グループウェア市場でNotes/Dominoが狙われる理由

2002/12/3

 新規参入やバージョンアップが相次ぎ、グループウェア市場が活況を呈している。グループウェアベンダが一番注力しているのは、大きなシェアを持つ日本IBM(ロータス)の「Notes/Domino」から顧客企業を奪うこと。Notes/Dominoはグループウェア市場を狙う企業の標的となっており、その動向によってはグループウェアの業界地図が大きく変わる可能性もある。

 「Notesは邪魔者だ」。11月26日に電子メール、コンテンツ管理などを統合したコラボレーションソフトウェア製品「Oracle Collaboration Suite」を発表した日本オラクルの代表取締役社長 新宅正明氏はこう言い切った。「Notes/Dominoはレガシーと成り果てている。いずれ解体が始まるのは目に見えている。ノーツの将来性を語ること自体が無意味だ」というのだ。

 マイクロソフトは、Notes/Dominoのディレクトリ情報を「Microsoft Active Directory」に移行できるツールを、無償で提供すると9月12日に発表。マイクロソフトの取締役エンタープライズビジネス担当 鈴木和典氏は、Notes/Dominoについて「蓄積したデータが多すぎて必要なデータが見つからない、システム間連携が容易でないなど開発生産性が低い」と指摘し、無償ツールの提供で顧客企業の移行が進むとの考えを示した。

 グループウェア市場でNotes/Dominoが他社から集中して狙われている理由は、広く使われている旧バージョンのNotes/Domino R4.6のサポートを、日本IBMが来年1月末で終了することだ。そのため顧客企業は最終的に、R5か最新版の6にバージョンアップするか、他社のグループウェアに乗り換えることが求めらる。オラクルやマイクロソフトなどは、これを絶好の市場奪取のチャンスと見て、企業に乗り換えを迫っている。矢野経済研究所が5月17日に発表した調査によると、国内のグループウェア市場規模は400億円以上で、年15〜20%の成長率があるという。IT関連市場が全体的に低迷する中、注目される市場で、ソフトベンダ各社が顧客獲得に力を入れている。

 もちろん、企業がNotes/Dominoを支持していれば、企業はNotes/Dominoをバージョンアップして利用するだろう。だが、一概にそうとは言い切れないようだ。民間の調査会社、ノーク・リサーチが9月19日に発表した市場調査結果によると、国内の中堅、中小企業のグループウェア市場で、Notes/Dominoのシェアは44%でトップ。20%で2位のサイボウズを大きく引き離している。一方で、同調査によるとNotes/Dominoは顧客企業からの評価は低い。その評価は、1位のサイボウズ製品、2位のネオジャパン「iOffice」、そして3位のマイクロソフトの「Exchange Server」に次いで4番目でしかない。IBMとしてはR4.6から最新版の6にバージョンアップしてもらい、ほかのグループウェアに劣らない機能や操作を利用してもらいたい、というのが本音だろう。

 だが、IBMも防戦一方ではない。新バージョンの発表に合わせて、さまざまなサービスを検討している。IBMはNotes/Domino R4.6ユーザーが6へとスムーズに移行できるよう、データを移行させるツールやアップデートのためのQ&Aをそろえた移行サービスを近く発表し、バージョンアップを促進する。IBMによると、R4.6の顧客企業のうち、R5へバージョンアップしたのは全体の6〜7割。3〜4割はまだR4.6を使っており、同社にとっても無視できない数だ。IBMはビジネスパートナーと今年5月に「ノーツがもう一度日本を救う会」を結成。ほかのグループウェアに奪われた顧客を奪還するための施策を検討している。

 IBMはExchange Serverなど他社のグループウェアからNotes/Dominoへデータを移行させるためのツールも年内に発表する予定で、新たな顧客獲得にも色気を見せている。他社製品からNotes/Dominoに移行する際には、Notes/Dominoを特別割引価格で販売していて、グループウェア市場はにぎやかになりそうだ。IBMは「他社の参入などで市場が活発になりグループウェアが注目を集めるのはよいこと」と余裕を見せている。グループウェアの市場シェアが今後どうなるのか、注目を集めそうだ。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
日本IBM
日本オラクル
マイクロソフトのNotes/Dominoユーザー .NET移行支援サイト

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