「ストレージ全市場でナンバー1をとる」とEMC会長

2001/5/23

 5月22日、米EMCコーポレーション会長のマイケル・ラドガーズ(Micahel C. Ruettgers)がセミナーのために来日し、記者会見を行った。この席でラドガーズ会長は、アジア・太平洋地域のマーケットの重要性、今後の見通しなどについて語った。

 米国ではハイテク企業の業績不振、景気の悪化が指摘されている。ストレージベンダのトップといわれるEMCの今期(2001年度第1四半期)の業績発表によれば、ストレージ機器は158%増、関連ソフトウェアは73%増で売り上げを伸ばし、全体の売り上げは23億4000万ドル、前年同期比29%増の成長を収めた。この成長率は、米マイクロソフト、米IBMを凌ぐ数字だ。

マイケル・ラドガーズ会長 2001年に会長に就任した

 「情報はすべての“鍵”である」とラドガーズ氏は言う。インターネットに接続できる端末は増加の一途をたどっており、データ量も飛躍的に増加している。2000年には30億ギガバイトのデータが新たに創造されたが、その量は2003年には8倍の240億GBytesに膨らむという。それに伴い、データの処理や保管に関するコストは低下している。1MBytesのデータを保管する価格は、この10年で100分の1程度にまで下がったという。

 ストレージが成長市場といわれる背景には、このような情報量の爆発的増加と、その処理・管理の必要性がある。米データ・クエストの調査によれば、市場規模で見ると2003年にはサーバとストレージが逆転するという。ラドガーズ会長は、「難しい時代ではあるが、継続的なITへの投資が必要だ」と言い、GEの会長兼CEOのジャック・ウェルチ(Jack Welch)氏が“テクノロジーこそが企業の動脈”として、“ライバル企業が投資を控えるいまこそ積極的にIT投資を行い、差をつける”と述べたことを引用してみせた。

 ストレージの課題としては、「情報の一元管理、共有、そして資産化を可能にする情報インフラストラクチャを持つことだ」とラドガーズ氏。また、スキルをもつ人材の確保が難しいなか、管理ソフトウェアの重要性も増し、効果的なバックアップ機能も求められるという。

 「今後も新しいプロトコルや標準に対応していく」と方針を語った。同社は2000年11月、NAS市場に進出している。米ネットワークアプライアンスがシェアを占めるこの市場でも「トップをとる」と自信を隠さない。ストレージでも低価格化の波が押し寄せているが、これに関しては、「わが社のターゲットはあくまでも中規模および大規模システム。ローエンドにシフトするつもりはない」と答えた。日本を含むアジア太平洋地域には積極的投資を続けて行く。1998年に開設したジャパンテクノロジーセンターに続き、2001年にはジャパンディベロップメントセンターをオープンする予定。ここでは開発や検証が行われることになる。

 ラドガーズ氏は1988年、米EMCに加わった。経営的に苦しい状況に追い込まれていた同社は、ラドガーズ氏の入社後立て直しに成功、10年間連続して成長を続けている。米経済誌に次のようなエピソードが紹介されている。ラドガーズ氏の入社当時、出荷したディスクドライブに不備があるなど顧客との間にトラブルが相次いでいた。顧客サービス担当上級副社長だった同氏は、自ら顧客の元へ出向き、ひたすら頭を下げた。ラドガーズ氏は、“EMCの新しい製品に取りかえるか、他社製品をEMCが購入して供給するか”という大胆な提案に打って出たこともあった。このように顧客へのコミットを示すことを重ねて、再び信頼を取り戻したという。

 ストレージ市場には各サーバ・ベンダも注目しており、競争の激化が予想される。顧客からの信頼と満足を獲得することを体感してきた同氏は、自信をもって「わが社は10年前からストレージに取り組んできた」という。「常に顧客の抱える問題に気を配っており、この姿勢は変わらない」と語るラドガーズ氏からは、古参の余裕が見られた。

(編集局 末岡洋子)

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