1万台のPCでグリッド実験、600年分の計算が4カ月に
2003/6/27
NTTデータはPCをネットワークで接続し、複雑な科学技術計算をさせるPCグリッド・コンピューティング実験の最終報告を発表した。約4カ月間の実験に1万2000台以上のPCが参加。PC1台の場合611年かかる計算を約4カ月で処理したという。NTTデータは実験結果を基にPCグリッド・コンピューティングのサービスを今年10月以降に商用化することを検討している。
NTTデータが開発したPCグリッド・コンピューティングは「cell computing」の名称。実験はネットワークに接続された企業や家庭のPCにグリッド・コンピューティング用のクライアントソフトを配布。各PCにはセンターサーバから計算するデータが配布され、PCが利用されていない時間などに自動で計算する。膨大な数のPCが参加することで、ローコストでスーパーコンピュータ並みの処理を実現すると期待されていた。
昨年12月20日から今年4月30日まで行われたcell computingの実験では、ピーク時に3T Flopsを記録。各PCのCPUが計算した計算時間の総和に当たるトータルCPU時間は611年162日となった。これは平均的なPCが1台で611年162日かかる計算を、PCグリッド・コンピューティングを利用したことで約4カ月で処理したことになる。
cell computingでは2つの計算プロジェクトが行われた。1つは遺伝子病研究につながる「ヒトの遺伝子情報からの周期性の発見」プロジェクト。このプロジェクトでは、5つの染色体の解析を約4カ月で終了。遺伝子に周期性を持つ領域が多数存在することが確認できたという。もう1つは、「光学的に新たな特徴を持つ材質の設計図の作成」プロジェクト。このプロジェクトでは、13万個の光学的に新たな特徴を持つ材質の候補を約4カ月にわたり解析。どの角度からでも光を反射する結晶構造を持つ新しい材質の候補として、116個の結晶構造を発見できた。どちらのプロジェクトでも平均的なPC1台で200年から300年かかる計算を、PCグリッド・コンピューティングを使うことで約4カ月で終了したことになる。
NTTデータは実験結果を基にcell computingの商用化を検討する。企業内のPCのCPUを統合するイントラネット型のPCグリッド・コンピューティングのサービスを、10月以降に販売開始する計画。インターネットに常時接続している家庭のPCも含めたインターネット型のサービスについても商用化に向けて検討を続ける。
(垣内郁栄)
[関連リンク]
NTTデータの発表資料
[関連記事]
オラクルの次期DBは"ブラックボックス"になる
(@ITNews)
N1を活用したサンの新ソリューション戦略
(@ITNews)
IBMが「全製品系列でグリッド化を推進」
(@ITNews)
Webサービスを統合したグリッドの標準規格が決定
(@ITNews)
[ガートナー特別寄稿]
PBCS:ガートナーが考える自律型コンピューティングのビジョン (@ITNews)
「次の波はグリッド」、インテルが新戦略
(@ITNews)
情報をお寄せください:
最新記事
|
|