インテルが語る無線技術の将来
2003/6/10
インテル フェロー兼コーポレート技術本部 コミュニケーション&インターコネクト・ラボ ディレクタのケビン・カーン氏 |
インテルは6月9日、現在同社が取り組んでいる無線技術の研究に関する発表を行った。フェロー兼コーポレート技術本部 コミュニケーション&インターコネクト・ラボ ディレクタのケビン・カーン(Kevin C. Kahn)氏は、ワイヤレスシステムの性能を決定する要因として、「物理法則」と「規制」の2つを指摘する。前者は、高速処理性能を有した多くの異なる無線技術を開発すること、すなわちチャンネル容量を拡大させる技術を開発することを指す。後者は、利用可能なバンド幅と出力に関する各国の政府規制といかに“協調”していくか、である。無線技術の研究と研究成果を製品化するうえで政府の規制と切り離して考えることはできない。現在、インテルが進める無線技術の研究課題は、カーン氏が示しただけでも14あり、これらすべてが(主に米国の)通信規制をいかに通過させるか、という政治的な折衝活動と密接なつながりを持っているという。
インテルが研究する無線技術においての関心事項としては、「実装課題」にCMOS技術、RF用MEMS(高周波用マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)、パッケージ技術、再構成可能なベースバンド、アンテナ設計があり、「無線技術」では、変調技術の改良、スマートアンテナ、MACの改良(QoSの機能を追加することで、帯域幅を確実に確保できるようになるなど)、UWBがある。また、「システムレベルでの課題」として、インフラの展開、ローミング、メッシュ・アーキティチャ、センサ・ネット、使用法モデルが挙げられる。まさに、無線技術に関する包括的な研究・開発を展開しているといった感がある。この中で、インテルの無線技術開発の中核にあるのは、CMOS技術の統合にあるといっても過言ではない。現在では、Wireless-LAN、Wireless-WANなどさまざまな無線技術が別々に存在しており、相互通信を行うことはできない。しかし、カーン氏は「2005年にはCMOS技術を統合することで、各々の無線技術を製品化する際のコストを大幅に削減でき、さらに迅速なマーケット対応も可能になるだろう」と話す。さらに将来的には、ベースバンドを共用することで、瞬時に変更可能なアーキテクチャを採用したインテリジェントなCMOS技術を活用することで「非常に柔軟性のある無線ソリューションが実現できる」(カーン氏)。
同社としては、無線技術に注力することで、PC市場から家電市場までもターゲットにした巨大な“無線市場”でのイニシアティブ獲得を目指したいところだろう。「われわれは無線技術に関して、携帯電話、WLAN、PANといった異なるマーケット・セグメントを横断的にカバーしている。技術面でも、市場と同様、幅広い分野でローダーシップをとっている」とカーン氏が語るように、「変調技術」「アンテナ技術」「UWB」「CMOS技術」といった次世代の無線技術システムには欠かせない技術革新分野に投資を行っている。ただし、前述したように、このような技術革新が実った場合でも、規制対象となり、製品化を妨げられる場合は大きい。このため、「技術革新の現実に沿った規制の働きかけを同時に行っていく」(カーン氏)ことは避けられない。
(編集局 谷古宇浩司)
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