シスコ社長黒澤氏、10分間の「基調講演」で語る日本再生の道
2002/11/14
シスコシステムズ代表取締役社長 黒澤保樹氏 |
シスコシステムズは11月14日に開催するプライベートカンファレンス「CiscoWave for Executive 2002」に先立ち、11月13日、都内で記者会見を開いた。今回カンファレンス最大のキーワードは「Network Virtual Organization(NVO)」。企業によるNVOの実現により、日本の産業復興につなげるという壮大なテーマを隠し持つ。
代表取締役社長 黒澤保樹氏は、NVOを「自社の得意な事業分野は自社でやる。しかし自社でできない分野についてはパートナーシップを最大限に活用する。この仕組みをネットワークを活用し、あたかも1つの企業体のように有機的な事業展開を行う仕組み」と説明する。もちろん、シスコは自らNVOを実践する代表的な企業だが、日本国内でNVOを活用するユーザー企業は「ほとんど存在しない」(黒澤氏)といっていい。「一部、日本IBMなどの先進的な企業が散見されるくらいだ」という。
黒澤氏の持つビジョンが、シスコという一企業の事業展開のみならず、国内の産業構造改革という巨大なフレームの中で話されることが多いのは、黒澤氏自身が、政府の推進するe-Japan戦略に深くかかわっていることに起因するだろう。結局、日本の産業構造が改革されない限り、外資系企業であるシスコが旧メインフレームベンダが牛耳る政府調達市場に食い込むのは非常に困難である。そのジレンマがシスコに巨大なビジョンを持たせる大きな要因ともなっている。
9月18日に開かれた第15回IT戦略本部会議では、一定の成果をみせ始めたe-Japan戦略を見直し、さらに強力なドライブをかけていこうとする議論が行われた。つまり、インフラの整備やIT設備の増強、人材の教育といったハード面での推進はこのまま継続しながらも、ITを利用して日本の産業再生を行うにはどうすればいいのか、国際的な競争力を確保するにはどうすればいいのかなどのソフトウェア面での議論である。
黒澤氏は「日本企業の最大の問題点は、いまだに垂直構造型の事業展開しかできないために生産性が低いことだ。コスト構造を抜本的に見直すには、集中と選択、そしてアライアンスを積極的に推進していくことだ。それには、高速で安定したネットワークインフラとネットワーク上で稼働するアプリケーションの環境が不可欠なのである」と話す。さらに「まずは、ツールを導入すること。そうすれば(仕事の)プロセスが変わる。道具を使うカルチャーは自然と生まれるのである。まずはプロセスありき、とする議論が大勢を占め、日本の産業競争力は落ちていった」と現在の日本企業の経営体質を痛烈に批判をした。
黒澤氏のこのような発言が、結局シスコが展開するNVOにつながっていくことは言うまでもない。
(編集局 谷古宇浩司)
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シスコシステムズ
IT戦略本部(第15回)
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