[Interview]
広域ストレージネットワークは「魅力的な価格に」

2002/11/30

NTTコミュニケーションズ Eプラットフォームサービス部 サービス開発部門 部門長 高尾司氏

 NTTコミュニケーションズ(以下NTTコム)は災害時のデータ復旧などを目的に、離れた場所にあるSAN同士をIPネットワークで接続する広域ストレージネットワークのサービス「WIDE SAN」を提供する。このようなサービスを通信キャリアが行うのは世界的にも珍しい。IPネットワークはNTTコムがギガビットクラスを提供。回線だけでなく、ファイバチャネルスイッチもサポートすることで、インフラだけでなくサービス内容を細かく設定する。このために、9月にはさまざまなベンダの機器を広域ストレージネットワークに接続して、接続性やパフォーマンスを検証できるラボをNTTコム社内に設置。ストレージベンダなどが自社の機器を検証している。NTTコムはストレージの新たな市場を開くことができるのか。NTTコミュニケーションズ Eプラットフォームサービス部 サービス開発部門 部門長 高尾司氏に聞いた。


――9月に開設した検証ラボの利用状況は?

高尾氏 年末までベンダによる検証の予約でいっぱいだ。東芝はストレージ機器のパフォーマンステストをした。各ベンダともSANのファイバチャネルスイッチと、IP-SANゲートウェイ、ストレージ機器を接続した際のデータの転送スピードに興味を持っているようで、さまざまなストレージ機器を組み合わせて、検証している。

――WIDE SANはヘテロジニアス(異機種混在)な環境で動作することが特徴の1つだが、ベンダの反応はどうか。

 ストレージビジネスの現場では、ヘテロジニアス環境での相互接続性は問題になっていない。多くのベンダのファイバチャネルスイッチはブロケード コミュニケーションズ システムズのOEM製品で、相互接続性は問題ないはず。しかし、どのベンダも自社のストレージ機器と他社のスイッチを接続しようとしていないのが実際だ。検証ラボに参加している各社は、ベンダであると同時にシステム・インテグレータ(SI)でもある。ストレージシステムを構築する際は、自社製品を使うのが当然。難しいところだ。

――通信キャリアの中で、NTTコムがこのようなサービスをする理由は。

 通信ネットワークで、NTTコムは他社から追われる立場。新しいことに挑戦する必要がある。通信キャリアはこれまでインフラとなるケーブルを敷設しても、そこに流れるデータについては興味がなかった。しかし、WIDE SANではNTTコムが通信ネットワークだけでなく、ファイバチャネルスイッチもサポートするなどインターフェイスまで面倒を見る。このことで企業のSANが広域ストレージネットワークにシームレスに接続できるようにしている。NTTコムがこういう踏み込んだ姿勢を見せることで、企業にもNTTコムが本気なんだということが分かってもらえるのではないだろうか。

 WIDE SANは海外でも利用できるようにする方針だ。ただ、国内と海外のSANをIPネットワークで接続すると、どうしても通信速度が遅くなってしまう。このような通信速度の低下に対して、対処できるのは通信キャリアだけだろう。

――どのような企業がWIDE SANの顧客になると考えるか。

 大手の金融や製造に期待している。SIと組んで企業にあわせたソリューションを提供したい。広域ストレージに用途を限ることで、通信ネットワークの利用料を抑えて、企業に対して魅力的な価格を設定したい。初めてのビジネスなのでリスクは高い。マーケットに受け入れられるかどうか不安はある。だが、企業のディザスタリカバリ(災害復旧)へのニーズは高く、市場は広がると確信している。

(垣内郁栄)


[関連リンク]
NTTコミュニケーションズ

[関連記事]
広域ストレージネットワークの検証ラボが開設 (@ITNews)
IT不況の中、ネットワークストレージだけが成長を続ける理由 (@ITNews)
「ミッドレンジ、ローエンドに注力」、CEOが語るEMCの新戦略 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)