マイクロソフト、政府のオープンソース導入案に大反対

2002/11/28

 マイクロソフトは、日本の政府や自治体が電子政府で導入を検討しているオープンソースのソフトウェアについて、「セキュリティ面でのWindows OSの優位性を強調したい」「商用ソフトよりコストがかかる場合が多くある」などと指摘し、導入案に反対する内容の見解を発表した。

 マイクロソフトが政府の方針について見解を発表するのは異例。総務省は2003年度予算の概算要求で、「セキュアOSに関する調査研究」という項目を盛り込み、セキュリティ面からオープンソースソフトの研究をする、と発表した。今回のMSによる見解の発表は、政府や自治体でオープンソースソフトの導入を検討する動きが出てきていることに対抗する目的があると思われる。

 マイクロソフトは見解の中で、オープンソースソフトについて「これまで、IT産業の発展のために大きな貢献をしてきた」と評価する一方で、政府の議論については、「オープンソースとは何なのかはっきりせず、大きな混乱が生じている」と指摘し、「電子政府の論議で、オープンソースということのみでそれらが特別のものとして扱われるのは適当ではない」とした。

 Windows OSについては、政府の一部から「中身のわからない海外製ソフトは、電子政府で使えない」とする導入への批判意見が出ている。マイクロソフトは見解の中で、欧米ですでに展開しているWindows OSのソースコードを一部公開するプログラム「シェアードソースイニシアティブ」を、日本の政府や自治体向けにも本格的に開始することを発表。本格化し始めた電子政府の案件を獲得するため、政府の心配を払しょくするのに懸命になっている。

マイクロソフトの執行役員 製品マーケティング本部 本部長 佐藤哲也氏

 マイクロソフトは、Windows OSとオープンソースソフトのセキュリティについて、「Windows OSの優位性を強調したい」と主張。その理由として、オープンソースソフトが商用ソフトに比べてセキュリティが強固でないことや、オープンソースソフトにもセキュリティホールが指摘されていることを挙げた。

 さらに、ほぼ無償か低価格で利用できるとしてオープンソースソフトが注目されていることについては、「製品そのものの導入コストのみでなく、システム構築、運用、サポートなど、全体のコストの観点が非常に重要」と主張。「オープンソースソフトはメンテナンス費用や社内の人件費がかかり、全体の期間で考えると商用ソフトよりコストがかかる場合が多くある」とけん制した。

 マイクロソフトに対しては、Windows OSとOfficeの利益率が高すぎる(つまり価格が高い)のでないか、という批判もある。マイクロソフトの執行役員 製品マーケティング本部 本部長 佐藤哲也氏は、「製品の価格は常に見直してきた。継続的に製品を開発し、サポートを続けるには投資が必要で、ユーザーに対価を求めることになる」と述べて、製品価格と利益率は適正であるとの認識を示した。

 来年4月にも出荷が予定されるWindows .NET Server 2003の本格キャンペーンを前に、日本政府などから思わぬ逆風が吹き始めたマイクロソフト。オープンソースソフトへの潮流が、政府内で大きな力になる前に、それを断ち切りたいのが本音だろう。

(垣内郁栄)

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