「EIP導入で8000万円のコスト削減」、その根拠は?

2003/2/11

富士総合研究所のシニアシステムコンサルタント 吉川日出行氏

 「従業員が1000人の企業の場合、企業情報ポータル導入(EIP)で年間8000万円の削減効果が期待できる」。富士総合研究所のシニアシステムコンサルタント 吉川日出行氏は伊藤忠テクノサイエンス(CTC)とサン・マイクロシステムズが共催したイベント、「企業情報ポータル実践セミナー」でEIPの導入効果をこう試算した。もちろん吉川氏は「参考程度にしてほしい」としているが、コスト削減に悩む企業にとってEIPは大きな武器になることが証明された格好だ。

 吉川氏の試算方法はこうだ。まず富士ゼロックスなどの調査から「従業員の半数以上が50%以上の時間をデスク以外で過ごす」と定義。そしてソフト開発会社、IONAの調査から「従業員は情報を探し出す時間に70%を費やし、情報を利用する時間は30%」とする。従業員は1日8時間働いていた場合、ポータル導入によって検索に必要な時間が1割削減、社員の時給を1500円とする。これらを計算すると社員1人あたり、1日400円の削減効果が出る。年間では8万円の削減で、従業員が1000人の企業なら8000万円の削減になるというのだ。

 「年間8000万削減」は仮説の数字を組み合わせた数字だが、吉川氏によると米フォードモーターはEIP導入で具体的なコスト削減効果が出ている。フォードはEIPを2001年6月に導入。利用するのは世界中の20万人の社員で、1日に41万回のログイン、200万アクセスがあるという。EIPの導入と同時に社内にあった1500のイントラネットも統合した。

 EIP導入で米フォードは、1人あたりの情報探索の所要時間が1週間に4分短縮し、全社で年間700万ドルを削減したという。また、従業員のトレーニングをポータル上で行えるようにすることで、年間400万ドルの教育コスト削減を実現。さらに給与明細を電子化することで数百万ドルのコスト削減もできたという。吉川氏は「EIP導入でフォードは社内コミュニティとコミュニケーションが活性化した。社員同士によるコスト削減、生産性向上やヘルスケア、環境についてのアイデア交換で年間640万ドルの収益と、360万ドルの付加価値を創出した」と述べた。

 EIP導入によるコスト削減効果については、同イベントで講演したヤフーのエンタープライズソリューション事業部 営業部長の藤澤秀樹氏も試算。「理想的なEIPを構築した場合、従業員1人あたり、週に平均約6時間の効率改善が可能」と指摘した。

 吉川氏は「日本企業はこれまでモノに対する投資をしてきたが、これからは人や知識に対する投資や効率化が必要とされる」として、「今後さらにEIPの注目が高まるだろう」と述べた。

(垣内郁栄)

[関連リンク]
伊藤忠テクノサイエンス(CTC)
サン・マイクロシステムズ
富士総合研究所
ヤフー

[関連記事]
「分散化が新しいは単なるイメージ」、ガートナーがサーバ統合を語る (@ITNews)
コンテンツマネジメントのメリットとは (@ITNews)
統合技術にWebサービスを用いたポータル製品 (@ITNews)
企業ポータルのメジャーベンダ、日本市場に本格参入へ (@ITNews)
ポータル市場の成長を見込み、NRIと日立が提携 (@ITNews)
「コンピューティングは.NETとSun ONEに収れんされた」とマクニーリ (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)