「開発環境が鍵になる」、アップルのアプリケーション・サーバ戦略
2002/11/30
アップルコンピュータ プロダクトマーケティング課長 鷲滝薫氏 |
アップルコンピュータは12月上旬をめどにアプリケーション・サーバ「WebObjects」の最新バージョン「WebObjects 5.2」をリリースする。Webサービスに対応したほか、運用環境としてIBMのWebSphere(4.0.4)、BEAシステムズのWebLogic(7.0)のサポートも可能になった。もちろん、Apache Tomcat(3.2.4/4.0.5)にも対応している。ピュアJavaによる完全オープンを標榜するWebObjectsは、強力なライバルがひしめくアプリケーション・サーバ市場で生き残れるのだろうか。同社では、開発環境の優位性を示すことで、競合製品の差別化を打ち出し、10万円を切る超低価格で中小規模企業市場の取り込みを狙う。
アプリケーション・サーバのコモディティ化が進み、IBM、BEAシステムズを始めとしたベンダは、プラットフォームを問わない上位のインテグレーション分野にWebアプリケーションビジネスの主眼を置き始めている。
彼らが狙いを定める市場はエンタープライズ市場であり、とくに日本BEAシステムズでは、基幹システムへWebLogicを本格的に採用してもらうべく、営業体制も根本的に改めている。一方、日本IBMは、従来のエンタープライズ市場への展開は継続しながらも、中小企業をターゲットに絞った「WebSphere Express」を近々投入するなど、市場拡大を図っている。販売戦略の方向性は異なるが、両社が主眼に置くのはともにインテグレーション・ビジネスであり、そこで重要となってくるのが、開発環境だ。
実は、アップルコンピュータの主眼もそこにある。
「WebObjectsと競合製品との最大の差別化点は開発環境にある」と同社プロダクトマーケティング課長 鷲滝薫氏はいう。
WebObjectsは、「データアクセス層」「ビジネスロジック層」「プレゼンテーション層」に完全独立した3階層アーキテクチャを採用している。個々のレイヤーごとに、開発ツールとフレームワークが含まれる。アプリケーションの開発フローは「データのモデル化」「アプリケーション構築」「アプリケーションのカスタマイズ」の3段階に分かれ、ほかのレイヤーの干渉を排除した「効率的な開発を実現する」(鷲滝氏)という。
3階層に独立したアーキテクチャを採用し、細かな機能はフレームワークとして隠蔽、独自のビジュアル開発ツールを提供することで、「階層化、コンポーネントの再利用、開発期間の短縮、コード作業の縮小という開発者の負担を大幅に軽減する機能を実現している」と鷲滝氏は胸を張る。今回、運用環境として、WebSphereやWebLogicといったプラットフォームに対応したことで、開発はWebObjectsで行い、運用はほかのプラットフォームで行うというケースが増える可能性も模索している節がある。
アプリケーション・サーバ市場で圧倒的なシェアを誇るIBM、BEAの牙城を崩すのは一朝一夕にはいかない。とするなら、まずは開発環境の軽量かつ高速な利便性をアピールすることは、同社にとって1つの戦略なのかもしれない。
なお、WebObjectsはアプリケーション・サーバとしては7万2800円という異例の価格である。
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アップル:WebObjects5.2
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