が行われ、日本においても光ファイバ+WDMによるMAN市場が徐々に立ち上がりつつある。だが、ファイバ・チャネルやWDM装置は高価で、まだ一般に広く普及するには時間がかかるかもしれない。ファイバ・チャネルが広く普及し、WDM装置貸し、波長貸しのソリューションが提供されるようになれば、さらに市場は拡大していくだろう。

[関連リンク]
ノーテルネットワークス

[関連記事]
ノーテル、ダイナミック・ルーティングに対応したVPN装置 (@ITNews)
ノーテル、ATM→IP/MPLSを実現するハイエンド・スイッチ (@ITNews)
IP技術者のためのSAN入門 (Master of IP Network)
MANと光伝送技術の最新トレンドを探る (Master of IP Network)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)