NFLも導入、シスコのIPコミュニケーション
2003/6/6
「オープンスタンダードがデータコミュニケーション市場を変える」。米シスコシステムズでVoIPプロトコルやアプリケーションの開発責任者を務めるボイス・テクノロジ・グループの副社長 マイケル・フレンド（Michael Frendo）氏はこう述べて、オープンスタンダードによってほかのベンダ製品との相互運用を実現することの重要性を強調した。
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| 米シスコシステムズのボイス・テクノロジ・グループ 副社長 マイケル・フレンド氏 |
フレンド氏は開催中のイベント「CiscoWave 2003」（6月5日〜6日）の基調講演に登場。「Beyond VoIP-Catch the IP Communications Wave」のテーマで、シスコのIPコミュニケーション分野での戦略や導入事例を紹介した。
フレンド氏は、「コミュニケーションテクノロジは常に変化し、従来の制約を壊し続けている。ほかのベンダとのコネクティビティはシスコにとって義務である」と述べ、ネットワークが標準プロトコルに準拠し、相互運用性を確保することで、「いかなるデバイスにも接続できなければならない」と説明した。
また、フレンド氏は、シスコのIPコミュニケーションの強みを説明。シスコが1979年に発表したデジタルPBXは「閉鎖的で機能が限られていた」。しかし、現在同社のIP-PBXとして利用できるIPコミュニケーションは、音声のみでなく、画像や動画も利用可能。対応デバイスもPCや携帯電話、固定電話と多様で、「いつでも、どこでも、どのデバイスでも通信できる。IPコミュニケーションの強みを最も発揮している」（フレンド氏）という。
「IPコミュニケーションはユーザー企業のビジネスを推し進める原動力になるが、単にPBXをIPベースへと置き換えるだけでは企業の収入アップにつながらない。ユーザーが利益を求めるなら、そのニーズにこたえられるベンダを選び、乗り換える必要がある」とフレンド氏は指摘。シスコが、ボイスメールや音声認識、カスタマイズ可能なアプリケーションをそろえていることを説明し、シスコ製品の柔軟性をアピールした。
導入事例では、IPコミュニケーションを使った自社のケースを発表。製品製造をパートナー企業に委託しているシスコは、世界に38の製造プラントがある。シスコはそのすべての製造プラントにIP電話を導入。統一したプラットフォームでIP電話を導入したために、「あるパートナー企業に電話をかけた顧客にとって、IP電話でつながったパートナー企業全体が仮想的に統合された1つの企業に見える」ようになったと説明。IP電話導入でEnd to Endでのコミュニケーションが円滑になっただけでなく、「ビジネスの組織編成が効率化されたり、社外へのアピールになっている」とフレンド氏はメリットを述べた。
シスコは米プロフットボールのNFLにIP電話を導入した。NFLはメインの試合会場が移動。そのため、NFLの運営会社もオフィスが移動し、オフィスの電話番号をたびたび変更する必要があったという。しかし、IP電話の導入で引越ししても同じ電話番号が利用できるようになった。試合会場で働く130人のスタッフにもIP携帯電話を持たせたことで、通信費を大きく削減できたという。
また、400人のスタッフがいる証券会社は、IPベースのテレビ電話を使うことで、画像や音声のやりとりを実現、12万ドルの通信費や出張費を削減した。小売業のCrate & Barrelは、地域に分散している各店舗との通信にVPN網を採用。VPN上で「Microsoft Outlook」と連動させたVoIPを活用したことで生産性が向上し、18万ドルの通信費を削減したという。
フレンド氏によると、シスコが出荷したIP電話の総数は200万台。VoIPのポート数では2000万ポートになるという。フレンド氏は、「シスコは古いパイ（アナログ公衆電話網市場）の取り合いをするのではなく、新しいテクノロジを提供していく」と語り、IPコミュニケーション市場への積極姿勢をあらためて打ち出した。
（編集局 富嶋典子）
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