IT不況の中、ネットワークストレージだけが成長を続ける理由

2002/11/29

IDC Japanのストレージシステムズ リサーチマネージャー 森山正秋氏

 IDC Japanのストレージシステムズ リサーチマネージャー 森山正秋氏は、11月27日から開かれている「STORAGE NETWORKING WORLD/TOKYO 2002」で講演し、2002年の国内ストレージ市場がマイナス成長になる一方で、SAN(Storage Area Network)、NAS(Network Attached Storage)などのネットワークストレージへの投資は増加するとの見方を明らかにした。

 森山氏によると、国内の2002年上半期のストレージ関連機器の出荷金額は2468億円。2002年通期では5110億円の見通しで、前年比1.8%減のマイナス成長になる。2001年は5203億円で、9.9%増だった。世界的な不況で企業がIT投資を大きく抑制していることが原因。IDCでは2002年の国内IT投資額を前年比1.3%増の12兆5563億円と年初に予測していたが、現在、「かなりの下方修正」(森山氏)を検討しているという。

 IDCによると、内蔵型ストレージを搭載するサーバー出荷台数の減少で、DAS(Direct Attached Storage)への投資が2002年から減少し始めた。一方で、SANやNASなどのネットワークストレージへの企業の投資は着実に増大していて、2006年までの年平均成長率は31%。DASはマイナス6%になるとIDCは見ている。IDCでは、2006年には全ストレージに占めるネットワークストレージの割合が47%になると予測していて、ストレージ市場全体をネットワークストレージが引っ張ることになる。

 2002年の国内ストレージ市場で、SANが占める割合は出荷金額ベースで、約15%。NASは5%以下だ。森山氏はSANについて「ストレージ統合や集中管理に対する企業の要求拡大で成長が続く」と分析。NASについては「台数、容量ベースでの高成長は続く」としながらも「競争激化やGB単価の低下で金額ベースの成長率は今後鈍る」と述べた。

 企業のIT投資が減少し、新規事業の先送りが進む中で、ネットワークストレージだけが成長を続ける理由について森山氏は「ストレージ管理の効率化やTCO削減が国内企業にとって重要な投資課題になり、これらを実現するネットワークストレージが注目されている」と述べた。今後、さらにネットワークストレージ市場が拡大するためにはストレージベンダが、「投資効果の明確化と管理の容易性、ヘテロジニアス(異機種混在)環境への対応」などに取り組む必要があるとの考えを示した。

 国内企業のIT投資がハードを中心に落ち込む中、ソフト、サービスへの投資は何とか成長を維持している。ストレージでもSANやNASを基盤に新たなソリューションの開発が次の成長へのキーになるだろう。

(垣内郁栄)

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IDC Japan
STORAGE NETWORKING WORLD/TOKYO 2002

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