[2003 JavaOne Conference開催]
ゴスリング氏、「Project RAVEは開発ツールを簡単にする」

2003/6/14

 6月10日〜13日(米国時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコにてJavaOneが開催されている。基調講演の冒頭、サン・マイクロシステムズでソフトウェア部門のバイスプレジデントを務めるジョナサン・シュワルツ(Jonathan Schwartz)氏は、「Java is everywhere!」のフレーズを連呼した。Javaは開発言語としては最大勢力の1つ、特にWebアプリケーション分野での伸びが非常に高い。バックエンドのシステム構築分野で躍進したJavaは、次に携帯電話やPDAなどのシステムとの連携を強め、プラットフォームの垣根を超えて成長を続けている。

 シュワルツ氏は、Java SDKのダウンロード数を基準に、現在のJava開発者を300万人と推定する。サンがここ数年の間に目指すのは、Java開発者を1000万人までに伸ばすことである。すでにWebアプリケーション構築技術の標準としての位置を築きつつあるJavaだが、開発者を3倍に伸ばすための施策は可能だろうか。

 サンがマイクロソフトとの法廷闘争にある中、Javaは次第にサンの手を離れ、開発者や各ツール/アプリケーション・サーバ・ベンダの手によって発展を遂げてきた。だがサンは、いま再びJavaに対する取り組みを本格化させようとしている。

 「300万から1000万へ」「Javaに再びコミットする」。この2つの動きの鍵を握るのは、どうやらサンが基調講演の中でも紹介した「Project RAVE」にありそうだ。Javaの開発者であるジェームズ・ゴスリング(James Gosling)氏へのインタビューを行う中で、このProject RAVEについての秘密が分かってきた。


――Project RAVEとは何なのか? 「開発スタイルを示すコンセプトのようなもの」と説明する人もいるが。

サン・マイクロシステムズのJava開発者、ジェームズ・ゴスリング氏

ゴスリング氏 「Project」という名称がついていることで誤解を与える面があるかもしれないが、実際には開発ツールのような製品として出荷される。基調講演でデモを行ったが、現在はGUI開発ツールのインターフェイスを持ったソフトウェアに仕上がっている。

――既存の開発ツールとどこが違うのか? Sun ONEとの違いは?

ゴスリング氏 Sun ONEはあくまでWebアプリケーションの開発ツールという位置付けだが、Project RAVEでは、もっと広い意味での開発全体を包含するツールになる。その点が従来のJava開発ツールと異なる。

――Project RAVEを利用することで、具体的にはどのようなメリットがあるのか?

ゴスリング氏 システムの開発がより容易(Simplify)になる。いままでJavaの世界に入ってこなかった開発者でも、Project RAVEによって開発に参加できるようになる。Javaのシステム開発を、より門戸の広いものにすることになるだろう。

――出荷時期はいつぐらいを予定しているか?

ゴスリング氏 6〜10カ月後には何らかの成果を発表できるだろう。現在はそれに向けて、担当者が全力を注いでいるところだ。


 Javaによるアプリケーション開発は、すでに多くの開発者の心をつかんでいるが、まだリーチできていない領域が存在する。それは、マイクロソフトのVisual Basicなどを駆使し、クライアント/サーバ型のアプリケーションを開発しているエンジニアたちである。おそらくは、Project RAVEはこの層にリーチし、300万人から1000万人へのミッシングリンクをつなぐものとなるはずだ。

 今回のJavaOneの大きなテーマは、組み込み向けJavaと開発ツール。J2MEでは、今回のカンファレンスにあわせるようにMIDP 2.0の仕様が発表された。すでに日本ではJava搭載携帯電話が広く普及しているため、あまりピンとこない面もあるが、グラフィックス機能などが強化された組み込みJavaを使って、広く一般にJavaを認知してもらおうというのだ。展示会場では、ゲームのデモストレーションなどが頻繁に披露されていた。

 開発ツールもカンファレンスで大きな比重を占めた。Project RAVEと並び注目される技術に「JavaServer Faces」がある。これまでJavaが弱かった、ユーザーインターフェイス、つまりフロントエンド開発の簡素化を行う技術である。展示会場では、Project RAVEの紹介でJavaServer Facesの使用を示唆する文言が書かれており、その関係が注目される。特にJavaServer FacesはJSRとして標準化が行われており、今後ツール各社がサポートする可能性が高い。来場者の関心も、組み込み向けJavaと開発ツールの2つの新技術に集まっていたのが印象的だった。

(鈴木淳也)

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