[インタビュー]
米BEA製品担当責任者に聞く、
エンタープライズ・システム開発の未来

2003/4/12

米BEAシステムズ 製品担当部門プレジデント オリビエ・ヘラボア(Olivier Helleboid)氏

 米BEAシステムズ 製品担当部門プレジデント オリビエ・ヘラボア(Olivier Helleboid)氏が来日した。4月11日に出荷を開始した「BEA WebLogic Server 8.1」をきっかけに、2003年がBEAの大きな転換点になるのか。アプリケーション・サーバ・ベンダからインテグレーション・プラットフォーム・ベンダへの脱皮を図る同社の製品戦略および技術動向を、ヘラボア氏に聞いた。

――4月10日の記者会見でアルフレッド・チュアングCEOは「コンバージェンス(Convergence)がBEAシステムズ(以下BEA)にとっての最重要キーワードである」との発言をしましたね。つまり、アプリケーション開発からシステムのインテグレーションまで、1つの標準的なフレームワーク上で行われるべきである、そのソリューションを提供するのがBEAだ、という主旨だと理解しました。この点について、ヘラボアさんにもう少し突っ込んだ議論をお伺いしたいのですが。

 ヘラボア氏 コンバージェンスというのは、現在からもう少し先の未来のIT業界に巻き起こっている(あるいは巻き起こるだろう)大きな流れであり、トレンドのことです。これまでIT業界では、さまざまな技術が個別にシステム中に存在し、別個に動いていました。さらに、システム開発ツールを提供するベンダと、システム統合のプラットフォームを提供するベンダも別々に分かれている、といった状況があったわけです。

 ところが、顧客側の視点で見ると、まったく違う認識が生じてくるのが分かると思います。つまり、顧客が必要とするシステムなりアプリケーション群なりは1つです。それがたとえ、多くの開発企業が参加する複雑な構造のプロジェクトとして存在してはいても、結局1つのものであることに変わりはないわけでしょう。

 Service Oriented Architecture(SOA)という言葉があります。これは、顧客が行うビジネスやサービスの流れに沿って構築されるべき、ITシステムのアーキテクチャやその構築思想を指します。ITが主役ではなく、サービスが主役という考え方ですね。この概念の下では、バラバラに分散されたアプリケーションは、結合されていなくてはいけません。そうすると、結局、とても当たり前のことなのですが、開発作業とインテグレーション作業はつながっていなければならないのです。しかし、現実にはそうではない。なぜなのか? BEAが提供するプラットフォームはこのような疑問に具体的な答えを与えるものです。そして、コンバージェンスとは、BEAのプラットフォームが可能にする1つの解答なのです。

――なるほど。ということは、BEAでは、“結合”に必要な部品はすでに全部そろっていて、後はそれをいかに結合させるのかだけ、という考えがあるんですか。

「標準的なビルディング・ブロック(テクノロジ)は揃っていても、インテグレーションの標準的な仕様は存在していませんでした」

 ヘラボア氏 例えば、Java、XML、Webサービスなどなど、ビルディング・ブロックとなるべき標準的なテクノロジはそろいつつあると考えています。とはいえ、ご存じのように、技術的な課題はたくさん残っていますよね。XMLのセキュリティという側面はこれからさらに進歩を求められるでしょう。これが“部品”についての現状です。だた、先程言ったように、標準的なビルディング・ブロック(テクノロジ)はそろっていても、インテグレーションの標準的な仕様は存在していませんでした。それが、「Webサービス+XML」という技術で可能になるのです。BEAはJ2EE上にXMLを初めて持ち込んだベンダで、標準化作業についても世界的なリーディング企業として活動をしています。

 ――BEAの最近の戦略は、エンタープライズ向けソリューションの提供が主眼になっていますね。つまり、大企業あるいは超大企業というところでしょうか。そのような企業のシステム部門(IT部門)が最も困っているのはどのようなことなのでしょうか。色々なヒアリングをしてきていると思うのですが。

 ヘラボア氏 これまで、企業はアプリケーション開発に対して、膨大な投資をしてきました。しかし、それらのアプリケーションは、社内システム全体の中で有機的な結合をしているわけではなく、個別に存在しているのが現状なのです。この状況を改善するにはどうすればいいのか? というのが企業側の最も逼迫(ひっぱく)した悩みです。今回発売するBEA WebLogic Server 8.1は、まさにこのような顧客の要望を直接反映させた基盤製品です。

 また、BEAが顧客の規模を拡大しつつあるという質問についてですが、それによって、BEAのプラットフォーム上で開発を行う開発者の数や種類も大幅に拡大しつつあることを付け加えておきます。Visual BasicやCOBOLの開発者が、J2EEの開発を多く行うようになりました。

――最後に、Webサービスの標準化について聞かせてください。「WebサービスChoreography(WS-Choreography)」や「WebサービスTransaction(WS-Transaction)」といった技術について、BEAとIBMはそれぞれまだ標準化前の独自仕様の状態で製品に実装を開始しているようですが、これらの標準化の行方はどうなるのでしょうか。

 ヘラボア氏 これからですよ。BEA、IBM、マイクロソフトが中心になっている標準化委員会を通じて、標準化作業を進めていますが、IBMとマイクロソフトが時々まったく正反対の方向へ行きかけることがあるものですから……。BEAはそういった両者の仲介を努めることもよくあります。標準技術としてまとめることは非常に重要なことですし、いつになるのかは明言はできませんが、まとまると思いますよ。

(聞き手:編集局 新野淳一/構成:編集局 谷古宇浩司)

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