「ミッドレンジ、ローエンドに注力」、CEOが語るEMCの新戦略

2002/11/20

EMCの代表取締役社長兼CEO ジョセフ・M・トゥッチ氏。来日中に22人のCIOと会い、EMCに対する要望などを聞いたという

 EMCの代表取締役社長兼CEO ジョセフ・M・トゥッチ(Joseph M. Tucci)氏は都内で会見し、ミッドレンジ、ローエンドのストレージに注力する方針を明らかにした。「EMCはハイエンドストレージですでにリーダー。ハイエンドの技術をミッドレンジ、ローエンドに波及させる」とトゥッチ氏は述べた。

 トゥッチ氏はEMCの今後の製品戦略として「CLARiX CXシリーズの新しい製品をまもなく発売する。CLARiX CXファミリが完成することになる」と述べ、「さらに市場シェアを伸ばしていきたい」と語った。主に力を入れるのはミッドレンジ、ローエンドの製品で、トゥッチ氏によるとデルと協業しているのもミッドレンジ、ローエンドを充実させる方針の一環だという。

 好調に市場を広げてきたストレージだが、世界的な景気の後退で「過剰供給になり、ストレージの価格は下がってきている状態」(トゥッチ氏)。価格の下落で同社の収益の悪化が心配されるところだ。PCにおけるデルコンピュータのように、ストレージ市場もオープン化が進むことで他社製品との差別化が難しくなり、1強多弱の状態になる可能性も指摘される。だが、トゥッチ氏はこの懸念を否定し、「デルはPCで成功したが、同時にOSを提供したマイクロソフトも成功した」と指摘。

 「ストレージでも、ソフトウェアが競争のポイントになる」とトゥッチ氏は述べ、ソフトウェアで差別化をして、収益性を高める考えを示した。ストレージは今後、仮想化やデータのライフサイクル管理など、より高度な機能が求められるのは必至。EMCは2002年に他社の2倍にあたる8億ドルのR&D投資をしているといい、「投資額のうち、75%はソフトウェア開発に投じている」とトゥッチ氏は説明した。

 トゥッチ氏は今後普及が予想されるIPストレージのプロトコル、iSCSIについては慎重な姿勢を示した。トゥッチ氏は「現状でiSCSIとファイバチャネルのコストは同等」と指摘し、「主流はファイバチャネルだ。iSCSIは今後数年間はファイバチャネルを切り崩すことはできないのではないか」と述べた。しかし、その一方で「ペースは遅いがiSCSIの時代は必ず来る」と述べて、iSCSIなどへのR&Dを続ける考えを示した。

 今回のトゥッチ氏の来日は、同社のプライベートイベントへの参加と、日本の顧客やパートナーとの意見交換をすること。そこでEMCが進める新戦略「Automated Networked Storage」(自動化ネットワークストレージ)を説明し、好感触を得たという。

 その日本のストレージ市場についてトゥッチ氏は、「ストレージでSANなどネットワーク化されているのは19%のみ」と説明し、「EMCが製造するストレージの75%がネットワークストレージだ。日本市場ではネットワークストレージが主力であるEMCの強みを発揮でき、多くのビジネスチャンスがある」と、積極的に市場開拓する方針を示した。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
EMCジャパン

[関連記事]
HPの新ストレージ戦略の要はハードはコンパック、ソフトはHP (@ITNews)
「仮想化」が実現するストレージのブレークスルー (@ITNews)
「次の革命はNASとSANの集約」、EMCがAutoISで進める新戦略 (@ITNews)
「国内売り上げを2倍に」とマイケル・デル、日本でも周辺機器市場に参入 (@ITNews)
主要ストレージベンダが推進するCIM (@ITNews)
[Interview] SANはIPネットワークへ移行するのか? (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)