IP電話導入秘話にエンジニア魂を見た

2003/6/11

 「あのころのIPテレフォニー製品はひどかった。安定せず、機能もアメリカナイズされていた」。国内で最初の大規模なIP電話の導入となった新生銀行。その舞台裏ではドタバタ劇が演じられていた。こう振り返るのは、システム構築を担当したネットマークスの担当者だ。

ネットマークスのネットワークソリューション事業本部 エンタープライズソリューション事業部 営業支援部 ネットワークコンサルタント 松本陽一氏

 新生銀行の事例を紹介したのは、ネットマークスのネットワークソリューション事業本部 エンタープライズソリューション事業部 営業支援部 ネットワークコンサルタント 松本陽一氏。6月5日〜6日に開催されたシスコシステムズのイベント「CiscoWave 2003」の講演で述べた。

 新生銀行がIP電話への切り替えを検討し始めたのは3年前。しかし、当時はまだ、IP電話の大規模導入の事例がなく、ネットマークスも手探り状態だったようだ。松本氏によると、当時のシスコ製品の安定性はいまいち。米国での電話の使い方に合った機能しかなく、そのまま日本企業に使うのは厳しかった。そのため松本氏は、「新生銀の担当者と米国のシスコ本社を訪ね、日本企業に必要な機能や安定性について、3日間ほとんど缶詰になってエンジニアとディスカッションした」という。これらの努力の結果、26拠点で3500台のIP電話機を結ぶネットワークが完成。新生銀は「IP電話の先駆者」(松本氏)となった。

 ネットマークスは国内最大規模のIP電話導入事例となった新光証券のネットワーク構築も担当。松本氏によると、新光証券がIP電話を導入したきっかけは、新生銀などのIP電話の成功実績が増えて、IP電話が実用領域に入ったと判断したこと。既存のPBXがリプレース時期にきていたことも新光証券の背中を押した。新生銀は、PBXを新製品に切り替えることと、IP電話を導入することのコストを比較。コスト比較では、PBX、IP電話とも同程度だった。しかし、保守や運用管理のコストを考えて、IP電話を選択した。松本氏は「保守や運用管理のランニングコストは確実に落とせる自信があった」という。

 新光証券は、100拠点に8000台のIP電話機を導入。IP電話にしたことで、電話番号の変更や電話の配線を業者に任せる必要がなくなり、コスト削減や利便性の向上を実現したという。新光証券は、IP電話とアプリケーションを将来的に連携させることにも注目している。

 従来のPBXでは電話番号を変更したり、新しく電話を設置する際には保守会社のエンジニアに任せる必要があり、運用管理コストが多大にかかっていた。しかし、サーバでシステムを管理するIP電話ならその運用管理コストを大幅に削減できる。IP電話を導入しているネットマークスでは、500人以上の社員が使用するIP電話のネットワークを、スタッフ部門の女性が1人で管理。番号追加や変更などの作業を行っているという。しかも別の仕事と兼務した状態だ。運用マニュアルを作成し、教育を行ったことで専門知識がないスタッフでも管理可能になった。ネットマークスでは、IP電話導入で年800万円のコスト削減になったという。

 松本氏は、IP電話構築のポイントとして「呼処理」「WAN/LAN」「アプリケーション」を挙げ、「この3つをバランスよく構築していくことが重要で、スムーズな構築を実現する」と説明した。電話の基本機能となる呼処理では、「必要とする機能のチェックや番号計画、移行プランなどが大事」と指摘。また、WAN/LANでは優先制御の設計がポイント。アプリケーションでは、将来的にIP電話とビジネス・アプリケーションを連携させることを考えて、ネットワークをデザインすることが重要と訴えた。

(垣内郁栄)

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