EMC、SANとNASの次に来る戦略目標はCAS

2002/9/18

 EMCが、SAN(Storage Area Network)とNAS(Network Attached Storage)の次に重要な戦略課題として掲げ、今後力を入れるのは、フィックス・コンテンツ用のストレージ、CAS(Content Addressed Storage)ソリューションだという。

 フィックス・コンテンツとは、データの改変がないデジタルコンテンツのこと。音楽や映画などのデータや、財務データや契約書、電子メール、CAD/CAM用のデータなどの電子ドキュメント、MRIやレントゲンなど、その範囲は広い。こうしたデータはこれまで、高価格なストレージを利用せず、磁気テープや光ディスクなどに移してオフライン上で管理されることが多かった。EMCはそれに対して、今後低コストで管理できる同社独自のオンライン・ソリューションCASを展開していくと発表した。

EMCジャパン 代表取締役社長 スティーブン・D・フィッツ氏

 EMCジャパン 代表取締役社長 スティーブン・D・フィッツ(Steven D. Fitz)氏は記者発表の席上、「EMCは今後もビジョン、戦略をその分野に注ぐ。そして、SAN、NASに次いでEMCの次のマーケットはCASだ。CASのマーケットはEMCが作り上げる」と熱く語った。同氏によると、今後増えるネットワーク・コンテンツの50%以上はフィックス・コンテンツだという。

 フィックス・コンテンツの管理にSANやNASは向いていないとEMCは主張する。それは、ストレージの価格が高いほか、データをいかに速く転送できるかといった点が、SANやNASの主要な課題だからだという。フィックス・コンテンツの管理では、オンラインですぐにアクセスできること、長期保存、保証、信頼性が確保されること、システムに依存せず、長期かつ一貫したコンテンツ管理体系を持つこと、PB(ペタバイト)級までのスケーラビリティ、低コスト(初期コストと運用・管理コストを含む)が重要な要素になる。そして同社が提供するソリューションは、それらの要件をすべて満たしていると自信を見せる。

 同社が提供するフィックス・コンテンツ専用のストレージ「EMC Centera」は、1キャビネットあたり5〜10TB利用できるほか、最大16キャビネットで160TBまで利用可能だ(16キャビネットで1Centeraクラスタを構成する)。クラスタは、最大7クラスタまで拡張できるため、PB級のデータも扱うことができる。

 ネットワークストレージとして、CASがSANやNASと異なるのは、ロケータやファイルシステムなどがストレージ側にあり、ファイルの位置情報などをストレージ側で管理している点だという。保存したいデータ(オブジェクト)は、アプリケーションから専用のAPIを通じてEMC CenteraにIP経由で転送される。送られたオブジェクトに対して、EMC Centeraはユニークな暗号化された128ビットのContent Addressを生成、発行し、これをアプリケーションに返す。アプリケーションはこのAddressを管理する。次にこのコンテンツにアクセスしたい場合は、このAddressを指定することで、直ちにこのオブジェクトにアクセスできるという。

伊藤忠テクノサイエンス 代表取締役社長 後藤攻氏

 同社はEMC Centeraの販売に関して、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)とマスターディストリビュータ契約を締結し、主にCTC経由でほかの代理店やエンドユーザーに販売していくという。

 両社がターゲットとするのは、製薬やバイオ企業などの新薬申請(米国では、21−CFR Part11で最長45年データを保存する義務がある)や、患者の医療画像システムと連動させ、患者の画像データを長期保存するようなソリューションを含め、各業界ごとにソリューションを展開していきたいという。

 伊藤忠テクノサイエンス 代表取締役社長 後藤攻氏は、「EMC Centeraは、EMCだけが展開するストレージ。当社としても推していきたい。また、単にストレージをそのまま販売するのではなく、付加価値を付けて販売したい」と述べるなど、EMC Centeraの販売に対する意気込みを見せた。

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EMCジャパン

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