[Interview]
「Itaniumは“ザ・プロセッサ”だ」、Alpha開発者が最後のメッセージ
2003/4/24
Alphaプロセッサの歴史に幕が下りるときが近づいている。日本ヒューレット・パッカード(HP)は今年1月、新しいAlphaプロセッサ「EV7」を搭載したサーバ「hp
AlphaServer」シリーズを発表した。旧ディジタルイクイップメント(DEC)以来、64ビットプロセッサとして長い歴史を持つAlphaプロセッサは2006年にも販売を終了し、姿を消す。HPはAlphaプロセッサを、HPとインテルが共同開発しているプロセッサ「Itanium」に段階的に統合する予定だ。AlphaServerは今後どうなるのか。米ヒューレット・パッカードでAlphaプロセッサの開発を担当するStaff
Fellow Alpha Development Groupのピーター・バノン(Peter Bannon)氏と、国内でAlphaServerを担当するビジネスクリティカルシステム統括本部
サーバプロダクト本部 Alphaマーケティング部 部長の水谷辰彦氏に、現在の思いを聞いた。
――EV7を搭載したAlphaServerの販売状況は?
バノン氏 販売状況は予想を上回っている。顧客からの評判もいい。
水谷氏 国内は出荷台数で2ケタ、ワールドワイドでは3ケタの出荷をしている。特にGSシリーズの評判がいい。Alphaプロセッサの一番の特徴はCPUの速さだが、今回のEV7のベースは前バージョンのEV6。周波数は伸びているどころか、むしろ下がっている。だが、マルチプロセッサのスケーラビリティが飛躍的に伸びている。そのためベンチマークの数値よりも実アプリケーションでの性能が顧客に評価されているようだ。
米ヒューレット・パッカード Staff Fellow Alpha Development Groupのピーター・バノン氏 |
また、AlphaServerはHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の分野に強いとされているが、EV7搭載サーバはビジネス・アプリケーション分野でも売れている。1CPUの性能が高いために、アプリケーション全体で使用するCPU数を少なくすることができ、コストを抑えることができる点が評価されている。
バノン氏 ワールドワイドでも同じような評価だ。アプリケーションのパフォーマンスが評価されている。AlphaServerは導入時から信頼性が高く、インストール作業が楽な点も人気だ。AlphaServerを導入するのは、ほどんどが既存客だが、最近は金融機関の顧客が増加している。また、医薬品開発分野での利用も増えている。
――国内での導入状況は?
水谷氏 ファーストユーザーは国内有名自動車会社の子会社。HPC分野で利用する。テレコム系でも導入が決まっている。ネットワーク管理やネットワークハブとして使われる。
――Itaniumプラットフォームへの移行はどのような形で行うのか。
水谷氏 OpenVMSに関してはItaniumに直接ポーティングする。Tru64 UNIXのユーザーに対しては2004年後半にhp-ux上にTru64クラスタやファイルシステムなどをポーティングし、簡単に移行できるようにする。マーケティング的にはAlphaServerのライセンスをItaniumサーバに移すことや、顧客がアプリケーションをポーティングする際のサポートを行っていきたい。AlphaプロセッサをItaniumプロセッサに統合すると発表した際には、戸惑う声も聞かれたが、HPとコンパックが合併し1年たって顧客の反応が収まってきた。
――顧客が他社のItaniumサーバに乗り換えてしまうことはないか。
バノン氏 可能性はある。だが、ソフトやハードのパフォーマンスが十分な製品を提供すれば、顧客を維持できると考えている。AlphaServerと同じ管理環境を提供することで、顧客は困難なくビジネスを継続できるだろう。HPがItaniumプロセッサの開発でインテルに協力していることも、他社にないHPの大きなアドバンテージだ。
――Alphaプロセッサ、Itaniumプロセッサ以外の他社のプロセッサについての評価は?
バノン氏 サン・マイクロシステムズのプロセッサは、これまでも遅かったし、これからも遅いだろう。AMDが低い価格帯で64ビットプロセッサを投入したことで、サンはますます苦しくなるのではないか。そのAMDは、技術的には優れているが、搭載するサーバが少ないため、ビジネス的にはこれまでと同じで大変ではないか。AMDには(旧DECの)友だちがたくさんいるのだが……。IBMのPowerPCはユニプロセッサのレベルでは優れている。だが、マシンのスケーラビリティを見ると、私が期待したほどにはなっていない。
インテルほど開発に技術投資をしているベンダはない。ハイエンドなプロセッサでは、Itaniumこそが“ザ・プロセッサ”だ。設計と製造技術が組み合わさり、今後も性能改善が進んでいくだろう。
――2006年の販売終了で“Alpha”ブランドが消えてしまうが。
バノン氏 率直に言ってとても寂しい。13年間にわたりAlphaプロセッサの開発を楽しくやってきた。ブランドがなくなるのは悲しいことだ。しかし、今後も同じ同僚と仕事をしていけることはうれしく思っている。
(垣内郁栄)
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