IPテレフォニー提案、顧客企業を口説くポイントは?

2003/6/14

 企業におけるIPテレフォニーの導入が本格化してきた。グローバルにIPネットワーク関連のサービスを提供しているイクアントのダイレクトセールス部長 下村たまえ氏は、「日本の大企業も将来的には(ほとんどが)IPテレフォニーに移っていくと思う」と述べた。何が企業をIPテレフォニーに走らせるのか?

イクアントのダイレクトセールス部長 下村たまえ氏

 下村氏は、IPテレフォニーのメリットを「コスト削減と生産性の向上を実現すること」と説明したうえで、「レガシーなPBXのベンダがストラテジーとして、いつIPテレフォニー製品に置き換えていくかのタイミングに左右される」と指摘した。つまりPBXを製造してきたベンダが、いつIPテレフォニーに本格的に舵(かじ)を切るのか。その時期によって、企業がIPテレフォニーを全面導入する時期が変わるというのだ。確かに国内ベンダの多くがIPテレフォニー製品を主力と位置付けるようになれば、製品価格の値下げなどで企業が導入しやすい環境は整う。

 下村氏によると、企業が合併、分割を機にIPテレフォニーの導入を検討することも多いという。「個人的な思いとして、3年くらいまでは企業が合併しても実際にオペレーションの実態が一緒になるまでには時間がかかり、シナジー効果が出せないケースがあった」と下村氏は説明。「しかし、ここ最近はスピードアップしていこうとしていて、1年〜2年で(システムの統合を)完結させることが多い」という。

 企業がシステムやネットワークを含め、実態として早期に合併するためには、企業トップの意識はもちろん、音声やデータを一括して提供できるIPネットワークの活用がポイントになる。IPネットワークベースに移行することで、社内にネットワークがシンプルになり、統合が容易になる。投資対効果が大きいとされるIPネットワークサービスを活用することで、合併効果も出しやすくなるだろう。イクアントでは、「IPコンバージェンス」(融合)として、音声やデータ、VPN、ホスティング、ビデオ会議などを組み合わせたソリューションを提供している。

 イクアントはMPLS(Multi Protocol Label Switching)ベースのIP-VPNのサービスを世界で最初(1998年)に提供した企業。そのためもあってか、「顧客企業からIP-VPNでネットワークを作りたいと、最初から指定される場合は多い」(下村氏)という。確かにIP-VPNはメディアやベンダのセミナーを通じて、高い注目を集めているサービスで、企業が自社ネットワークに導入を検討することも多いだろう。

 しかし、下村氏は「実際にイクアントのエンジニアなどがアセスメントやヒアリングを行うと、必ずしもIP-VPNが解でない場合もある」という。ネットワークのトラフィックで音声のやりとりがほとんどない場合や、Any to Anyのコネクションが必要でなくハブ&スポークが適しているケース、拠点間の通信が必要でないようなケースだ。このような場合はIP-VPNでなく、フレームリレーなど従来のサービスが適切なソリューションとなる。

 下村氏は「IPコンバージェンスのメリットが最初に出るのは、エンドユーザーを相手にしている企業」と指摘した。特に製造業やサービス業など顧客の満足度を上げることが求められる企業だ。IPテレフォニーを活用し、コールセンターの品質を上げるなどIPコンバージェンスのメリットが期待できるという。

 IPテレフォニーに関する技術的な環境は整ってきた。多くの企業は、導入メリットをにらみながらタイミングを計っている状況といえるだろう。

(垣内郁栄)

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イクアント(英語)

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