“社内銀行”を作るSAPの財務管理ツール

2002/11/28

 SAPジャパンは企業グループの財務状態を効率的に管理し、為替リスクの予測などを支援するツール「SAP CFM2.0 日本語版」を12月に出荷すると発表した。SAP CFMが国内で発売されるのは初めて。時価会計の導入や為替変動、資金調達の多様化など企業が直面している財務管理のニーズに対応する。

SAPジャパンの副社長 細谷哲史氏。「国内の製造業は潤沢なキャッシュを持ち、財務管理ツールのニーズがある」と述べた

 SAPジャパンの副社長 細谷哲史氏はSAP CFMについて、「企業の財布の中身を見ることができるツール」と説明。「キャッシュを増やし、減らさないための財務管理ツールであり、一般的な財務会計ツールではない」と特徴を述べた。

 SAP CFMは6つのサブコンポーネントで構成されるが、事業の特徴によって利用するコンポーネントを選択できる。メインとなるコンポーネントは、「インハウスキャッシュ管理」。企業内に仮想的な銀行を作るコンポーネントで、グループ企業がこれまで一般の市中銀行と独自に取引していた資金の借り入れや、取引先への支払いなどをこの社内銀行に代行させ、本社で一括管理する。これにより、グループ会社は社内銀行を通じてすべての決済ができるようになる。グループ企業の1社で資金不足が起きた場合、これまでは市中銀行で借り入れしていたが、インハウスキャッシュ管理を導入することで、グループ内のほかの企業から資金を借りることができるようになる。財務の流れを社内銀行に集中させることで、銀行手数料や事務コストの削減につながる。

 「財務取引管理」のコンポーネントは、外国為替や有価証券、ローン、デリバティブなど企業が運用している資産取引の管理ツール。取引決済や会計処理、時価評価などの処理を管理できる。

 ほかのコンポーネントとしては、為替リスクや金利リスクを分析する「マーケットリスク分析」や、取引企業の信用リスクを分析、管理する「信用リスク分析」、金融資産の運用成績を分析する「ポートフォリオ分析」、グループ企業の資金計画管理を支援する「流動性計画」がある。すべてのコンポーネントはSAP R/3と連携して利用できる。

 細谷氏によると、SAPジャパンがSAP CFMのメインターゲットと考えているのは、国際的な取引を行う製造業や商社などの大企業。SAP CFMは欧米ですでに数十社が導入しているといい、日本でも「来年中に数社の実績を作りたい」と細谷氏は述べた。

 日本では、銀行から資金を借りて事業を行う“間接金融”から、株式市場などで資金を調達する“直接金融”へと転換する企業が増えてきた。また、銀行への依存度を下げようとする企業も多く、財務管理ツールの需要は今後広がりそうだ。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
SAPジャパン

[関連記事]
「金融業界に力を入れる」、SAPのターゲットはすべての地銀 (@ITNews)
[Interview] 財務オペレーションを含む統合的なソリューションを提供するSAP (@ITNews)
[SAPPHIRE '02 TOKYO開催] ERPから企業を超えた人とシステムの連携へ、SAPの挑戦 (@ITNews)
SAPとIBMが連合し、オラクルに対抗 (@ITNews)
柔軟なバージョンアップが可能となった新R/3 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)