[Interview] コンテンツマネジメントのメリットとは
2002/12/21
ナレッジマネジメントが注目を集めて久しいが、目に見える成功というのは少ないようだ。そうした中、エクステンド・エンタープライズ(Extended Enterprise)を標ぼうし、情報共有の面で企業のさらなる進化を提唱するコンテンツマネジメントシステムのベンダ、米divine International(ディバイン)COO ケン・キンセラ(Ken Kinsella)氏、米divineシニア・バイスプレジデントのダグラス・カプラン(Douglas Kaplan)氏、ディバイン株式会社 代表取締役社長兼任CEOの田中猪夫氏に、企業の情報化について話を伺った。
──ディバインとは、どのような会社ですか?
米divineシニア・バイスプレジデントのダグラス・カプラン氏 |
カプラン氏 ディバインの創業者は、アンドリュー・フィリポゥスキー(Andrew J. Filipowski)という人物で、情報革命に対応するツールとインフラを作ろうと考え、この会社を設立しました。
米国でのディバインの事業は大きく4つあって、まずはコンテンツがあります。現在4万社のコンテンツプロバイダと提携しており、コンテンツ・センターというコンテンツの取引所も事業化しています。
次にコンテンツマネジメント・システム。コンテンツマネジメントの基盤になるツールの提供ですね。J2EEベース、.NETベースの製品があります。これらは基本的にコンテンツやワークフローの道具で、人のプロファイルやデバイスごとにパーソナライゼーションでき、情報を部分ごとにではなくデジタルアセットという発想でパブリッシュできるコンテンツマネジメントスイートです。
3つ目は、コラボレーションですね。買収したマインドアラインという会社の製品をコアに、テキストだけでなく、映像などいろいろなやり方でコラボレーションする環境を提供するものです。
そして4つ目は、インタラクションと呼んでいる事業です。これまでは情報をどう作り出すか、どう集めるか、パーソナライズするか、どうシェアするかということでしたが、最後は顧客にどう見せるかというソリューションを提供します。大事なのは顧客と会話する際にその顧客の情報をすべて持っていないとうまく対応できないということ。ディバインは、“ユニバーサルキュー”“ユニバーサルビュー”に関する特許を持っており、企業内のすべての情報を1つの画面で見られるソリューションを提供します。どの顧客がどのチャネルでどういう行動をしたか分析するツールもあります。
──これまでいろいろなツールベンダなどを買収してきましたが、その目的は何ですか?
カプラン氏 最終的な目的は、ユニバーサルナレッジの実現です。これはエクステンド・エンタープライズと関係するのですが、企業には従業員、パートナー、カスタマーという3種類のステークホルダーがいます。この人たちはこれまで会社全体の情報にうまくアクセスできていかたというと、そうではなかった。われわれが考えているユニバーサルナレッジというのは、この人たちがうまく情報を見ながら、会話をできるようにしたいということなのです。
これからは、企業がそれぞれ1つのインフォメーション・エンジンを持つことになります。それをみんなで共有しないと意味がありません。共有の仕方はいろいろあって、EIPのポータルとか、インターネット、エクストラネットとか、電子メールとかいろいろなやり方があります。われわれは情報を取り集めるツールと作るツール、それぞれのチャネル向けにパーソナライズするツールがあります。
──それらのツールによってユニバーサル・ナレッジが実現できるのですか?
カプラン氏 ITテクノロジがユニバーサル・ナレッジなのではありません。情報の使い方がユニバーサル・ナレッジなのです。コンテンツとナレッジは違いますね。コンテンツはただの記事、ただの写真、ただのデータベースに入力された会社名です。ナレッジは、それを見た人が何かアクションを図れるようになるもののことなのです。
いま話したのは、製品──ソフトウェアですね。ディバインの特徴は、ソフトウェア会社だけではなくて、サービス・プロバイダでもあることでマネージドサービスやホスティングをやっています。自社でソフトウェアを持つというのは1つのやり方ですが、最近はITは誰かに任せたいという傾向も結構でてきています。ディバインは、ソフトウェアとASP的な活動をやっていて、世界でNo.2の企業になっています。マイクロソフトのトップのISPでもあります。
それからコンサルティング的な活動も行っています。ディバインは「全部できる」というソリューションを提供するわけです。
ディバイン株式会社 代表取締役社長兼任CEOの田中猪夫氏 |
田中氏 ただし、日本ではコンサルティングなどはパートナーと一緒にやっていきます。われわれのソリューションを導入すれば、エクステンド・エンタープライズになれるわけです。
──エクステンド・エンタープライズとは、ユニバーサル・ナレッジを実現した会社ですか?
田中氏 2種類のとらえ方があると考えています。テクノロジの面からいえば、XMLなどを使ってデータを変換できるようにした会社をそのようにも言えます。われわれはステークホルダ間でコミュニケーションが十分に図られるようなインフラを用意し、それを実現している会社をビジネス・エクステンド・エンタープライズという形で考えています。われわれが注視しているのは、後者のほうですね。
──エクステンド・エンタープライズを実現するツールとして、グループウェアでは不十分ですか。
田中氏 具体的には「Notes」ですよね。現状、日本の場合は10年ほど前から導入されてきているわけですが、そのNotes R4.6が来年3月にはサポートが打ち切りになってしまいます。しかし、Notesでマクロを使ってアプリケーションを構築したりということを、たくさんの企業で行っています。いわば、がんじがらめになってしまっているために、Notesでとどまっている状況だと考えています。
Notesであっても、企業内部向けのEIPであれば実現可能です。しかし、デマンドチェーンなどのように、外部に情報を発信しようとすると、難しいですね。企業の内部のナレッジだけを考えるのではなくて、ほかのステークホルダーに発信していくことが求められているわけです。少し大きな会社であれば、数万のパートナーがいることも珍しくありません。これらの人々に企業内のコンテンツを開放するには、CMS(コンテンツマネジメントシステム)の仕組みが必要なのです。
ディバインのCMSインフラは、EIPにとって重要なコンテンツの編集や作成、配信のためのエンジンになります。ここで作成したコンテンツをEIPに提供するという形ですね。
それと同時に、過去作られたコンテンツを生かす必要があります。特に日本の場合、パッと切り替えたりはしませんね。最初に決めた部長が上にいたら、誰もやり方を変えませんから(笑)。
そのNotesのデータベースやコンテンツの一部をコンテンツサーバの情報資産として使えるソフトを開発しました。これを使えば、デマンドチェーンにも、サプライチェーンにもノーツのコンテンツが使えるようになります。Notesのデータをいかに移管させるか──これがわれわれの戦略的な取り組みになります。
──コンテンツマネジメントのメリットは企業にとって分かりにくいものではありませんか?
米divine International COO ケン・キンセラ氏 |
キンセラ氏 われわれの戦略は、世界経済と同じように背景はとても単純な話です。現在、CIOはどれくらい戦略を立案し、実行しているか、ということで給料をもらっているのではなくて、どのくらいお金をセーブしているかということで評価されています。ディバインはそこで絶対の費用対効果(ROI)を見せることができます。
その要素としては、「顧客を絶対に失わない」「もっと密な関係を持てる」「顧客の情報が詳しく分かる」というようなものになります。2年前、95%の企業はガーナトーグループがエクステンド・エンタープライズを実現すると言っていました。つまり従業員やパートナーを生かして、事業をやっていくことが必要で、それができない企業はなくなるということなのです。
──しかし、まだエクステンド・エンタープライズを実現している企業は少ないですね。どうしてですか?
キンセラ氏 確かに、まだ戦略を立てて実現しようとしている企業は少ないでしょう。ほとんどの企業はインフォメーションをどう進化させるべきか分かっていません。企業の多くは、情報を使って顧客と会話しなくてはいけないことは分かっていますが、まだ顧客と接触しているだけで、会話はしていません。いまの経済といまのCIOは、目の前の問題を解決しようとしているだけなのです。
ほとんどの企業は、行くべき道を走ろうとしているけれども、それがエクステンド・エンタープライズだと知っている企業は少ないかもしれません。企業はどういうことをやらなければいけないかについては分かっていますが、それをどういうふうにやるかについては分かっていないのでしょう。それをディバインは見せなければならない、説明しなければならない、実現しなければならない──それがディバインの仕事です。
(編集局 鈴木崇)
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