[Interview]
OASIS社長、「今年はebXMLの実装が進む」

2003/1/29

 XMLの特性を生かし、あらゆる企業が参加できるBtoBの実現を目指して、業界団体のOASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)と国連組織のUN/CEFACTが共同で開始したプロジェクトebXML。

 2001年5月、プロジェクトとしてのebXMLは終了、現在はOASISとUN/CEFATの下で活動が続けられている。オープンな標準技術を強みとするebXMLだが、実際の取引で用いるにはまだ不十分な部分もあり、その普及は約束されたものとはいえない。ebXMLのいま、そしてWebサービスとの関係や今後の見とおしについて、OASISの社長兼CEO パトリック・ギャノン(Patrick Gannon)氏にお話を伺った。


OASISの社長兼CEO パトリック・ギャノン氏。「日本はXMLにいち早く注目した国。いまだにXMLでは先進国だ」と語った

――OASISの活動について教えてください。

ギャノン氏 1993年にSGMLの相互運用性のためのガイドラインを策定する目的でSGML Openを設立。その後1998年にXMLをはじめ、そのほかの標準化にも携わることを目指し、OASISと名称を変更した(正式名称はOASIS Open)。現在メンバーは世界100カ国に600以上だ。ベンダやSI事業者、NPOや大学などの組織が過半数を占め、残りは個人会員だ。

 社長兼CEOとしてのわたしの役割は、事業全体の統括。技術、コミュニケーション、マーケティングやメンバーシップや役員会すべてを含む。

――OASISの重要な成果物の1つにebXMLがあります。ebXMLはどの段階にあると認識していますか?

ギャノン氏 ebXMLは企業が業種や規模を問わず電子的に商取引ができることを目指し、その実現のための仕様を定めたもの。仕様としては現在6種あり、そのうちインフラ関連の4種(メッセージング、コラボレーティブ・パートナー、レジストリ&レポジトリ、インプリメンテーション、インターオペラビリティ&コンフォーマンス)がOASISの標準として承認されており、2種(コア・コンポーネント、ビジネスプロセス)はUN/CEFACTの扱いとなる。

 OASISが受け持っているインフラの4仕様に関しては、仕様は完成したもので実証されている。現在、企業は実装し始めており、米国・欧州では、パイロットプロジェクトとして、限定した範囲内で実際にebXMLを用いて取引を開始するところがでてきた。把握しているだけでも20〜30のパイロットプロジェクトが動いており、結果に応じて徐々に規模を大きくしていこうとしている。

 ebXMLの現状については良い印象を持っている。先日、OASISが発表したUBL(Universal Business Language)により、標準のボキャブラリができた。また、UN/CEFACTがコア・コンポーネントなど2仕様を今年中に完成の予定で、すでに最終ドラフトも見せてもらったし、レビューの段階に入っているはずだ。そういったことから、今年はebXMLの実装が進むと予想している。UN/CEFACTとは、プロジェクトとしての共同作業は終了したが、仕様のコーディネーションなどの技術面はもちろん、マーケティングでも共同でできることは多い。いまでも連絡を密に取り合っており、2週間に1度は電話会議を、半年に1度はフェイス・ツー・フェイスのミーティングを持っている。

――普及にあたっての課題は?

ギャノン氏 どの標準でもいえることだが、大切なことは、これまでの伝統・文化の上に利用できるものであること。そっくり置き換えてしまうような技術は、どんなにすばらしい技術でも採用されずに廃れていく。標準技術には採用のプロセスがある。ebXMLは、世界150カ国から4500もの企業や人が参加して作り上げてきた経緯を持つ。多くの組織や企業が実装にコミットしているし、業界団体(ハイテク業界のRosettaNetや金融業界のSWIFTなど)もサポートを表明している。ebXML準拠のソフトウェア製品も増えているし、オープンソースとも連携している。あとは時間の問題だと考えている。

 課題は、実際に利用する企業にebXMLのポジション、利用方法などを正しく理解してもらうこと。例えば、ebXMLによりEDIがなくなるわけではない。技術の特性や用途を十分にリサーチをして、ebXMLの特長をきちんと理解したプロジェクトを実行しその価値を示す、そして規模を拡大していく。このような事例が増えてくると一気に普及するだろう。

──そのebXMLの価値とは?

ギャノン氏 XMLという標準技術を用いているため相互運用性があり、プラットフォームやプログラミング言語への依存が少ない。EDIと比較すると、安価かつ容易に電子商取引が実現できること。今後は、EDI、ebXML、Webサービス、Web上のECと、企業は使い分けるようになるだろう。EDIを現在使っている企業は今後もEDIを使うだろうし、ebXMLは中小規模の企業がEDIレベルのビジネストランザクション取引を安全に行う際に利用されるだろう。Webサービスは、アプリケーションのユーザーが動的に変更する可能性のあるようなアドホック型の取引に使われるだろう。

――OASISとしてWebサービスへはどう取り組んでいくのですか?

ギャノン氏 OASISはWebサービス分野でも活発に取り組んでいる。現在UDDIをはじめとしてWebサービスのための技術コミッティ(TC)は7つある。その1つであるマネジメント・プロトコルは、分散されたWebサービスの管理をするもので、今後重要になってくると思われるものだ。ebXMLはWSDL、UDDIなどのWebサービスの標準技術の機能を含んでおり、今後も統合が進むだろう。ebXMLはWebサービスのフレームワークとしての役割を果たすことになると見ている。

――OASISの今後の活動予定を教えてください。

ギャノン氏 Webサービスにおけるeビジネス分野へのコミット、多言語などさまざまな環境のeビジネスソリューションの提供。また、各国でeガバメント関連の取り組みが進んでいるが、ebXMLが注目されていることから、公共分野での活動も強化していく。

(末岡洋子)

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